2013 Fiscal Year Annual Research Report
浮遊バイオエアロゾル挙動の遠隔計測が可能な車載型蛍光分光ライダー装置
Project/Area Number |
25289122
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
齊藤 保典 信州大学, 工学部, 教授 (40135166)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ライダー / バイオ粒子 / エアロゾル / レーザ誘起蛍光 / 遠隔計測 |
Research Abstract |
「バイオエアロゾルの遠隔実時間計測が可能な車載型蛍光分光ライダー装置の開発」を目的として、平成25年度は「車載型蛍光分光ライダー装置の要素技術開発」を課題設定し、1)バイオエアロゾル蛍光特性の把握、2)蛍光分光ライダー装置の設計、を重点研究項目とした。 1)では、バイオエアロゾルの蛍光スペクトルEEM(Excitation-Emission-Matrix)特性の把握を試みた。その結果、試料とした殆ど全ての花粉が、紫外波長励起により400nm-600nmにかけての幅の広い蛍光スぺクトルを有する事がわかった。花粉のEEM特性と使用可能なライダー光源の検討より、励起波長は335nmで蛍光検出波長は450nm付近とするのが、ライダー装置に適していることが示された。次に蛍光スペクトル強度の絶対値測定を行った。実験装置は、現有機器(YAGレーザ、同期回路、オシロスコープ、PC)に自作の検出部(PMT、粒子カウンタ(レンタル)、多波長分光計測器(備品購入))からなる。本装置により求められたスギ花粉粒子1個の蛍光量子効率は0.000064%であった。 2)では、1)の結果を受け、バイオエアロゾルの代表としてスギ花粉を選び、蛍光分光ライダーで観測するための条件設定を行った。スギ花粉濃度をパラメータとして、355nmで70mJのパルスエネルギーを照射した際の、蛍光強度(電圧換算)の距離依存性のシミュレーション設計を行った。オシロスコープの1bit電圧(78μV)を最小検出電圧とすると、20m程度の距離であれば1平方mあたり約100個のスギ花粉粒子の検出が可能である事が示された。さらに、疑似バイオエアロゾルとして屋外生育のケヤキ葉内のクロロフィルを対象にして、蛍光の同期検出法を試みた。微弱蛍光信号の日中観測が可能であった。 3)その他、システム構造設計をほぼ終わらせた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初課題を全て完了する事が出来ている。また当初計画にはなかった、(次年度課題の)システム構造設計をほぼ終わらせた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度研究課題は「車載型蛍光分光ライダー装置の完成」に置く。 ①バイオエアロゾルの発生と挙動の現場計測を実現するため、観測場所を特定しない計測が可能な車載搭載型とする。装置全容積で約2.0立方mを目標とする。電源100V、2kVAの小型発電機を備える。 ②これに伴い、現有の大型YAGレーザの代わりに小型UVレーザを本課題経費にて導入する。送信系(レーザ)と受信系(望遠鏡と検出系)が一体化したモノスタティック構造とする。本構造により、光軸調整が容易、立体化による平面積の減少、掃引観測の可能性など、実用性の向上が図られる。システム制御やデータ解析のソフトウェアの組み込みを合わせて行う。 ③完成後は動作試験(屋内および屋外実験、フィールド予備観測)により、設計仕様のチェック、製作へのフィードバックを繰り返し、次年度の本格フィールド観測実験に万全の態勢を整える。 平成27年度(最終年度)は「フィールド観測の実施による装置性能評価とバイオエアロゾル飛散状況の把握の結果としての情報提供手法の提案」を遂行する。スギ花粉飛散、農耕地からの土壌飛散、水滴飛散にともなす水溶性有機物の拡散、などの自然または人間活動が絡むバイオエアロゾルの観測を試みる。フィールド観測を通して、本開発技術・装置の特異的優位性と有用性・実用性・機動性の評価を行い、総括とする。
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