2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25289126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山田 隆宏 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノエレクトロニクス研究部門, 主任研究員 (00377871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦野 千春 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (30356589)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 熱力学温度 / 温度計測 / ジョンソン雑音温度計 / ジョセフソン接合 / 超伝導集積回路 / 単一磁束量子回路 |
Research Abstract |
1. IQVNS開発 ジョンソン雑音温度計(JNT)の主構成要素である集積型量子電圧雑音源(IQVNS)の要素回路開発を行った。IQVNSは抵抗温度計センサのジョンソン雑音測定のための基準となる高精度電圧雑音源であり、擬似雑音系列発生器、雑音スペクトル強度制御のための可変パルス数増倍器(VPNM)、高精度電圧発生のための磁気結合型電圧増倍器(VM)の3要素から成る。本研究ではすべて超伝導単一磁束量子回路により実現し、1チップに集積する。これにより、装置間混信の解消による不確かさ低減化、低コスト化、利便性向上を期待できる。 H25年度は、3要素回路(17ビット最長周期系列(M系列)発生器、8ビットVPNM、8段VM)の開発を行った。VM設計では、動作マージン低下要因である浮遊インダクタンス低減のために、上下グランド面で回路を挟む構造を導入した。論理回路部(M系列発生器、VPNM)設計には、国内研究機関で共有されているセルライブラリ、ツールを使用した。それらは従来Cadence社製CADソフト上に統合されていたが、本研究では安価なCADソフトであるWhiteley Research社製Xicを導入し移植し、安価での超伝導回路設計を可能にした。チップ試作には、産総研のニオブ標準IIプロセス(ジョセフソン接合臨界電流密度2.5kA/cm2、4層配線)を使用した。評価の結果、M系列発生器、VPNMともに正常動作を確認できた。動作マージンは、いずれも設計値を基準に+/-10~20%程度得られており、基本設計は正しくできている。VMについては動作範囲が設計値より2割ほど狭かったが、問題箇所はほぼ特定できており、今後改良する。 2. JNT装置開発 JNT測定系の組み立ての準備も行った。増幅器などの相互相関法測定系の部品調達、精密測定用極低温プローブの開発を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. IQVNS開発 IQVNSの要素回路の設計、作製、評価のサイクルを4回行った。評価の結果、一部の要素回路が若干不安定ではあったものの、すべての部分で正常動作を確認することができた。不安定な要素回路についても、問題個所はほぼ特定できており、改良のための指針は得られている。またIQVNS全体回路設計のために重要な要素回路間の接続部分におけるクロック分配方法やデータ信号のフロー・タイミングに関しても、最適化の指針も得られつつある。以上により、H25年度の目標であるIQVNSの要素回路開発は、ほぼ順調に進んでいる。 2. JNT装置開発 JNT測定系の最重要個所である相互相関データ取得部について、部品調達を完了し、装置の組み立て段階に入りつつある。JNT測定用チップキャリアの作製は完了していないが、仕様はほぼ固まりつつあり完成までの目途は立っている。以上により、JNT装置開発もほぼ順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
1. IQVNS開発 H25年度に開発した要素回路を改良・統合し、IQVNS全体回路を完成させる。チップ設計、作製、評価のサイクルを4~5回繰り返し行うことによって、全体回路性能を高めていく。なお、所内の回路作製グループメンバーの定年退職が迫っているため、その技術引き継ぎ・学習に相当の時間を要することが想定される。回路設計ツール、評価プログラムの強化によりチップ設計と評価の自動化・効率化を進め、時間短縮することで対応する。 2. JNT装置開発 JNT測定系全体を構築し、温度測定を開始する。具体的には、チップキャリアと極低温プローブを開発しIQVNSチップを搭載し、試験温度場に設置された100オーム抵抗温度計センサとともに相互相関データ取得部に接続し、温度測定を開始する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に購入を予定していた物品のうち、下記2件の購入ができなかったためである。 1) 超伝導回路冷却のために必要な液体ヘリウム。昨今の液体ヘリウム供給不足が深刻化し入手困難な状況が秋ごろまで続いたため、予定量を購入することができなかった。 2) 回路搭載のためのチップキャリア。チップキャリア仕様の詰め・決定が遅れたため、購入することができなかった。 当該年度に購入することができなかった2件(液体ヘリウム、チップキャリア)いずれについても、次年度に購入する。
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Research Products
(8 results)