2014 Fiscal Year Annual Research Report
変形に伴って変化するRC造耐震壁の損傷程度と耐震性能評価
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25289180
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
河野 進 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 教授 (30283493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
向井 智久 独立行政法人建築研究所, 構造研究グループ, 主任研究員 (30318208)
丸田 誠 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (30416763)
篠原 保二 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 准教授 (50196408)
谷 昌典 独立行政法人建築研究所, 国際地震工学センター, 研究員 (50533973)
福山 洋 独立行政法人建築研究所, 構造研究グループ, グループ長 (60344008)
渡邊 秀和 東京工業大学, 応用セラミックス研究所, 助教 (20620636)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | RC造耐震壁 / 端部拘束領域 / 終局時変形性能 / 軸力 / 繰返し載荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
損傷制御型耐震構造物の設計において,経済的かつ有効な耐震部材として,2010年RC規準で認められた矩形断面を有するRC造耐震壁に関して,設計に必要な耐震性能を明らかにし,「建物の機能維持・早期復旧」を最も経済的に実現する構造システムとして普及させることを目的とした.初年度と2年度で,2種類の実験(耐震壁試験体,耐震壁拘束要素試験体)を行い,実験結果の解析を行い,この結果を再現するための解析手法(断面解析モデルと有限要素モデル)を構築した.計画通り,順調な進捗状況である. まず,2010年版RC規準の耐震壁付帯ラーメンの断面形状に関する条件緩和を受けて,設計が可能となった枠柱無耐震壁の曲げ終局時変形性能を把握する目的で軸力,壁端部の拘束領域範囲を実験変数とした耐震壁試験体を新たに2体用いて静的繰返し載荷実験を行った。これは,初年度にせん断破壊したNSW2試験体を増し打ち,または配筋変更で改善したものである.何れの試験体も引張鉄筋降伏後,壁脚部が徐々に圧壊する,曲げ降伏後のせん断すべり破壊または曲げ破壊となり,NSW2のせん断破壊を阻止する事ができた.終局時の圧壊は壁端部拘束領域全範囲に及んだ.断面解析により,これらの荷重変形関係包絡線をおおよそ模擬できた. また,RC造耐力壁端部拘束域の力学挙動に関する基礎的な知見を取得するため,既往研究の試験体の端部拘束域を模擬した試験体に対して一軸圧縮引張繰返し載荷を行った。最終的にはコンクリートの圧壊を伴って脆性的に曲げ圧縮破壊となったが,経験した平均引張ひずみが大きいほど最大耐力が小さくなった挙動を再現できる数値解析モデルを途中まで構築した.残りは,鉄筋の座屈により,既往の材料モデルを用いた挙動予測から約1~2割低くなる最大耐力を予測できるモデルを開発すれば,モデル化は完成する. 以上のように,第2年度も計画通り順調に研究が進んだ.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画にそって,順調に研究を進めている.
計画通り,耐震壁試験体実験2体と要素試験体4体の載荷実験を行った.解析モデルは,ファイバーモデルを用いた曲げ解析による耐震壁の終局状態予測,有限要素法による損傷の進展状況把握であり,おおむね計画通りの進捗状況である.
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Strategy for Future Research Activity |
耐震壁の使用限界状態および修復限界状態における損傷評価法については,過去2年間に実験した壁および壁脚要素実験の結果解析を進め,数値モデルを開発する. 過去2年間に開発した有限要素モデルを用いて,連層耐震壁モデル実験の結果を追跡する.特に,耐震壁脚部のひび割れ後に引張降伏した鉄筋が圧縮側で座屈,さらに引張破断するなどの終局状態を予測できる方法を提案する.鉄筋付着とコンクリートに関するポストピークモデルを用いることで,耐震壁が損傷するに従って周辺架構への応力伝達機構が変化する様子を捕らえ,せん断滑りやロッキングによって変化するエネルギー消費効果を再現可能な数値モデルをより洗練する. 耐震壁の損傷に関しては,昨年行った耐震壁実験の数値モデル解析を進める.東日本大震災で被災した建築物の中には,構造体の損傷がそれほど大きくなかったにも関わらず,非耐力壁の損傷が顕著であったために,修復の予算などを理由に復旧を断念し,取り壊された事例も存在した。こういった状況が発生する背景としては,非耐力壁の変形と損傷に関する情報が現状では極めて少なく,構造計算時に非耐力壁に発生しうる損傷を設計者がイメージしづらいことが考えられる。 そこで,RC造非耐力壁の破壊形式や変形と損傷に関する基礎的な情報を収集することを目的として,非耐力壁実大試験体を初年度の2体に加えさらに2体載荷した.これらのひび割れおよび圧壊,降伏などのデータを追跡できるモデルの構築を行う. さらに,これまで構築した数値モデルを用い,建築研究所で行った実大5層RC造実験における荷重変形関係や,各変形レベルにおける損傷状況を再現し,実験結果と比較することで,数値モデルの精緻化を図る.
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Causes of Carryover |
研究分担者が謝金として計画した設計業務を,研究分担者自身が行い,10万円分の謝金を次年度に回すことになった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の設計業務が増えるため,謝金として次年度に10万円を付加してこの研究分担者に配分することとした.年度全体予算の2.5%に相当する金額であり,全体計画に与える影響は少ない.そこで,予定通り計画を遂行する.
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