2013 Fiscal Year Annual Research Report
RC造袖壁付き柱の強度と変形性状に及ぼす開口の影響の評価に関する研究
Project/Area Number |
25289183
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
加藤 大介 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90169508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 孝也 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (50305421)
本多 良政 小山工業高等専門学校, 建築学科, 准教授 (80509919)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 鉄筋コンクリート構造 / 袖壁付き柱 / 開口低減率 / せん断強度 / 曲げ強度 / 損傷度 / 等価粘性減衰定数 |
Research Abstract |
本研究ではせん断破壊シリーズと曲げ破壊シリーズに分類して静加力実験を行っている。以下にシリーズごとに研究業績の概要を示す。 せん断破壊シリーズの研究の概要:袖壁等には小開口を含め開口が存在することが多い。日本建築学会の鉄筋コンクリート構造計算規準(以下,RC規準)では,両側柱付き耐震壁に用いる開口低減率を袖壁付き柱に準用する方法が示されているが,この適用性については確認されていない。本研究では,開口の形状とその位置の異なる6体のせん断破壊形の有開口袖壁付き柱の静加力実験を行い,原型とした既往の無開口試験体と比較しつつ,終局強度および変形性能を中心にその挙動を確認した。その結果,開口の形状と位置によって終局強度及び変形性能が異なるものの,開口による短柱化は見られず,RC規準の開口低減率は安全側の評価であることが確認できた。また,開口による短柱化は見られず,適用範囲を超える開口低減率でも大きな耐力低下に繋がらないことが確認できた。 曲げ破壊シリーズの研究の概要:要旨:開口の曲げ破壊部材への影響を検討する際に,重要な観点はその位置である。本研究では,袖壁の小開口がヒンジゾーン内にある場合を想定し,その位置が曲げ破壊型の袖壁付き柱の強度と変形能に及ぼす影響を検討するために,2体の曲げ破壊型袖壁付き柱の静加力実験を行った。その結果,開口が危険断面にある場合の袖壁圧縮側の最大強度は曲げ強度計算値を大きく下回っており,この場合は曲げ強度に対する開口の影響を考慮する必要がある。また,変形能も開口が危険断面にある場合が上部にあるものより悪くなる結果となった。一方,開口がヒンジゾーンの上部にある場合は現行の強度と変形能の評価式が適用できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在,計8体の試験体の加力実験が終了し,以下の結論を得ており,研究は順調に進んでいる。 せん断破壊シリーズの結論:(1)各せん断強度計算値と最大耐力実験値の比較では,開口低減率が0.63である試験体CSWO-S25-Aは1.39~1.56と十分に安全側であった。開口低減率0.71の試験体CSWO-L-AとCSWO-L-Bでは帯筋比による計算値の差があるが,実験値での差は見られず,それぞれ1.21~1.36,1.36~1.58と,共に安全側ではあったがその余裕度は異なった。(2)損傷度判定と鉄筋歪み分布から,柱頭・柱脚では曲げ破壊,柱中央では付着割裂破壊による圧壊が顕著であり,袖壁はせん断破壊によるひび割れ・剥落が顕著で,側面から鉛直方向の変形が見られた。全体の変形として,袖壁付き柱の断面としての平年保持が成り立っていないことが確認できた。 曲げ破壊シリーズの結論:(1)試験体CSWO-F-Uの正方向・負方向および試験体CSWO-F-Dの負方向の最大強度は曲げ強度計算値を上回っており,全塑性強度式は精度よく適用できた。しかしながら,試験体CSWO-F-Dの正方向はこの曲げ強度を大きく下回っており,この場合は曲げ強度に対する開口の影響を考慮する必要がある。(2)試験体CSWO-F-Uの終局部材角実験値は0.008radでFCランク,試験体CSWO-F-Dが0.0066radで同じくFCランクとなり,開口の影響が表れている。計算値は両試験体とも同じ結果となり,概ね安全側に評価しているが,試験体CSWO-F-Dで安全率がない結果となった。開口の位置の影響を考慮する必要はあろう。(3)今回の2体の小開口を有する袖壁付き試験体についてではあるが,開口がヒンジ領域の上部にある場合(試験体CSWO-F-U)は既往の曲げ強度と変形能の評価式により安全側に適用できるが,開口が基部にある場合は開口を無視すると曲げ強度式は適用できず,また変形能評価式の安全率の低下することがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は引き続きせん断破壊型の加力実験を継続するが,その他に,曲げ降伏型の実験を行う。また,それらのFEM解析を行う。さらに2年間の実験と解析結果を基に,せん断強度式の検討を行う。その際,モデル化として従来の有開口耐震壁に用いられる開口低減率が有開口袖壁付き柱にも適用できるかどうかは最初の検討項目となる。次に,新しい提案として,開口の左右の要素に分離した場合のモデル化について検討する。具体的には,モデル化-1が開口高さを可撓長さとしたもの,モデル化-2が開口の上下の壁板の圧縮側の反力のみを考慮して可撓長さを長く評価したもの,について検討する。 平成27年度は曲げ降伏型の実験を行う。さらに平成26年度に行う曲げ破壊型試験体を含む実験結果を基に曲げ強度式と変形能の評価法を検討する。検討手法はせん断強度と同様に従来法と新しい提案の2通りを検討する。 最後に,本研究の最終的な目的である,開口補強筋の設計法を提案する。それに加えて,復元力特性と損傷度を関連付け,東日本大震災で被害を受けた建物の損傷度評価の手法を提案する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究初年度であったため,実験計画に多く労力を割いた。本科研費の多くが実験のための経費(試験体作成,学生謝金)であるため,その一部は次年度以降に持ち越すことになった。また,実験結果は着実にでており,論文も数多く投稿しているが,その登録費や実際の発表は次年度以降の予定である。 試験体製のための費用として材料費と学生謝金に使用予定である。また,論文投稿費と発表用旅費として使用予定である。
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