2014 Fiscal Year Annual Research Report
琉球の近世計画村落形成に伝統的祭祀施設と村抱護が果たした役割と意味に関する研究
Project/Area Number |
25289212
|
Research Institution | Toyama University of International Studies |
Principal Investigator |
浦山 隆一 富山国際大学, 現代社会学部, 教授 (10460338)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 鎮明 中部大学, 国際関係学部, 教授 (60252748)
仲間 勇栄 琉球大学, 農学部, 教授 (70142362)
鎌田 誠史 有明工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70512557)
齊木 崇人 神戸芸術工科大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (90195967)
山元 貴継 中部大学, 人文学部, 准教授 (90387639)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 琉球 / 近世村落 / 村抱護 / 御嶽 / 空間形成技術 / 環境計画 / 集落空間 / 村立て |
Outline of Annual Research Achievements |
4月に第1回目の研究会(神戸芸工大)を持った。議題としては、10月のシンポジュウム企画内容及び年間調査スケジュールの調整を行った。6月に沖縄島・恩納村及び糸満市の近世村落空間構成調査と村獅子残存調査を行った。 7月~9月にかけて、2つの調査が企画された。7月に宮古島市狩俣集落調査のための事前打合せを狩俣自治会と行ない調査協力を確認した。8月は①鎌田・浦山が宮古諸島の18世紀に成立した近世計画村落に関する調査を行ない、集落と御嶽・村抱護・井戸の関連性を読み取った。②8月25日~9月2日には、メンバー全員による宮古島狩俣集落調査を行った。目的は集落全域フクギ分布調査とウヤガン祭祀施設調査である。事前に地籍図並びに土地台帳による場所的特性や土地の履歴を調べた。また、9月に韓国・馬耳山周辺の集落裨補林(村の林)調査を澁谷らが行った。 10月4日に第2回学際シンポジュウム「生き続ける琉球の村落―沖縄の村落をめぐる環境観と村立て―」を沖縄県立博物館・美術館で開催した。基調講演・安里進、発表者は鎌田・山元・浦山・仲間・河合の5名であり、各分野からの報告がなされた。また鎌田・山元は沖縄県地域史協議会第2回研修会(石垣市)において招待講演を行った。 11月~12月にかけて、浦山・仲間は狩俣集落の年中行事に合わせて2度訪問し、道明け行事後の聖域旧道調査と冬至行事に参加し住民全員との面会の場を設け、調査協力依頼を行った。 1月に第2回目の研究会(中部大)を持った。計画遂行状況報告と今後の優先調査の決定を行った。また連載依頼の『しまたてぃ』の執筆計画、建築学会発表テーマの決定をした。2月~3月に、仲間らは伊良部島の御嶽フクギ分布調査を行った。3月には韓国・済州大学地理学教室所有の米軍写真再調査を澁谷・鎌田らが行い、沖縄公文書館に収蔵されていない貴重な資料を採録した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
第2回学際シンポジュウム「生き続ける琉球の村落―沖縄の村落をめぐる環境観と村立て―」(主催:富山国際大学)を10月4日に沖縄県立博物館・美術館で開催した。科研の成果報告を、いち早く沖縄の地元の一般対象者に伝える目的で行った。また地元研究者へのより専門的知識供与の目的として、沖縄県地域史協議会・第2回研修会(石垣市)において山元・鎌田が「地籍図・土地台帳に描かれた沖縄の村落 -その構造と変化をめぐって-」、「村抱護を有する近世村落の空間構成と村立ての原理-石垣の村々を中心に-」の2編の招待講演を行った。 浦山らは日本建築学会九州支部で「近世期に村立てされた格子状村落の空間構成に関する研究-宮古島・伊良部島の村落を事例として-」並びに「沖縄島南部における「格子状集落」の立地と構造-地籍図を活用した南城市玉城・前川集落の検討-」の事例報告をすると共に、現在までの科研研究の到達点として、鎌田が中心となり日本建築学会計画系論文集に「沖縄諸島における村落の地形的立地条件から見た集住環境の構成原理に関する研究-近世期に発生した計画村落の形態類型を通じて-」を投稿している。この論文は、近世集落の村立てがどのような空間形成技術によってなされたかを地形条件や空間構成から類型している。 また仲間は「抱護」の原点を厳密に追及する目的で、蔡温の『林政八書』の現代語訳・英訳・内容分析を完成しつつある。この事業は琉球の風水思想や環境観に再考を促す効果がある研究である。さらに御嶽の空間構成と人工的植生(フクギ)との関連調査は抱護の思想の具体化の意味を明らかにするであろう。 一方、宮古島狩俣集落の学際研究はウヤガン祭祀が中断した後の荒廃した祭祀施設の実状を調査しつつ、可能な限りの建築・考古学的復元も含めて細密な調査への足掛かりを確実に構築しつつあるのは2年目の大きな成果であろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、研究結果公表の一部である第2回学際シンポジューム「生き続ける琉球の村落―近世沖縄の村落をめぐる環境観と村立ての原理―」(平成26年10月4日)の記録を冊子にまとめ、沖縄県内図書館・研究機関に配布をする。さらに(財)沖縄しまたて協会の情報誌に研究成果をわかりやすい形で連続掲載を行う。また発表の場として、宮古島市狩俣集落にて集落住民を対象者した現地報告会を企画している(平成27年8月下旬)。 4月~5月は2年間の研究成果を論文として、『日本建築学会計画系論文集』に投稿する。題目は「沖縄列島における村落の地形的立地条件から見た空間形成技術と集住環境の構成原理に関する研究―近世期に発生した計画村落の形態類型を通して―」である。 5月には第1回研究会を中部大学で開き、全体調整をする。5月~7月に掛けて、近世期に村立てした集落の補足・再調査を行う。①沖縄本島中部地域を中心とした明治の地籍図に基づく現地調査を行う。②仲間らは八重山離島の聖域植生調査と村抱護の残存痕跡調査を行う。③浦山・平井は狩俣集落・西原集落自治会との事前協議のため現地訪問を2回計画している。 8月下旬~9月にかけて平良市狩俣への考古学的視点を導入した調査の可能性を探り、聖域並びに明治期に土地利用が変更された場所の調査と再度のフクギ分布調査を実施する。また並行して近世末期に村立てされた西原集落の集落形成過程とその空間原理を祭祀儀礼を含めた総合調査として全員参加で取り組む。 10月には第2回目の研究会を富山国際大学で開催し、新規科研申請に向けての体制の調整を行う。 11月~12月には関連調査として、与論島の城集落・朝戸集落を対象とした比較研究のための現地調査を行う。2月~3月には海外関連調査として「台湾客家集落(台中市近郊)」の踏査を連携研究者・長野真紀(神戸芸術工科大学・助手)の指導で実施しする。。
|
Causes of Carryover |
第2回学際シンポジューム「生き続ける琉球の村落―沖縄の村落をめぐる環境観と村立て―」(主催:富山国際大学)を平成26年10月4日に沖縄県立博物館・美術館で開催した。その後シンポジューム記録を冊子としてする予定であったが、出版は次年度に回した。そのため印刷・配布は平成27年度に実施される。 また、平成27年度では細密調査を宮古島市狩俣集落・西原集落の2ヶ所で企画している。このために総合的把握を行う専門的スタッフ(考古学・民俗学)への費用増加と現地協力者謝金の増額は必要となる。さらに次年度は「台湾客家集落」との比較調査の必要性があるため、今年度中止した海外調査を実行する。その他の調査及び資料収集は研究実施計画に基づいて使用する
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
冊子作成の執行予算としてはシンポジュウムと沖縄県地域史協議会講演記録の2冊の出版・配布(製本450冊&印刷等)に45万円。この費用については今年度未使用金額の608,851円を充当する。 また、次年度は沖縄の聖域データーのスライド&ネガ写真のデジタル化に30万円及び宮古島狩俣集落聖域考古学調査並びに西原集落形成過程調査に、植生分布調査班(3名×1週間)が30万円、集落形成過程遺構調査班(5名×5日間:内地からの交通費込み)が90万円、現地協力者謝金が10万円であり費用が160万円となるため、当初の計画の中でも重点配分する。さらに今年度中止した台湾客家集落調査に90万円(6名×15万円)の予算配分を行う。その他、3回の研究集会(富山国際大学1回、中部大2回)を計画している。
|
Research Products
(29 results)