2014 Fiscal Year Research-status Report
世界遺産バッファゾーンの「文化遺産共生地域」としての整備モデル構築のための研究
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25289213
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山崎 正史 立命館大学, 理工学部, 教授 (40109038)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
板谷 直子(牛谷直子) 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 准教授 (90399064)
矢ヶ崎 善太郎 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (90314301)
仲 隆裕 京都造形芸術大学, 芸術学部, 教授 (20237192)
青柳 憲昌 立命館大学, 理工学部, 任期制講師 (00514837)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 世界遺産 / バッファゾーン / 景観保護 / 歴史的参道 / 歴史的集落 / 歴史的植生 / 町なみ景観 / 眺望景観 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界遺産バッファゾーンを「文化遺産共生地域」として概念構築するにあたり、抽象的概念から出発するのでなく、京都における具体例調査から知見を得る方法を取っている。清水寺(山腹事例)、仁和寺・竜安寺(山麓・郊外)、教王護国寺・下鴨神社(平坦地・都心部)、醍醐寺(平坦地・都市周辺部)で調査研究を行ってきた。その内容は①境内および周辺域の歴史調査(特に絵画資料を用いて)②景観の現況特性調査 ③コミュニティと文化遺産社寺との関係である。 清水寺に関しては中世以来、清水道が寺院と深い関係で考えられてきたこと、江戸時代から明治にかけて参道が五条坂、産寧坂-八坂道と繁栄の変遷のあったことを明らかにした。仁和寺・竜安寺に関して、洛中から洛外へ社寺に導いた街道があり、そこに道側の庭園など特別な意匠が見られることが明らかになった。醍醐寺でも奈良街道が参道でもあり、街道沿いに門前町が形成され、地域固有の町家形式を発見した。これら参道にはそれぞれに街が形成されている。その長さは事例により多様である。参道沿いとその背後に近代に形成された地域とでは、景観整備を別に考えるべきであることを明らかにした。 下鴨神社に関して、上賀茂神社および松ヶ崎村から流れる川があり、それが下鴨神社の神聖な御手洗川と泉川の源流となっている。景観的に配慮されてこなかった水路もまた文化遺産社寺の継承に重要であることを明らかにした。水質保護と景観の両面で地域コミュニティの協力が必要である。 以上のように、バッファゾーンの緩衝という概念を越えた「共生地域」が存在することを明らかにした。 これらの成果を日本建築学会および日本庭園学学会、ならびにフィレンツェで開催された第18回国際記念物遺跡会議(ICOMOS)で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
バッファゾーンを周辺地域の開発が及ぼす環境的景観的混乱から守るという「緩衝」機能を越えた「文化遺産共生地域」があると想定して研究を開始したが、参道、街道、その町なみ、さらに水路、祭礼の道など共生地域の存在とその内容を見出すことが出来た。それが本研究の最も開拓的な分野であり、それを一定程度明らかにしえたことで、概ね順調な進展と評価したい。
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Strategy for Future Research Activity |
①歴史的な参道および集落の景観特性と建築意匠特性の明確化を進める。それにより、バッファゾーンにおける景観デザインガイドライン作成手順を明らかにする。 ②参道、水路、祭礼経路などについて、どれだけの範囲で、どのような保護が必要かを研究する。 ③文化遺産社寺を遠方から眺める眺望景観について、保護されるべき範囲の設定方法を、絵画・写真・文学などから設定する方法を研究する。 ④これまでの成果を、バッファゾーン設定と保護の方法として汎用化を考察する。 ⑤ヨーロッパの類似事例(特に巡礼の道)などを参考して、景観保護の方法論的ブラシュアップを行う。
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Causes of Carryover |
参道景観の保護に関する先進事例として、スペインの巡礼の道における景観保護制度の調査にでる計画をしていたが、研究メンバーの都合により次年度に遅らせることした。そのため、使用額が減少した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
スペインへ巡礼の道景観保護関連資料収集のため、海外出張を行う。その費用に使用予定である。 また、今年度は調査補助に学生が新たに加わるので、その調査旅費と謝金に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)