2013 Fiscal Year Annual Research Report
金属の触媒効果の利用によるシリコン薄膜の効率的な結晶化法の開発
Project/Area Number |
25289231
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
弓野 健太郎 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40251467)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 構造・機能材料 / 表面・界面物性 / 半導体物性 / 結晶成長 / 太陽電池 |
Research Abstract |
液晶、有機ELパネル用の薄膜トランジスタや薄膜太陽電池は主としてシリコン薄膜を用いて作製されているが、低温(500℃以下)での結晶化が難しく、止むを得ず、電気特性の劣る非晶質の状態で使われている。申請者等は最近、結晶化を促す触媒層が常に再表面に浮上する新規な手法を開発し、ゲルマニウムの結晶化において大幅な結晶化温度の低下(200℃)が可能であることを示した。本研究では、成膜プロセスの改善により、現行の薄膜トランジスタ、薄膜太陽電池用の非晶質シリコン薄膜を結晶に置き換えることでデバイスの高性能化、省エネ化につなげることを目指す。さらに、移動度等でシリコンより優れるゲルマニウムに対しても同手法の適用を行う。 2013年度は結晶化率を向上させることを目的として、結晶化を促すAuとGeを同時にスパッタする方法を試みた。サーファクタントクリスタライゼーション法では結晶化の開始温度を低くすることはできるものの、成膜中にAuが凝集してしまい、Auと接触できないGeの割合が増加し、結果として結晶化率が小さくなることが予想される。そこで、AuとGeを同時にスパッタすることで、Auを最表面に均一に分散させることができると考えた。220~260℃の範囲で基板温度を変化させて成膜を行った(Geの組成は78at%、Geの膜厚は60nm)である。XRDスペクトルより、Geが結晶化していること、(111)面が優先的に基板に対して平行に配向していることを確認した。240℃で最も結晶化が進んでおり、ラマンスペクトルより、この試料については95%以上のGeが結晶化していることが明らかとなり、結晶化率の向上に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の大きな目標の一つであった結晶化率の向上に成功し、おおむね順調に進んでいると考えている。今後はキャリア移動度やキャリア密度等の電気特性の測定も行い、結晶化プロセスへのフィードバックを行っていく予定である。この過程においては、結晶化率だけでなく、結晶粒のサイズや配向性、欠陥密度の低減等の結晶性の向上を目指した、より高度な結晶成長制御が必要なってくると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
昨年度は、金とゲルマニウムを加熱基板上に同時にスパッタすることにより、大幅にゲルマニウムの結晶化速度が向上することを見出した。今年度は、シリコンに対しても同様の作製法を試み、結晶化に対して効果的な金属触媒の探索とデバイスへの応用を進める計画である。 (1)シリコンの結晶化を促す効果的な金属触媒の探索:シリコンのホモエピタキシャル成長の前にシリコン表面上に微量のスズ等の金属を付着させておくと、シリコンの成長が二次元的に進むことが知られており、サーファクタントエピタキシー法と呼ばれている。これらの微量金属(サーファクタント)がシリコンの表面拡散を活性化させるためであると指摘されている。シリコンの結晶化に際しても、原子の拡散を容易にすることが重要であると考えられるので、サーファクタントエピタキシーを示す金属は結晶化をも促すと期待される。そこで、ゲルマニウムの結晶化と同様に、シリコンとスズ等の同時スパッタを検討している。サーファクタントエピタキシーを示す他の金属も試し、結晶化に対して効果的な触媒の探索を行う。 (2)結晶シリコン薄膜を用いた各種デバイスの試作:上記の方法を用いて薄膜トランジスタ、pn接合、シリコンナノドットの試作を行う。薄膜トランジスタについては液晶、有機ELディスプレイ、pn接合は太陽電池、ナノドットはディスプレイ用の蛍光素子への応用を考えている。フレキシブルなデバイスの実現を目指し、プラスチック基板上の成膜を試みる。pn接合の形成に際しては、アルミニウムのようにドーパントと触媒金属の二役を果たせるような触媒元素の利用を検討している。薄膜トランジスタの移動度等、デバイスの性能評価を結晶化手法へフィードバックし、さらなるシリコン結晶の高品質化を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は、薄膜作成に関わる研究が多かったため、当初の想定に比べて物品費、旅費、人件費・謝金の出費が小さかったため。 次年度は、薄膜作成に加えて、薄膜の電気特性の評価等を行う計画である。次年度使用額については、そのための物品費等にあてる予定である。
|