2013 Fiscal Year Annual Research Report
不純物元素およびナノスケール変調構造の制御によるチタン基超弾性合金の高性能化
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25289247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金 へよん 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20333841)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | チタン合金 / マルテンサイト変態 / ナノドメイン |
Research Abstract |
本年度では、Ti-Nb、Ti-Nb-Zr-Ta合金に酸素および窒素を添加した合金を作製し、透過型電子顕微鏡観察、引張応力下その場X線回折測定、示差走査熱量測定、動的粘弾性測定装置を用い、ナノドメイン構造、マルテンサイト変態挙動、内部摩擦、ヤング率の周波数依存性を調べた。溶体化処理材の透過型電子顕微鏡観察では、6つのナノドメインバリアントが等方的に存在していることが確認された。酸素および窒素の添加量の増加に伴い、ナノドメイン構造に起因する制限視野回折像の輝度プロファイルの強度が上昇した。ナノドメインに起因した回折スポットの強度は、窒素添加材の方が酸素添加材よりも強いことが分かった。オメガ相は4つのバリアントが等方的に存在するが、その形成量は酸素および窒素の添加量の増加に伴い減少した。冷間圧延材では、圧延方向に歪みを発生させるナノドメインバリアントが優先的に成長した。即ち、ナノドメインバリアントが圧延応力の緩和に有利な方位に配向していることが分かった。この優先ナノバリアントの形成がゴムメタルのインバー挙動の起源になることが分かった。酸素および窒素の添加量の増加に伴い、優先バリアントの成長が抑制されること、また、窒素が酸素より優先バリアントの成長を抑制することが確認できた。侵入型無添加材においては示差走査熱量測定によりマルテンサイト変態のピークが確認できたが、0.6 at.%以上の酸素および窒素添加材においては変態のピークは確認できなかった。室温引張応力下その場X線回折測定においては、酸素添加材・窒素添加材共に明瞭なマルテンサイト変態を確認することはできなかった。動的粘弾性測定装置を用いて粘弾性特性を調べた結果、侵入型原子の拡散に伴うスネークピークが観測された。そのピーク温度は窒素添加材の方が酸素添加材より高かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
透過型電子顕微鏡観察、引張応力下その場X線回折測定、示差走査熱量測定、動的粘弾性測定装置を用い、ナノドメイン構造、マルテンサイト変態挙動、内部摩擦、ヤング率の周波数依存性を調べ、侵入型元素の種類および濃度が準安定β型Ti合金のナノスケール格子変調構造(ナノドメイン)に及ぼす影響およびナノドメインが変態・変形特性に及ぼす影響が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
Ti-NbおよびTi-Nb-Zr-Ta合金を用い、侵入型元素による強化メカニズムを解明する。広い温度範囲で引張試験を行い、力学特性に及ぼす侵入型元素の添加効果を明らかにする。また、XRDその場引張試験機を用い、歪みー温度ー応力を同時に制御しながら、変形に伴う構造変化を調べる。ナノドメイン構造を有効利用し、大きな超弾性回復歪みと高い変形応力を両立させる合金設計および組織制御指針を確立する。特に、強化に有効なα相を微細に析出させる加工熱処理条件を見出すことを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品は予定通り購入したが、金属素材の購入費が予定より抑えられた。学会出席は他の経費(教育研究経費)を使用したため、助成金は使用しなかった。人件費・謝金は合金作製のために計上したが、本研究室の新規購入した装置を利用して作製できたため使用しなかった。 その場引張試験、動的粘弾性測定およびTEM観察用の低温寒剤、合金作製用の金属素材、熱処理のための石英管などの消耗品の購入し使用する。
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Research Products
(6 results)