2013 Fiscal Year Annual Research Report
ミュオンスピン緩和を利用した原子空孔挙動の工業的評価法の開発
Project/Area Number |
25289260
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
西村 克彦 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (70218189)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 健二 富山大学, 大学院理工学研究部(工学), 教授 (00209553)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 金属生産工学 / アルミニウム合金 / 原子空孔 / ミュオン / スピン緩和 / クラスター / 「国際情報交換」ノルウエイ / 「国際情報交換」連合王国 |
Research Abstract |
自動車産業において、アルミニウム合金等の軽量素材を利用して車体の軽量化を図る動きがあり、6000系Al-Mg-Si合金は加工性と比強度が優れ、有力な候補である。本研究では、ミュー中間子(ミュオン)スピン緩和の研究手法を応用することにより、6000系アルミ合金中の原子空孔およびMg-Si-Vクラスターの密度とその挙動を解明して、本装置を工業的に利用可能な実体サンプルでのMg-Si-Vクラスター分布の定量化装置への顕在化に対する基礎研究を構築する。この研究では、容体化処理後の時効処理中に、リアルタイムでミュオン緩和測定を行い、容体化処理直後から、原子空孔およびMg-Si-Vクラスターの密度とその挙動を観測する。そのために、(容体化処理→急冷→時効処理)一連のプロセスを連続に行う機能を備えた試料ホルダーの作製を計画している。平成25年度は、容体化処理作業を簡便に行える加熱装置の検討と整備を行い、試料ホルダーの設計・検討を行った。 併せて、RIKEN-RALミュオン施設において、既存の設備を改良してミュオン緩和実験を温度20Kから300Kの範囲で行った。その結果、スピン緩和率及びミュオン捕獲率の温度変化から、120K以下の低温では、ミュオンは溶解しているMg原子と相互作用すること、200K付近でミュオンはクラスターと相互作用すること、260K以上では主としてミュオンと原子空孔の相互作用が支配的になることが明らかになった。 更に、容体化処理から15分経過後からのミュオンスピン緩和の時間変化観測実験も実施した。スピン緩和の時間変化は、陽電子消滅実験結果と類似点および相違点があることが明らかになった。これらの成果を学術論文および学会発表で公表している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、容体化処理作業を簡便に行える加熱装置と試料ホルダーのデザイン設計と検討を研究分担者や共同研究者と繰り返し、実現に向けて関連業者と装置の性能検討を行った。そして、試料作製および容体化処理を簡便に行える小型軽量装置の整備を行った。また、試料ホルダーのデザイン設計と検討を行い、試作装置の作製を行っている。しかし、RIKEN-RALミュオン施設(連合王国、オックスフォード)の安全審査の手続きのため、試料ホルダーの最終的な設計が終了していない。 一方、平成25年度は、RIKEN-RALミュオン施設において、既存の設備を改良してAl-Mg-Si3元合金、Al-MgとAl-Siの2元合金に種々の熱処理を施した試験試料でミュオン緩和実験を行った。実験データから、モンテ・カルロ法によるシミュレーション計算を利用して行い、ミュオンのスピン緩和率、捕獲率、再拡散率、初期捕獲率の物理量を解析導出している。その結果から、アルミ合金中のミュオン粒子の動力学について貴重な実験成果を得ている。また、ミュオンスピン緩和の時間変化観測実験も実施した。スピン緩和の時間変化は、陽電子消滅実験結果と類似点および相違点があることが明らかになった。ミュオンは、陽電子と比較して寿命が1万倍以上長いので、原子空孔およびクラスターとの相互作用が起因していると思われる。 ミュオン緩和スペクトルからミュオンの捕獲サイトの情報を導出するには、原子空孔密度やクラスター構造のモデルを導入したシミュレーション計算結果との比較が重要となる。特に、6000系アルミ合金には、Mg,Siの添加物が1%程度入っているので、複数のクラスターが共存しているモデルを考慮する必要がある。正ミュオンの磁気モーメントと捕獲サイト(クラスター)の局所磁場の分布から、クラスターモデルの計算を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、試作中の試料ホルダーの性能試験と改良を、富山大学と理化学研究所で行う。また、整備した試料作製および容体化処理装置の性能試験を富山大学で繰り返す。RIKEN-RALミュオン施設(連合王国、オックスフォード)の装置保守整備の関係で、平成26年内は、ミュオンビーム実験はできないので、これまで収集した実験データの解析に取り組む。特に、原子空孔密度やクラスター構造のモデルを導入した電子密度計算を進める。6000系アルミ合金クラスターモデルを構築する上で、高性能透過型電子顕微鏡やアトムプローブを利用したナノ構造解析が必要であり、これらをノルウエイ科学技術大学(トロンハイム)との国際共同研究および国内の関連研究施設の利用で進める。 研究成果は、第13回ミュオンスピン国際会議(6月1日~7日、グリンデルワルト、スイス)、第9回物性・先端材料国際会議(9月14日~17日、クラクフ、ポーランド)、および国内学会、学術論文等で公表する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、容体化処理作業を簡便に行える加熱装置と試料ホルダーのデザイン設計と検討を研究分担者や共同研究者と繰り返し、実現に向けて関連業者と装置の性能検討を行った。そして、計画に沿って試料作製および容体化処理を簡便に行える小型軽量装置の整備を行った。また、試料ホルダーのデザイン設計と検討を継続している。また、一部の部品については、試作を行っている。しかし、RIKEN-RALミュオン施設(連合王国、オックスフォード)の安全審査のため、試料ホルダーの最終的な設計が終了していない。そのため、関連設備の最終選定が進んでいない。 平成26年度中に、試料ホルダーの試作品を作製し、関連装置を購入し、性能試験を富山大学と理化学研究所で行う。試作品で安全審査を受け、審査が終了した段階で、実験に使用する試料ホルダーの作製を行い、RIKEN-RAL施設へ搬入する。RIKEN-RAL施設の修理保守のため、平成26年度はミュオンビームの実験が行えない。そのため、平成27年度に、研究目的の実験を実施する。
|
-
-
-
-
[Presentation] muSR study of Al-0.67%Mg-0.77%Si alloys2014
Author(s)
K Nishimura, K Matsuda, R Komaki, N Nunomura, S Wenner, R Holmestad, T Matsuzaki, I Watanabe, F L Pratt, C D Marioara
Organizer
The 13th International Conference on Muon Spin Rotation, Relaxation and Resonance
Place of Presentation
Grindelwald, Switzerland
Year and Date
20140601-20140607
-
-