2013 Fiscal Year Annual Research Report
階層構造を持つミクロ-メソ多孔性複合材料の創成とその触媒機能の解明
Project/Area Number |
25289286
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
石原 篤 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60212908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那須 弘行 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20189179)
橋本 忠範 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10271016)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミクロ-メソ-メソ階層構造 / 接触分解 / 油脂 / ゼオライト / マトリックス |
Research Abstract |
近年,油脂のエステル交換からバイオディーゼルを製造する方法が注目されているが,多量のグリセリンが副生する問題がある.そこで,油脂を直接分解しガソリンを得る接触分解が提案されている.我々はこれまでの検討によりミクロ-メソの階層構造を持つゼオライト含有シリカ-アルミナ触媒が接触分解に有効であることを報告してきた.そこで本研究では,ミクロ-メソ-メソの三層構造をもつゼオライト含有シリカ-アルミナをゲル骨格補強法およびリンゴ酸を用いた有機テンプレート法を組み合わせることにより調製し,油脂の接触分解を試みた. 試薬にテトラエチルオルソシリケート(TEOS),アルミニウムトリ-sec-ブトキシド,リンゴ酸,Yゼオライトを用い,ミクロ孔のゼオライトとメソ孔のシリカ-アルミナからなる触媒を作製した.三層構造の触媒は,ゲル骨格補強法で作製したシリカゲルに上記の二層触媒を加えることにより作製した.大豆油の接触分解を,キュリー・ポイント・パイロライザー(CPP)法を用いて行った. 作製した触媒のXRD測定よりゼオライトのピークがいずれの触媒でも確認できた.N2吸脱着測定の結果より,三層構造の触媒では段階的なヒステリシスがみられ,大きさの違う2種類のメソ孔が存在していることが示唆された.階層構造をもつ触媒はメソ細孔を有するためゼオライト単独に比べて,全表面積,細孔容積および細孔直径が大きくなった.油脂の接触分解を行った結果,いずれの階層構造を持つ触媒の場合もゼオライト単独と比較してガソリン留分が増加し,活性が向上した.それに伴いC1-C4のガス成分への選択率が低くなり,これはゼオライトの強い酸点による過分解が抑制されたためであると考えられる.ガソリン留分特性ではオレフィン/パラフィン比が高く,多分枝/単分枝比が0.3以上の大きな値をとり,高い転化率と関連して多分枝生成物の収率が向上した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は1)ミクロ孔(ゼオライト)ー小さなメソ孔(シリカ-アルミナ)―大きなメソ孔(シリカ)の三段階に階層構造が広がる新しい多孔性材料の調製;2) ゲル骨格補強法による大きなメソ孔をもつ複合酸化物の調製;3)新しい階層構造を持つゼオライト-金属酸化物複合体の調製;4)キャラクタリゼーションを計画した。1)については、ミクロ孔―小さなメソ孔の二層構造を持つミクロ-メソ多孔体に、三層目のシリカ多孔体の原料としてTEOSを用い、ゲル化後ゲル骨格補強剤にヘキサメチルジシロキサンを用い、骨格補強、溶媒交換、乾燥、焼成を経て、三段階に階層構造が広がる新しい多孔性材料を調製することができた。2)については、ゲル骨格補強法のバリエーションを調査した。すなわち、三段階に階層構造が広がる新しい多孔性材料の3段目にあたる最も大きなメソ孔材料の開発を平行して行った。シリカゲルのゲル骨格補強剤としてTEOSの他にヘキサメチルジシロキサン(HMDS)、ASB、チタニウムイソプロポキシド(TIP)あるいはジルコニウムブトキシド(ZRB)を用いて、シリカだけでなく、大きなメソ孔を持つゲル骨格補強シリカ-アルミナ、シリカ-チタニア、シリカ-ジルコニアの調製を行った。3)については、三段階に階層構造が広がる新しい多孔性材料の1および2段目の複合材料である階層構造を持つゼオライトーシリカ-チタニア、ゼオライトーシリカ-ジルコニアの調製を試みた。4)以上述べてきた触媒を調製し、キュリーポイントパイロライザー法で接触分解活性を評価するとともに、キャラクタリゼーションを行った。1)では、三層構造を持つことが、XRDおよび窒素吸着測定により確認できた。2)では、ゲル骨格補強法のバリエーションを広げることができた。3)では、新しい二層構造の物質を調製できた。いずれも重質炭素資源の接触分解に高活性を示した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.ゲル骨格補強法による大きなメソ孔をもつ複合酸化物の調製(石原):三段階に階層構造が広がる新しい多孔性材料の3段目にあたる最も大きなメソ孔材料の開発を行う。シリカゲルのゲル骨格補強剤として、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)でゲル骨格補強を行うことにより、超大型のメソ孔を持つゲル骨格補強シリカを作製できたので、そのシリカにAl, Ti およびZrのアルコキシドを含浸担持することにより、これまでの方法とは異なる酸点を持つシリカ-アルミナ、シリカ-チタニアおよびシリカ-ジルコニアの調製を検討する。 2.ミクローメソ二層構造固体と第三層ゲルとの混合法による三層構造体の調製ー第三層ゲルの混合比の検討ー(石原):三段階に階層構造が広がる新しい多孔性材料の、1および2段目の複合材料である階層構造を持つゼオライト-シリカおよびシリカ-アルミナ複合体と、ゲル骨格補強法の三層目ゲルとの組み合わせにおいて最適条件を検討する。すなわち三層目ゲルは溶媒を多量に包含しており、この量を決定することが難しかった。そこで26年度は、TG-DTAを用いてこの最適量を決定する方法を確立し、三層構造を形成する三層目ゲル量の範囲を決定する。 3.階層構造を持つミクロ-メソ多孔性複合材料の作製ー作製条件の検討による結晶性化合物の生成可能性の探索ー(石原): ゲル作製時にバッチ反応器を用い、密閉し、より高温にした水熱条件でゲル作製を行うことにより、結晶性の多孔性材料の作製の可能性について検討する。 4.キャラクタリゼーションと触媒機能の開発 (石原、那須、橋本):上記で調製した新しい階層構造を持つ多孔性材料のキャラクタリゼーションは、N2吸着測定、蛍光X線、透過型電子顕微鏡およびEPMAにより行う。また、CPP法を用いた重質炭素資源の接触分解、活性金属を担持して得られる触媒を用いて、重質炭素資源の水素化分解を検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外渡航費として準備した予算であるが、大学からの一般研究費を使用することができ、科研費の費用を使わずに済んだ。 平成26年度の海外渡航費の一部として使用する。予定として、8月のアメリカ化学会ナショナルミーティングに参加する予定である。
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Research Products
(9 results)