2013 Fiscal Year Annual Research Report
多様な未利用資源からリンを分離回収し産業利用するためのバイオプロセス技術の開発
Project/Area Number |
25289294
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大竹 久夫 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10127483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡野 憲司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40623335)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | リン溶解菌 / 製鋼スラグ / 培養 / 有機酸 |
Research Abstract |
製鋼スラグからゲノム抽出を行いT-RFLP法を用いて微生物群集構造解析を行った結果、数十種のピークが検出され、様々な属の微生物がいることが示唆された。更に、次世代シーケンサー解析を行い、これらの主要な属としてArthrobacter, Bacillus, Enterobacter, そしてPseudomonas属が生息していることが明らかとなった。製鋼スラグは低栄養かつ高pHの環境であるが、菌叢解析によって明らかとなったスラグ菌の特徴としてはこのような環境に適応したものであった。続いて、製鋼スラグ中からリン酸カルシウム溶解微生物のスクリーニングを行った。単離された約1,500株から選抜した結果、sl-29株が最も高い溶解活性を示した。sl-29株は3.33 mMのヒドロキシアパタイト[Ca3(PO4)2]3・Ca(OH)2を単一リン源とする培地で5 mMのリン酸を培養上清に溶出し、16 S rRNA遺伝子解析の結果sl-29株はEnterobacter cloacaeと最も高い相同性を示した。次に、溶解メカニズム解明のために、HPLCによる有機酸解析を行った結果、酢酸、乳酸、ギ酸そしてピルビン酸が検出され、更に、この有機酸はリン源によらず生産されることが確認できた。これらの有機酸は嫌気条件で生産されることから酸素供給量を増加させることで有機酸生産量を抑えた結果、リン酸溶出量が減少した。以上から、有機酸が溶解に寄与していることが明らかとなった。最後に、製鋼スラグ中のリン酸カルシウム溶解実験を行った。製鋼スラグ50 g/Lを単一リン源とする培地で培養を行い、6 µMのリン酸を上清に溶出した。また、希釈平板法による生菌数計測から菌の増殖が確認できた。これらの結果から、sl-29株は製鋼スラグ中のリンを溶解することが可能であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
不活性リンを可溶化する細菌を探索したところ、製鋼スラグから有望と思われる菌株を単利することができた。製鋼スラグの様な低栄養かつ高pHの廃棄物に微生物が存在していることは予想していなかった。この様な微生物の同定や不活性リン溶解活性について調べた報告はないので、新しい発見ができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた有望な菌株について、培養終了後の培養液上清に不活性リン溶解活性が認められる場合は、限外ろ過、HPLC分析およびGC-MS分析などを駆使して、不活性リン溶解活性を示す物質の同定を行う。酵素が関係すると考えられる場合は、酵素の精製を行いN-末端などのアミノ酸配列情報からPCR用DNAプローブを作製して、遺伝子のクローニングを行う。また、16S rDNAの塩基配列決定による同定結果をもとに、遺伝子解析の行いやすい代表的な不活性リン可溶化菌を選択し、NTG変異剤処理後にレプリカ法などにより溶解能を欠損した変異株の取得を行う。遺伝子組換えベクターを用い、親株のゲノムDNA断片による相補実験を行い、不活性リン溶解能に関与する遺伝子群の取得を行う。一方、有機酸が関与する場合は、文献やKEGGなどの情報から代謝経路を推定し、遺伝子破壊などによりこれを確かめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
科研費申請時に作成した研究計画調書に記載した研究経費に比べて、交付された金額がかなり少なかったため、できるだけ節約を行い次年度以降に研究に支障を来さないようにする必要があった。 平成25年度の直接経費から約50万円ほど繰り越すことができたので、これを平成26年度の消耗品に繰り込み、研究の実施に支障を来さないように使用する予定である。
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Research Products
(1 results)
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[Journal Article] Novel technique for recovering phosphorus from aqueous solutions using2013
Author(s)
Okano, K., Uemoto, M., Kagami, J., Miura, K., Aketo, T., Toda, M., Honda, K., and Ohtake, H.
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Journal Title
Water Research
Volume: 47
Pages: 2251-2259
DOI
Peer Reviewed