2013 Fiscal Year Annual Research Report
難治性疾患ナノ治療を目指した人工細胞膜の医療工学的研究
Project/Area Number |
25289299
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
上岡 龍一 崇城大学, 生物生命学部, 客員研究員 (70099076)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松下 琢 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (10209538)
後藤 浩一 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (30279377)
市原 英明 崇城大学, 生物生命学部, 准教授 (70369114)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌 / アポトーシス / リポソーム / 細胞・組織 / 揺らぎ |
Research Abstract |
(1)トラスツズマブ(TTZ)は、ヒト上皮成長因子レセプタ2(HER2)を過剰発現している転移性乳がん患者に対して用いられる分子標的薬である。ヒト乳がん(MDA-MB-453)細胞の異種移植モデルマウスを用いて、TTZで活性化したリンパ球(TTZ-LAK)の治療効果をin vivoで検討し、以下のような興味深い知見が得られた。①MDA-MB-453細胞で皮下移植した乳がんモデルマウスに対して、TTZ-LAK細胞を静脈投与したところ、腫瘍容積の顕著な抑制が確認された。②乳がんモデルマウスの腫瘍内へのTTZ-LAK細胞の遊走が、CD-3免疫染色による組織学的解析により明らかになった。③TTZ-LAK細胞で治療した乳がんモデルマウスの腫瘍切片をTUNEL法により解析したところ、アポトーシス誘導が確認された。(Biol. Pharm. Bull., 36, 861(2013)) (2)DMPC、PEG系界面活性剤(C12(EO)21)およびカチオン性脂質(2C14ECl)からなるハイブリッドリポソーム(HL)のヒト大腸がん(HCT116)の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討し、以下に示す新しい知見が得られた。①カチオン脂質含有HLの静注により、大腸がん肝転移モデルマウスに対する治療効果が得られた。②組織学的解析により、カチオン脂質含有HLで治療した肝転移モデルマウスの肝臓内の腫瘍部分で、アポトーシス誘導が確認された。(Biol. Pharm. Bull., 3, 498 (2014)) (3)DMPCおよびC12(EO)23)から成るHLのヒトリウマチ滑膜(HFLS-RA)細胞の増殖に関するHLの抑制効果および抑制メカニズムをin vitroおよびin vivoで検討した。①HFLS-RA細胞の増殖に関するHLの高い抑制効果が得られた。②フローサイトメーターを用いた解析により、HLによるアポプトーシス誘導が明らかになった。③RA関節炎モデルマウスに対して、HLの顕著な治療効果が確認された。(Drug Deliv., (2014), in press )
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハイブリッドリポソーム(HL)によるがん治療に関し、(1)トラスツズマブ(TTZ)は、ヒト上皮成長因子レセプタ2(HER2)を過剰発現している転移性乳がん患者に対して用いられる分子標的薬である。ヒト乳がん(MDA-MB-453)細胞の異種移植モデルマウスを用いて、TTZで活性化したリンパ球(TTZ-LAK)の治療効果をin vivoで検討し、以下のような興味深い知見が得られた。①MDA-MB-453細胞で皮下移植した乳がんモデルマウスに対して、TTZ-LAK細胞を静脈投与したところ、腫瘍容積の顕著な抑制が確認された。②乳がんモデルマウスの腫瘍内へのTTZ-LAK細胞の遊走が、CD-3免疫染色による組織学的解析により明らかになった。③TTZ-LAK細胞で治療した乳がんモデルマウスの腫瘍切片をTUNEL法により解析したところ、アポトーシス誘導が確認された。 (2)DMPC、PEG系界面活性剤(C12(EO)21)およびカチオン性脂質(2C14ECl)からなるハイブリッドリポソーム(HL)のヒト大腸がん(HCT116)の肝転移モデルマウスに対する治療効果を検討し、以下に示す新しい知見が得られた。①カチオン脂質含有HLの静注により、大腸がん肝転移モデルマウスに対する治療効果が得られた。②組織学的解析により、カチオン脂質含有HLで治療した肝転移モデルマウスの肝臓内の腫瘍部分で、アポトーシス誘導が確認された。 (3)DMPCおよびC12(EO)23)から成るHLのヒトリウマチ滑膜(HFLS-RA)細胞の増殖に関するHLの抑制効果および抑制メカニズムをin vitroおよびin vivoで検討した。①HFLS-RA細胞の増殖に関するHLの高い抑制効果が得られた。②フローサイトメーターを用いた解析により、HLによるアポプトーシス誘導が明らかになった。③RA関節炎モデルマウスに対して、HLの顕著な治療効果が確認された。 以上のように、当初の研究計画通りにおおむね順調に本研究課題は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、HLによるがん治療効果に関し、(1)in vitroにおいて、HLの流動性(揺らぎ)およびがん細胞の流動性(揺らぎ)と、HLの抗腫瘍効果に関する多くの事例を増やし、一般則として確立する予定である。詳細なメカニズムについては、疾患細胞およびHLの流 動性を、様々な分析法により明らかにすることが可能である。このようにがん細胞膜をターゲットとしたアポトーシス誘導の制がん機構の全容を明らかにしていく予定である。(2)コンピューターシミュレーションにより、分子レベルでの膜融合プロセスを解明を試みる予定である。(3)in vivoにおいて、種々の担がん(乳がんや肝がんなど)モデルマウスを用い、治療効果と治療メカニズムを検討する。(4)正常マウスを用いてHLの代謝系を含む体内動態試験および毒性試験により安全性を検討する。さらに、HLを用いる免疫学的研究として次のテーマを設定し、がん研究で得られた成果と相関させながら研究を進めていく予定である。すなわち、(5) HLの免疫系に及ぼす影響を検討するため、免疫細胞との相互作用をin vitroおよびin vivoで観測していく。(6) HIVおよびその感染細胞に対するHLの抗ウイルス効果を観測し、新しいエイズ治療薬としての可能性を検討する。 このように、がんをはじめとする難治性疾患の細胞膜物性をターゲットとするHLの治療効果を病院および医学部との共同研究により進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新学術領域研究「揺らぎが機能を決める生命分子の科学」の共同研究討議「第一回ハイブリッドリポソーム研究会」に参加する際の宿泊費・食卓費・日当を新学術領域研究の総括班から支出してもらえることになり、17500円分をキャンセル処理していたが、未使用額がシステム内にそのまま残っていたため。 17,500円を消耗品購入にあてる。
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