2015 Fiscal Year Annual Research Report
スマートセンサーを活用した翼型失速回避制御システムの高度化
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25289303
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
李家 賢一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20175037)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今村 太郎 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30371115)
砂田 保人 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50216488)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 航空宇宙工学 / 流体工学 / 剥離流 / 流体制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の究極的な目標は、航空機の失速を防止し、これによって、重大な航空機事故を防ぎ、社会的な重要課題である航空安全の向上に寄与することを目指すことである。そのために、効果の高い失速抑制を可能とする剥離泡崩壊制御板を用いる失速抑制装置を開発してきたが、本研究では、これを更に発展させ、航空機の姿勢が突風等の影響により非定常的に変化する場合でも翼の失速抑制制御が可能になる制御装置を開発することと、より実際の飛行に近い状態でも失速制御が可能になるような剥離泡崩壊制御板を用いた失速抑制装置の効果を確認することを目的としている。 研究3年目の平成27年度は、前年度に行った実験成果をとりまとめて発表するとともに、第3段階の風洞実験を主として実施した。実際に本装置を実機に適用することをにらみ、より速度域が高い場合においても本研究で用いている剥離泡崩壊制御板が的確に機能するかの検証を行うために大型風洞実験装置による計測を行った。そのために、高いレイノルズ数域(速度域が高い状態)を実現できる大型の低速風洞として、宇宙航空研究開発機構が所有する低速風洞を借用した。翼型模型をこの大型風洞に設置し、剥離泡崩壊制御板が最大の効果を発揮する条件を調べる実験を行った。その結果、これまでの実験レイノルズ数の2倍の領域でも「剥離泡崩壊制御板」が機能を発揮することを確認できた。また固有直交分解(POD)手法も活用した剥離流れ構造の非定常現象の検討ならびに前縁セレーションと呼ばれる一種の剥離制御板の効果を調べる風洞試験も前年度に引き続き行った。なお、研究のために使用している二次元低速風洞装置に不測の故障が生じたため、当装置の修理・調整のために時間を要したため、補助金の繰越を行った。(李家、砂田) 低レイノルズ数流中の翼型周りの定常・非定常数値解析に関する文献調査を実施し、次年度に向けた予備的計算も行った。(今村)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の主要な二つの目的の一つである実際の飛行により近い状態でも失速制御が可能になるような剥離泡崩壊制御板を用いた失速抑制装置の効果について、レイノルズ数の制限はあるものの、その効果を確認することができたため、研究はおおむね順調に進んでいると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第三段階までで、動的模型迎角変化装置を組み込んだ剥離泡崩壊制御板付き翼型模型システムの動作確認を行うことができ、またより実際の飛行に近い状態でも失速制御が可能になるような剥離泡崩壊制御板を用いた失速抑制装置の効果をある程度までは確認することができた。一方で、航空機の失速を防止するという本研究の究極の目的の達成のためには、剥離泡崩壊制御板の効果を更に高めることも必要であり、これまでに行った研究成果から得られた知見をもとにして、剥離泡崩壊制御板の効果を高めるために必要な流れ場の特性を探る研究を行っていく。
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Causes of Carryover |
大型風洞を借用した実験に際して、当初計画では新たに翼型模型を作成する予定となっていたが、風洞を所有する宇宙航空研究開発機構が過去の研究で用いた翼型模型を借用して、それに剥離泡崩壊制御板と同じ形状の部材をとりつけることで、風洞実験が可能になった。そのために当初考えていたよりも費用がかからずに実験が可能になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、剥離泡崩壊制御板の効果を高めるために必要な流れ場の特性を探る研究を行うが、そのために必要な流れ場計測装置の準備に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)