2014 Fiscal Year Annual Research Report
氷海域における掘削技術の確立のための掘削船および掘削装置の制御システムの開発
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25289316
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
澤村 淳司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (90359670)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木岡 信治 独立行政法人土木研究所, その他部局等, 主任研究員 (20414154)
飯島 一博 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50302758)
金野 祥久 工学院大学, 工学部, 准教授 (60322070)
千賀 英敬 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60432522)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 氷海工学 / 砕氷船 / 海底掘削 / 氷荷重 / 模擬氷 / 模型船実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は,掘削船を用いた氷海域での掘削作業において重要な技術の一つである掘削船の位置保持のためのシステムを開発する事である.位置保持システムを開発する上で重要な事は,1)砕氷船を用いたアイスマネージメントと呼ばれる作業によって作られた多数の割れた氷片が密集して浮遊する海面(アイスチャンネル)の氷片分布を予測し,2)その氷海面上で作業する掘削船が受ける氷荷重を推定する事である.H25年度に引き続きH26年度も,1)砕氷船によるアイスチャンネルモデルの作成,2)アイスチャンネルモデル中を航行する船体が受ける氷荷重を推定するための数値計算モデルの開発,そして,3)計算モデルを実証するための模型船実験を主に行った.H26年度は,模擬氷を用いた2次元模型船実験を実施し,多数の氷片が浮遊する海面上を運動する船舶と氷片との相互影響の解明と,数値計算モデルの評価のための氷荷重データを取得した.2D模型船実験により,模擬氷を用いた常温水槽での模型船実験の有効性を実証し,氷片から受ける船体氷荷重の発生原因の詳細を知る事ができた.また,計測した氷荷重データを用い数値計算モデルの評価を行った.さらに,数値計算モデルにおいては,氷板の割れと氷片の排除が同時に計算できるアルゴリズムを導入し,より実現象に近いアイスチャンネルの計算が可能になった.また,船体制御モデルの開発を見据え,氷片中の氷荷重下を想定した船体運動シミュレーションの開発を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度の研究計画は, H25年度の研究において開発された氷荷重推定の数値計算モデルの結果を用い,アイスチャンネル内での船に作用する氷荷重の推定を実験と計算の両方から試みる事であった.特に,模型船試験を実施するにあたって,常温水槽内で氷海域の模型船実験を実現するための模擬氷の作成方法の確立と検証,および,模擬氷を用いた実験方法の確立が大きな目的であった.H26年度の研究では,1)プラスチック材とワックス材を用いた模擬氷の作成を行い,両者とも多数の氷片が浮遊する海面上での船体氷荷重を計測する模型船実験に使用できる事が示された.そして,2)プラスチック材を用いた模擬氷を使用して常温水槽において2D模型船試験を実施し,氷片と船の相互作用により発生する氷荷重の解明と数値計算モデルの検証のための氷荷重データを計測する事に成功した.また,実験により得られたデータを用いて数値計算モデルの検証を行った.さらに,3)H25年度の研究成果である数値計算モデルを改良し,より実現象に近いアイスチャンネルが推定できる数値計算モデルを作成した.また,氷海中の船の制御モデルの開発に必要な氷片中の氷荷重を想定した船体運動シミュレーションの開発を行った.これらの研究成果により,砕氷船によるアイスチャンネルモデルの推定と,アイスチャンネル内での氷荷重の推定が数値計算で行えるようになった.一方で,模擬氷の作成技術の問題,数値計算モデルの計算精度と汎用性の問題や掘削船を想定したムーンプールを備えた模型船による3D模型船実験の必要性など問題点や課題が明らかになった.以上のように,H26年度の本研究課題の進捗状況は,一部の研究に問題点や課題が残されているが,計画した研究の目的である「実験と計算によるアイスチャンネル内での船体氷荷重の推定」が達成できた.
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Strategy for Future Research Activity |
H27年度は,H26年度に実施した模擬氷を用いた常温水槽での2D模型船実験を,掘削船を想定したムーンプール(船体中央部付近に設置された船底から甲板まで貫通した掘削管を通す穴)を備えた模型船を新たに作成し,3D模型船実験を実施ずる.氷片の密接度(海水面が氷に覆われている密度)が異なる流氷域中において,船の曳航条件を変化させた実験を行い,氷荷重の計測と氷片の移動の観察を行う.そして,氷片分布や船の航行条件の違いによる氷荷重分布の変化やムーンプールへの氷片の侵入の有無を調べ,アイスチャンネル内の掘削船と多数の氷片との相互影響による氷荷重の発生原因を明らかにする.また,実験により得られたデータは,数値計算モデルの開発と検証に用いられ,砕氷船のアイスマネージメントによるアイスチャンネル中での掘削船に作用する氷荷重の推定方法の確立を目指す.さらに,本年度は,ワックズ材による模擬氷を使用した模型船実験を試み(昨年度はプラスチック材を使用.),プラスチック材とワックス材模擬氷の検証を行う.次に,実験計測または数値計算により得られた氷荷重データを用いて氷荷重下での掘削船や掘削管の構造応答や運動の計算を実施し,アイスチャンネル内の掘削船(掘削管)の応答の通常海域との違いを検討する.最後に,掘削船の位置保持のための制御計算を試みる.本研究課題は,氷海域での船舶の技術開発に必要な(1)氷の破壊,(2)氷荷重の推定,(3)氷荷重下での船体応答および船の制御など,本研究課題の研究者が持つ個々の研究技術(研究成果)を統合する事により船舶の位置保持のための制御システムの開発が可能になる.なお,H25年度より行われている,船体と氷の接触と破壊や掘削船に作用する氷荷重の推定は,数値計算の改良などH27年度も引き続き行われる.また,常温水槽での模型船実験は本研究課題の研究者全員で実施される.
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Causes of Carryover |
研究計画当初は,H26年度において掘削船を想定したムーンプールを備えた模型船を新たに作成し3D模型船実験を実施する事を考えていた.しかしながら,3D計測実験を行う前に,模擬氷を用いた常温水槽における氷海域模型船実験の確立と,船と氷片との相互作用による氷荷重の発生原因の詳細を明らかにするために 2D模型船実験を行った.これにより,3D模型船実験がH27年度初め(2015年5月)に行われる事になった.従って,H26年度に計上していた3D模型船の作成費用および3D模型船実験のための模擬氷作成費用など各種計測機器購入費用などがH27年度に使用される.また,H26年度に計上していた実験補助のための人件費を削減し,模擬氷を使用した模型船実験の費用に充てられた.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H27年度は,H26年度に実施したプラスチック材による模擬氷に加えて,ワックス材による模擬氷を使用し,3D模型船実験を行う予定である.このための,3D模型船の作成とプラスチック材およびワックス材による模擬氷の作成費用に使用する.3D常温水槽において氷および船の実験条件を変えた氷海域模型船実験を行うには,多量の模擬氷が必要になり,模擬氷の材料費と模擬氷作成のための実験補助の人件費に使用される.
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Research Products
(12 results)