2013 Fiscal Year Annual Research Report
Ni基高Cr合金の粒界応力腐食割れき裂進展機構解明と保全技術の創成
Project/Area Number |
25289348
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
米澤 利夫 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 教授 (10422081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 真史 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (60312659)
竹田 陽一 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40374970)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 粒界応力腐食割れ / Ni基合金 / 軽水炉 / 冷間加工 / 積層欠陥エネルギー / 粒界酸化 / 残留応力 / 放射光 |
Research Abstract |
Ni基高CrのTT690合金は、耐応力腐食割れ材料として、世界の加圧水型軽水炉で広く用いられている。しかし近年、一部の研究者から「高度の冷間加工を施したTT690合金は、応力腐食割れき裂進展速度が大きい」との報告がなされ、米国では軽水炉の信頼性維持の観点で大問題となり、国際評価グループが設けられ、その一員である本研究代表者には、TT690合金の応力腐食割れき裂進展に対する抜本的な学術研究を強く求められている。 これに対処すべく、本研究では、主として材料面から、粒界酸化を加速させる物理要因(溶製時の共晶炭化物残留による粒界酸化促進や、粒界近傍局所の積層欠陥エネルギー値低下による硬化等)を明確にし、応力面からは粒界近傍局所の応力・ひずみ解析を、環境面からは、応力腐食割れ後の観察・計測ではなく、腐食環境下その場(In-situ)計測を基に腐食挙動解析を行い、Ni基高Cr合金の粒界応力腐食割れき裂進展機構解明を材料、応力、環境面から図り、信頼性評価や寿命評価等の保全技術の創成を行う。 本研究目的を達成するために、材料 (Task 1)、応力(Task 2)、環境(Task 3)の各要因について検討した。平成25年度は、各Taskを実施する上で必要な供試材の試作と加工・熱処理を実施した。これらの供試材を用いて、Task 1として、高性能イオン研磨装置で作製した試料に対し、高分解能電子顕微鏡で極微小領域の共晶炭・窒化物を観察した。また、Task 2として、SPring-8の放射光X線を用い、結晶粒界近傍の局所残留応力・ひずみを精度よく計測した。さらに、Task 3として、SPring-8に設置した専用オートクレーブを用いて、応力腐食割れ環境その場(in-situ)での結晶粒界の酸化挙動解明を行い、応力腐食割れの死体解剖ではなく腐食環境下での腐食挙動を把握する為の実験手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は、材料 (Task 1)、応力(Task 2)、環境(Task 3)の各Taskを実施する上で必要な供試材の試作と加工・熱処理を、計画通りに実施した。またこれらの供試材を用いて、Task 1として、高性能イオン研磨装置で作製した試料に対し、高分解能電子顕微鏡で極微小領域の共晶炭・窒化物を観察し、Task 2として、SPring-8の放射光X線を用い、結晶粒界近傍の局所残留応力・ひずみを精度よく計測し、Task 3として、SPring-8に設置した専用オートクレーブを用いて、応力腐食割れ環境その場(in-situ)での結晶粒界の酸化挙動解明を行った。応力腐食割れの死体解剖ではなく腐食環境下での腐食挙動を把握する為の実験手法を確立することができ、おおむね順調に推移している。 平成26年度、平成27年度の研究成果が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に作製した供試材、確立した実験手法、得られた実験結果を基にして、平成26年度には、Task 1として、高分解能電子顕微鏡で極微小領域の共晶炭・窒化物を観察し、共晶炭・窒化物残留度合いと冷間加工による割れの有無とを把握するとともに、粒界近傍局所の積層欠陥エネルギー値を精度良く計測する。さらに、Task 2として、SPring-8の放射光X線を用い、結晶粒界近傍の局所残留応力・ひずみを精度よく計測する。また、Task 3として、SPring-8に設置した専用オートクレーブを用いて、応力腐食割れ環境その場(in-situ)での結晶粒界の酸化挙動解明を行い、応力腐食割れの死体解剖ではなく腐食環境下での腐食挙動を把握する。 平成27年度には、Task 1として、平成25年度および26年度で得られた、高分解能電子顕微鏡で極微小領域の共晶炭・窒化物を観察結果、粒界近傍局所の積層欠陥エネルギー値測定結果を基に、粒界近傍局所物性を評価する。また、Task 2、Task 3として、微小領域での応力計測結果や結晶粒界近傍の局所残留応力・ひずみの計測結果、SPring-8に設置した専用オートクレーブを用いた、応力腐食割れ環境その場(in-situ)での結晶粒界の酸化挙動解明、腐食環境下での腐食挙動把握結果を基に、Ni基高Cr合金の材料、応力、環境面からの粒界応力腐食割れき裂進展機構解明を図る。さらに、これらの結果に対する米国主催国際評価グループ(EPRI MRP)での議論を踏まえ、Ni基高Cr合金の粒界応力腐食割れ進展機構に基づく保全技術の創成を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は今年度研究を効率的に推進した事に伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額と併せ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。 高分解能電子顕微鏡試料作成のための消耗品費に充てる予定である。
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Research Products
(11 results)