2014 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類領野特異的発現遺伝子のエピジェネテイック制御機構の解明
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25290011
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
山森 哲雄 基礎生物学研究所, 脳生物学研究部門, 教授 (80260206)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 活動依存的発現 / メチル化 / 転写因子 / 一次視覚野 / 連合野 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者等は、霊長類大脳皮質領野で発現に顕著な差のある遺伝子は、連合野特異的なものと視覚野特異的なもの2群に分かれることを明らかにしてきた。これら2群の遺伝子のプロモーター領域のCpG領域を調べると連合野特異的な遺伝子は、メチル化のレベルが高く、一方視覚野特異的な発現遺伝子では、メチル化が殆どされていないことが判った。これらのメチル化領域に結合するMBDファミリーを調べたところ、MBD4の発現のみが領野特異的な発現をすることが判った。そこで、MDB4の発現を低下、又は、増加することによって、in vitroおよび、生体脳において、視覚野特異的発現遺伝子と連合野特異的発現遺伝子の発現を調べたところ、連合野特異的遺伝子のうち、RBP4とPNMA5がMBD4の発現によって正の発現制御を受けていることが明らかになった。即ち、培養神経芽細胞(SH-SY5Y)を用いて、先ず、連合野特異的発現遺伝子PNMA5のプロモーターのCpG領域が高度にメチル化されていることを確認し、このメチル化をメチル化阻害剤投与によって阻害やSH-RNAによるMBD4のノックダウンによって、PNMA5の発現の低下や阻害が見られることを示した。更に、AAVベクターにより、視覚野領域にMBD4を強制発現した場合には、RBP4とPNMA5の発現増加、前頭葉にMBD4のSh-RNAを注入した場合には、発現低下を観察した。この研究を発展させる為、一次視覚野における領野選択的な発現遺伝子を含む活動依存的遺伝子発現制御機構の解明を現在行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初目標として考えていた大脳皮質領野特異的に発現する遺伝子の制御機構については、上述のように、連合野特異的発現遺伝子群と視覚野特異的発現遺伝子群のメチル化レベルが前者では高く後者では低いことを見出し、更に、メチル化結合蛋白質MBD4が連合野特異的発現遺伝子(RBP4, PNMA5)を制御していることを報告した(Hateet al., J. Neurosci., 33, 19704-19714)。研究代表者等は、霊長類大脳皮質領野で発現に顕著な差のある遺伝子は、連合野特異的なもの(RBP4, PNMA5, SLIT1)と視覚野特異的なもの(FSTL1/OCC1, 5-HT1B, 5-HT2A)の2群に分かれることを明らかにしてきたが、平成25年度でこれらの発現が遺伝子レベルのメチル化の差とメチル基結合蛋白質の大脳皮質分布の差という2段階の機構で制御されていることを報告した(Hata et al. J. Neurosci, 2013)。この研究の中で、視覚野及び連合野特異的発現遺伝子群のメチル化の差異が発生のどの段階で生じるのかという新たなテーマが生じた。最終年度でこれを明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、これまでの研究で、霊長類の連合野に強く発現遺伝子として同定した分子のプロモーターのCpG領域は高度にメチル化しているのに対し、視覚野に強く発現する遺伝子として同定した分子のそれは殆どメチル化されていないことを明らかにしてきた。この成果を踏まえて、本年度は、胎生期、新生児、及び成体のマカクザル大脳皮質における領野差遺伝子プロモーターのメチル化及び大脳皮質におけるDNAメチル基転移酵素(DNMT1, DNMT3a, DNMA3b)の発現を調査し、この領野差遺伝子間のメチル化の差異は大脳皮質発生のどの時期に起こるのかを明らかにする。それと平行して、マカクザルES細胞を用い、未分化の状態から大脳皮質マーカーを発現するそれぞれの過程でDNAを抽出し、どの段階で領野差遺伝子のメチル化(または脱メチル化)の差異が生ずるかを調査する。
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Causes of Carryover |
前述したように、研究の進捗に伴い、新たに発生期のメチル化状態を検討する必要がでてきた。その準備の為に、繰り越しが必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発生期とマカクES細胞からDNAを抽出してそのメチル化状態を検証する。
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