2013 Fiscal Year Annual Research Report
5-HT2C受容体のRNA編集によるストレス・情動調節機構の機能形態学的研究
Project/Area Number |
25290014
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
田中 雅樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80264753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 勝敏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60462701)
吉本 寛司 広島工業大学, 生命学部食品生命科学科, 教授 (70111903)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 5-HT2C / RNA編集 / ストレス / 情動 / アルコール |
Research Abstract |
本研究は慢性ストレスモデルやRNA 編集異常を起こした遺伝子改変マウスを用いて、セロトニン2C 受容体(5-HT2CR)とそのRNA編集がストレス・情動反応にどのように関与するかの解明を目的とし、25年度は研究計画通り以下の実験を行った。 神経組織におけるRNA編集酵素(ADAR1&2)発現検索:脳、脊髄におけるADAR1& 2の組織発現をin situ ハイブリダイゼーション法と免疫組織化学法で検索した。ADAR1は梨状皮質、海馬錘体細胞、視床下部に発現が強く、ADAR2は視床、蝸牛神経核、弧束核などにさらに脊髄では前角細胞に強い発現が見られた。 慢性アルコール暴露モデルによるRNA編集検索:情動やアルコール・薬物依存に前脳側坐核が関与することが知られており、我々も5-HT2CR がアルコール嗜好性に関与することを示した(Eur J Neurosci 2012)。この5-HT2CR はRNA 編集酵素によりアミノ酸配列が一部変化し得る。アルコール嗜好性が高いC57BL/6J系マウスではアルコール暴露後、5-HT2CR RNA 編集程度およびADAR1 &2の発現が側坐核で優位に上昇したが、嗜好性のないDBAやC3H系マウスでは変動しないことを示した。さらにRNA編集が起来きない遺伝子改変(INI)マウスでは背景がC57BL/6Jでもアルコールを飲まず、5-HT2CR RNA 編集程度がアルコール嗜好性を規定していることを明らかにし、論文を作成した(Int J Neuropsychopharmacol 2014)。 慢性浸透圧刺激および慢性拘束ストレスモデルによるRNA編集検索:以前に慢性高張食塩水負荷がストレスモデルの1つになることを報告しており、この慢性高張食塩水負荷マウスおよび慢性拘束ストレスモデルで、視床下部室傍核および視索上核で5-HT2CR RNA編集頻度を検索した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度は大きく2つの研究を実施した。神経組織におけるRNA編集酵素発現検索と慢性ストレス・アルコール摂取モデルマウスを用いた、セロトニン2C 受容体(5-HT2CR)のRNA 編集検索である。大体計画通りの研究実施ペースと考えられる。 1.神経組織におけるRNA編集酵素(ADAR1, 2)発現検索:脳、脊髄におけるADAR1, 2の組織発現を細胞レベルで検索し、ほぼ神経系における発現を検索できた。ADAR1およびADAR2それぞれに海馬、視床など遺伝子・タンパク質発現の強い領域が見つかった。 2.モデルマウスを用いた5-HT2CRのRNA 編集検索 1)慢性アルコール暴露モデルによるRNA編集検索:最近5-HT2CR がアルコール嗜好性に関与することを示した(Eur J Neurosci 2012)が、この嗜好性上昇が側坐核の5-HT2CR RNA 編集程度と編集酵素の増加に由来することを証明できた。マウス系統間で嗜好性に差があり、さらにRNA編集が起こらない遺伝子改変(INI)マウスも用いてアルコール摂取を調べ、5-HT2CR RNA 編集程度がアルコール嗜好性を規定していることが明らかにした。結果をもとに論文を作成した (Int J Neuropsychopharmacol in press)。 2)慢性浸透圧刺激および慢性拘束ストレスモデルによるRNA編集検索:研究代表者は以前に慢性高張食塩水負荷がストレスモデルの1つになることを報告している(Amaya et al, Neuroendocrinol, 2001)。この慢性高張食塩水負荷マウスおよび1日2時間拘束を10日間続けたストレスモデルで、視床下部室傍核および視索上核で5-HT2CR RNA編集頻度が変化するかを検索したが、ややRNA編集頻度が低下する傾向が見られるも対照群に対して有意な変化を認めなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度にRNA編集酵素(ADAR1&2)の発現を神経組織で調べたところ、それぞれの酵素で海馬、視床など発現が高い領域が認められた。今後局所領域におけるRNA編集酵素を操作するために、ADARに対するshRNA遺伝子を組み込んだウイルスベクター(AAV)を感染させた動物を解析して局所におけるRNA編集酵素の機能に迫りたい。特にアルコール暴露後側坐核で編集酵素の増加がみられたことを今年論文報告したが、側坐核のADAR発現を抑えておくと、アルコールを曝露しても飲酒量が増えないかどうかを確認したく考えている。 研究計画では26年度以降に5-HT2CのRNA編集が全く起きない(INI型)マウス、100%起きた(VGV型)マウスの遺伝子改変マウスと野生型の脳内モノアミン定量をすることになっているが、すでに予備実験として各脳部位の試料を採取した。今年度本格的にさらにセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンおよびその代謝産物、DOPAC、5-HIAAを定量し、各群間での差の有無を調べる予定である。 研究代表者が以前から研究を行ってきた摂食・ストレス関連脳ペプチドrelaxin-3発現ニューロン系との相関についての検索も最初の研究計画に予定されている。ごく最近relaxin-3 ニューロン系がアルコール摂取に関与することが報告されたので(Ryan et al, PNAS, December 2013)、アルコール依存・情動という視点から5-HT2C RNA編集との関係をアプローチしたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学外研究分担者に配分した分担金の一部が、動物飼育施設内での術後動物管理に問題が生じ、実験動物手術が遅れ予定の実験が進まず残額が5万円弱発生した。 残額については実験遂行とともに次年度に経費と合わせて速やかに執行する予定である。 H26年度は分担金を30万円予定しており、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による脳内モノアミン測定に関わる経費、合わせて約35万円を予定している。 内訳は 液クロ用特級試薬(アセトニトリル等)約10万円、 液クロ用カラム (東ソー)3本 約15万円、 モノアミン標準試薬 (セロトニンほか)約 5万円、フィルター(ディスク) 約5万円となっている。
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