2016 Fiscal Year Annual Research Report
5-HT2C受容体のRNA編集によるストレス・情動調節機構の機能形態学的研究
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25290014
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
田中 雅樹 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80264753)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 勝敏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60462701)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 5-HT2C / RNA編集 / 情動 / NPY / ADAR2 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は慢性ストレスモデルやRNA 編集異常を起こした遺伝子改変マウスを用いて、セロトニン2C 受容体(5-HT2CR)とそのRNA 編集がストレス・情動反応にどのように関与するか解明することを目的としている。 1.遺伝子改変マウスにおける情動検索 5-HT2CRのRNA編集が起きないINI型マウスは強制水泳試験で有意に無動時間が増加しており、このマウスは野生型に比べてうつ様状態にあることが考えられた。さらにストレス、情動関連遺伝子の検索で、INIマウスは野生型に比べて側坐核NPY遺伝子の有意な発現低下が見られた。アデノ随伴ウイルス(AAV)により側坐核にNPY遺伝子を強制発現させると、無動時間が有意に減少した。まとめると、INIマウスの解析から側坐核NPYニューロンは情動に関与することが強く示唆された。この研究成果はH28年度European J Neurosci誌に掲載された。次に側坐核NPYニューロンの働きを調べるためにNPY遺伝子を発現する細胞のみにCreを発現するNPY-Creマウスを米国MMRRCから購入して繁殖を開始した。 2.遺伝子改変マウスを用いた脳部位特異的なADAR2局所ノックアウトの試み 我々はマウスの飲酒行動が慢性アルコール暴露後の5-HT2CR のRNA編集頻度の変化によって起こることを報告したが、conditionalにRNA編集酵素をノックアウトできるADAR2 floxマウスを用いて側坐核にAAV-Creを感染させ、実際に感染局所のRNA編集がどのように変化するかを側坐核のみをレーザーマイクロダイセクションでパンチして調べADAR2単独で編集されるグルタミン酸受容体(GluR2)や5-HT2CRでRNA編集頻度が低下することが確認できた。実際にこのマウスはアルコール摂取量がコントロールAAVを感染させたマウスのように増加しない傾向を認めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画ではH28年度末までに5-HT2C受容体のRNA編集が情動・ストレスにどのように関与するのかを解明して行く予定で、第2細胞内ループに相当するexon5の5カ所のRNA編集が起きない(INI)、または全て編集される(VGV)遺伝子改変マウス等を用いて解析を行ってきた。その過程で5-HT2C受容体のRNA編集がアルコール依存に関与する可能性を指摘できた。またINIマウスがうつ様行動を示すことから、側坐核の5-HT2C受容体がNPYニューロンを介して情動を制御していることも示した。さらに側坐核のRNA編集が情動やアルコール依存にどのように関係するかをRNA編集酵素ADAR2をコンディショナルノックアウト出来るADAR2floxマウスを用いて現在検索を進めている。具体的にはAAV-Creを感染させADAR2を前脳側坐核特異的にKOしたマウスで情動・依存行動を解析中で、実際に側坐核でRNA編集率が5-HT2C受容体で低下していることを確かめられた。しかしながら行動解析に予想よりも時間がかかり、統計解析できる匹数のデータを得られるまでにあと半年かかる。一応そこまでで当初予定した5-HT2C受容体RNA編集の情動系への関与の解析が一通り終わる。そしてこれらのデータをまとめ論文作成と投稿、学会での成果発表を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2つのプロジェクトについてH28年度の研究結果をふまえて、それをさらに推進させる予定である。 1.側坐核NPYニューロンの情動関与検索 これまでの研究成果から側坐核のNPYニューロンが核外に投射して、情動行動を制御する可能性が示唆された。そのためにNPY-Creマウスに対して、AAV Flex-switchシステムで側坐核のNPYニューロンだけにmCherryを発現させることにより、投射先の同定を試みる。さらに側坐核NPYニューロンのみにAAVを用いてジフテリアトキシン受容体(DTR)を発現させる。そしてジフテリアトキシンを投与し、NPYニューロンを破壊して行動解析を行いたい。予備実験ではAAV-DTRを感染させた部分だけにNPYニューロンが脱落するのを確認している。次にDREADD受容体をAAVを用いて側坐核のみに発現させ、CNOを投与してNPYニューロンを特異的に興奮させるとどうなるかを検索する。 2.遺伝子改変マウスを用いた脳部位特異的なADAR2局所ノックアウトの試み RNA編集酵素ADAR2はグルタミン酸受容体(GluR2)の編集や5-HT2CRの5か所の編集部位の3か所に関わっている。現在コンディショナルにADAR2をノックアウトできる floxマウスを用いて側坐核にAAV-Creを感染させる実験を行っていて、実際に側坐核のRNA編集率が低下していることをGluR2と5-HT2CRで確かめた。ADAR2発現が局所で低下することを組織学的に確かめ、アルコール摂取量、情動・不安行動等の一連の行動解析を行っており、H29年度中にはデータが出そろい、論文作成投稿予定である。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスを用いた脳部位特異的なADAR2局所ノックアウトする研究で、conditionalにRNA編集酵素をノックアウトできるADAR2 floxマウスを用いてAAV-Creを感染させADAR2を前脳側坐核特異的にKOして情動・依存行動の解析を行って、実際に側坐核でRNA編集率が5-HT2C受容体で低下していることを確かめられた。ただ行動解析に予想よりも時間がかかりあと半年ほどで統計解析できる匹数のデータを得られる予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上に記したようにこれらの実験を行って当初予定した5-HT2C受容体RNA編集の情動系への関与の解析が一通り終わる。そしてこれらのデータをまとめ論文作成と投稿、学会での成果発表を行う予定である。研究費は主に動物実験、成果発表に使用予定である。
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