2013 Fiscal Year Annual Research Report
神経細胞におけるエンドサイトーシスとリサイクリング輸送の生理と病理に関する研究
Project/Area Number |
25290024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
久永 眞市 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (20181092)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | タンパク質 / 酵素 / 神経科学 / 発生・分化 / 老化 / Cdk5 / LMTK1 / Rab |
Research Abstract |
Cdk5は神経細胞特異的なメンブレン結合性キナーゼである。最近、Cdk5の新規機能を二つ見つけた。いずれもメンブレン輸送に関わるものである。Cdk5基質LMTK1(脳の新規Ser/Thrキナーゼ)がリサイクリングエンドソーム輸送を制御し、軸索伸長を制限していること、 CIN85/CD2AP(Dab1のCdk5リン酸化部位に結合するアダプタータンパクでアルツハイマー病リスクファクター)がApoER2/VLDLRのエンドサイトーシスを制御することである。本研究ではそれらの結果をさらに発展させ、LMTK1については樹状突起とシナプス形成制御などの生理的役割とAβ産生に関する病理的役割、CIN85/CD2APについてはApoER2/VLDLRエンドサイトーシスの分子機構とアルツハイマー病リスクファクターの所以を明らかにすることである。 本年度は主にLMTK1による樹状突起形成制御についての研究を進めた。LMTK1のノックアウトマウスの大脳皮質神経細胞の形態を調べたところ、神経細胞の樹状突起が過形成されていることが示された。培養神経細胞にLMTK1 WTを発現させても、樹状突起の形成には大きな影響は見られなかったが、不活性型や非リン酸化型を発現させたところ、樹状突起の伸長や枝分れが促進されており、樹状突起形成を抑制している因子であることが分った。樹状突起内でもLMTK1は小胞輸送制御因子であるRab11と共局在をしており、リサイクリングエンドソームを介した膜輸送を制御することにより樹状突起形成を抑えていることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、LMTK1とCIN85という二つの因子が神経細胞内におけるメンブレン輸送および神経突起の形成に関わる役割を明らかにすることである。LMTK1については、樹状突起形成の制御因子として働いていること、および、それにはLMTK1のキナーゼ活性が関与していることを、培養神経細胞およびノックアウトマウスを用いて明らかにした。これについては予定よりも高い達成度が得られた。 CIN85については、神経発生初期の神経細胞移動に関わる因子リーリン受容体の細胞内への取り込みに関わっていそうであることを示せてはいるが、CIN85を補完する因子があるためか、予定どおりの結果が得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
LMTK1については、樹状突起を含めた神経突起形成に関してどのような分子機構でメンブレン輸送を制御しているかをより詳細に検討していく予定である。特にRab11が結合したリサイクリングエンドソームの細胞内ダイナミックスを明らかにして、殆ど知られていなかった神経細胞でもリサイクリングエンドソームの輸送機構を解析する予定である。 CIN85については、その類似タンパク質であり、神経細胞内での機能分担を行っている可能性のある因子CD2APの発現ゲクターを準備した。これまでの明確な結果が得られなかった理由として、CD2APによる代償が考えられる。CIN85に加えてCD2APを併せて解析を行っていく予定である。
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