2014 Fiscal Year Annual Research Report
標的細胞中で発現しない非コードRNA遺伝子をトラップする手法の開発
Project/Area Number |
25290034
|
Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
石田 靖雅 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (10221756)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 遺伝子トラップ / ES細胞 / 長鎖非コードRNA / NMD |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちが開発したUPATrap型のポリAトラップ法では、NEO終止コドンの直下にIRES配列が接続されており、いったんNEO部分の翻訳が終結しても、IRESにリボソームが再会合するため、トラップされた遺伝子の最後のエクソン上に存在する終止コドンまで「第二の翻訳」が継続する。細胞質におけるこの人工的な翻訳により、核内でスプライシングの際に形成されたexon-junction complex (EJC) が融合型mRNAから排除されるため、NMDの引き金シグナルが消失し、NEOタンパク質は安定的に発現される。 しかし、トラップした遺伝子がlncRNAのもので、全てのエクソンを貫通するopen reading frame (ORF) が存在しない場合には、事情が大きく異る。つまり、IRESによって誘発されたタンパク合成は、必ずどこか途中のエクソンに存在する終止コドンの位置でストップするため、それより下流に存在するEJCはリボソームによって排除されず、融合型mRNA上に残存することになる。そのようなEJCは、融合型mRNAにNMDを惹起するため、NEOタンパク質の蓄積が妨げられ、遺伝子トラップは不成功に終わる。 私たちの先行研究によれば、NMDを抑制するためには、遺伝子の前半に生じた「異常な」終止コドン(premature TC)の下流において、必ずしも人工的な翻訳を誘発する必要はない。そのような終止コドンの下流に RNAの非常に強固な二次構造 を作れば、NMDを抑制することが出来る。平成26年度には、この先行研究で用いたNMD抑制エレメントをトラップ・ベクター内のNEOの下流に組み込み、マウスES細胞での遺伝子トラップを実施した。トラップされた遺伝子の中に、従来よりも高頻度にlncRNA遺伝子が含まれることを確認できたため、実験は成功したと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度には、私たちの先行研究で用いたNMD抑制エレメントをトラップ・ベクター内のNEOの下流に組み込み、マウスES細胞を用いて遺伝子トラップを実施した。その結果、NEO部分とトラップされた遺伝子の融合型mRNAのNMDが回避されていることを確認することができた。さらに、トラップされた遺伝子の中に、従来よりも高頻度にlncRNA遺伝子が含まれることを確認することができた。このため、実験は予定通り順調に進行していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
<トラップされたlncRNA遺伝子の発現パターンの解析> 平成27年度には、完成したベクターを用いて重点的に遺伝子トラップを行い、トラップされたlncRNA遺伝子の発現パターンを解析する。既知遺伝子とは異なり、本研究で着目するlncRNA遺伝子には関連するESTが存在しないことも多く、米国NCBIのUniGeneデータベースなどを利用してマウス体内における発現パターンを完全に類推することは難しい。そのため、候補遺伝子ごとにPCR用プライマーを設計してRT-PCRを行い、発現部位を解析する必要がある。 <ES細胞クローンの選定とノックアウトマウスの作製> トラップされたlncRNA遺伝子のうち、免疫系組織(胸腺、脾臓、リンパ節など)や神経系組織(脳や脊髄など)で特異的に発現するものを選別する。そして定法に従いノックアウトマウスを作製する。個体に免疫異常や行動異常などが観察される場合には、さらに詳細な解析を加える。
|
Causes of Carryover |
平成26年度にウシ胎児血清を 500 ml x 10 本購入する必要が生じたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度にウシ胎児血清を 500 ml x 10 本購入する。
|