2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25290042
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
田中 正光 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20291396)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 癌関連線維芽細胞 / 腹膜中皮細胞 / スキルス胃癌 / 浸潤 |
Research Abstract |
本申請は、癌細胞集団が正常間質細胞から排除される・また癌関連間質細胞と手を携えて浸潤する協調機構を解明する事を目的にしている。 間質細胞による癌細胞牽引作用の候補分子として、スキルス胃癌患者組織から樹立された癌関連線維芽細胞(CAF)と正常胃線維芽細胞のマイクロアレイ解析から、 CAF特異的分子であるAsporinを同定した。低分子量プロテオグリカンであるAsporinはスキルス胃癌の細胞外基質の主要成分である事が新たに分った。CAFから分泌されたAsporinはCD44との結合に基づくシグナル経路に依存して線維芽細胞、癌細胞双方のRac経路を活性化しているメカニズムを明らかにし、この事は間質を含めた癌組織の流動性を高める事により、スキルス胃癌の局所浸潤の原因として重要だと考えられる。またスキルス胃がんの腹膜播種に際して、腹膜中皮細胞は癌細胞に先行して腹壁内に侵入している事をヒト症例で観察した。マウス移植実験では中皮細胞が癌細胞を牽引する示唆的な画像が取得でき、その機序として中皮細胞におけるTks5の発現上昇と活性化が中皮自身の浸潤性の獲得と、ひき続く癌細胞の浸潤のガイドに必要である事を明らかにした。この事はスキルス胃癌の腹膜播種組織の浸潤先進部を、中皮細胞のTks5が形成している事を強く示唆する。 間質細胞による癌細胞の排除機構として、細胞移動の接触阻止(CIL)とアポトーシスの誘導について解析を進めた。CILを誘導する解析対象としての臓器と細胞株を選定し終えた。選定した癌細胞と間質細胞間の接触を感知するセンサーとなる細胞膜結合分子をクロスリンカーの利用により精製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スキルス胃癌の新しい間質基質の主要成分として、プロテオグリカンであるAsporinの同定とその作用分子機序について新知見を得ることができ、論文発表した。また腹膜中皮細胞が癌の播種組織先進部を形成するコンセプトとして、Tks5分子の基礎解析も論文投稿中にある。腹膜中皮細胞の可視化マウスの作成については、受注を請け負った業者の出荷ミスと判明した、誤った遺伝子改変マウスが納入されるトラブルが生じていた。同業者からの再度の出荷により、その後の交配はほぼ予定どおりに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1 CAFの癌細胞牽引作用を担う候補分子のシグナル解析を他の分子についても進める。Asporinその他の候補分子の遺伝子抑制を、マウス腹腔内や胃移植腫瘍において試みる。あらかじめ遺伝子抑制した細胞を移植する事の他に、ウイルスやアテロコラーゲン等を併用してRNAiを注入し、内在性の中皮細胞などの当該遺伝子を阻害する事で癌細胞の播種抑制効果が得られるかを判定する。 2癌組織の間質マクロファージの動態を制御する分子解析を進める。 3間質細胞の蛍光ラベル可視化マウスの作成を進める。これを用いて可視化された間質細胞の癌形成に伴う動態をイメージングする。癌細胞の移植により、これらの間質細胞がどう浸潤組織の形成に組み込まれてゆくかデータを取得する。 3癌/間質細胞のコンタクトセンサー候補分子をノックダウンし、CILとアポトーシスを制御するものを選別する。そのセンサー分子複合体を精製し、質量分析により同定する。 その後、候補分子の機能解析結果を踏まえ、臨床病理検体の検索母集団を増やして病期との相関につき統計処理する事で、癌治療標的分子としての位置づけをおこなってゆく。 候補分子の機能阻害ツールの作成に進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
腫瘍随伴マクロファージの機能に影響すると思われる候補分子を得たため、解析対象に当初の予定以外に加える事とした。その分子解析のため遺伝子改変動物を導入し、交配実験が必要となるため他の消耗品の支出を抑え、次年度に用いる事とした。 また業者の出荷ミスにより、正しい遺伝子改変マウスの導入と交配開始時期が遅れたためその必要経費が研究計画全体の後半に多く必要になった。 主に遺伝子改変マウスの作成に伴う動物購入費、および維持管理費に充てる予定である。また、次年度以降に各候補分子のメカニズムの解析作業が増えるため、それに伴う必要消耗品(抗体購入、作成費など)の支出に充てる。
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Research Products
(10 results)