2013 Fiscal Year Annual Research Report
癌間質を標的とした抗腫瘍ウイルス封入血小板ベクターによる癌標的治療の新戦略
Project/Area Number |
25290056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
金田 安史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10177537)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | がん / 血小板 / 標的化 / HVJ envelope |
Research Abstract |
癌治療における課題の1つは、癌組織への標的化である。癌組織では癌細胞の血管内への侵入により微小出血が多発しているという発見に基づき、その部位に集積するフィブリンを標的とした抗体を用いた抗癌剤導入法も報告されている。この結果を基に、血小板をベクターにすれば癌組織への特異的な集積が可能になるのではないかと考えた。一方、不活性化したセンダイウイルス粒子(HVJ envelope;HVJ-E)は抗腫瘍作用を有する。しかしHVJ-Eは赤血球凝集作用があり、静脈内投与ができない。そこでHVJ-Eを封入した血小板ベクターの開発を試みた。マウスの血液より分離した血小板の活性化を防ぎつつHVJ-EとTyrode buffer中で37度で2時間作用させると血小板中に取り込まれることが分かった。1血小板あたり数十の粒子が取り込まれ、電顕でも確認できた。血小板をトロンビンで活性化するとトロンビンの濃度依存的にHVJ-Eが放出されることも分かった。HVJ-Eを取り込んだ血小板(PH complex)は赤血球凝集能を示さなかった。PH complexをマウスメラノーマ細胞B16F10と作用させると24時間以降、B16F10の生存率が低下した。しかしマウスの腫瘍組織から採取して培養した腫瘍血管内皮細胞の生存率は変化しなかった。PH complexをB16F10の腫瘍を皮下にもつマウスの尾静脈から投与し、24時間後に各組織の切片を作成して、血小板やHVJ-Eを検出すると腫瘍組織に特異的に集積しており、腎臓、肝臓、脾臓にはほとんど認められなかった。腫瘍組織ではフィブリン塊の部位に集積しており、多くは腫瘍組織内の血管に沿って検出され、一部HVJ-Eが腫瘍内に入っていることが明らかになった。腫瘍内ではPH complexの血小板が活性化されていることがCD62P抗体を用いた免疫染色で確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目指した通り、HVJ-Eを血小板に封入し、全身投与できること、腫瘍への標的化が可能なことをマウスモデルで示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
HVJ-E封入の血小板ベクターをメラノーマを移植したマウスに全身投与し、抗腫瘍効果を評価する。またそのメカニズムを解明する。
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