2014 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞のエネルギー代謝とストレス適応の協調機構の解明と治療標的化
Project/Area Number |
25290061
|
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
冨田 章弘 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター, 部長 (40251483)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 癌 / 分子標的治療 / 微小環境 / グルコース / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍内組織のがん細胞は、グルコース飢餓などの特殊な環境下で生存し増殖する。このため、エネルギー代謝と協調して起こるストレス適応機構が重要な役割を果たす。本研究では、こうした適応機構を制御する治療法開発の基盤を築くため、ドラッガブルな分子標的を同定し、その標的としての妥当性を検証するための研究を行う。当該年度は、引き続き、制がんの標的となる候補分子の探索同定とその機能検証といった基盤的基礎研究を行うこととし、研究項目1) UPR活性化に導く適応制御因子の探索と機能検証、と2) UPRの関与しない適応制御因子の探索と機能検証を中心に進めた。研究項目1)では、耐性細胞の樹立を基盤として、これまでに見出してきたUPR阻害剤の標的分子の同定を目指した研究を継続して進めた。昨年度樹立に成功した耐性細胞においては、マイクロアレイによる遺伝子発現解析から、薬剤輸送タンパク質の過剰発現を認めた。そのため、さらなる耐性細胞の樹立も必要となり、ヒト遺伝子に対する網羅的なshRNAレンチウィルスライブラリーを用いた耐性細胞の樹立に着手した。また、昨年度実施したミトコンドリア―小胞体クロストークを制御する因子に加え、オートファジー関連因子についてグルコース飢餓等に感受性化させる因子の探索を行い、1種類のsiRNAの同定に成功するとともに、その阻害剤がUPR抑制活性を有することを見出した。一方、研究項目2)では、ミトコンドリアDNAを欠損したρ0細胞株をゼノグラフト環境下で選択し樹立した、グルコース飢餓に耐性を示すρ0細胞変異株の性状解析を継続し、HIF-1が恒常的に活性化し恒常的に低酸素応答が活性化している一方で、興味深いことに、低酸素下でのHIF-1の転写活性化能は消失していることなどが明らかになった。そして、ミトコンドリア機能とHIF-1転写活性化との関係についての検討に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、エネルギー代謝と協調して起こるストレス適応機構に焦点を当て、こうした適応機構を制御する治療法開発の基盤を築くため、ドラッガブルな分子標的を同定し、その標的としての妥当性を検証するための研究を行うことを第一の目的としている。当該年度では、昨年度に引き続き、樹立した耐性細胞や変異株の網羅的な遺伝子発現解析、さらには、siRNAフォーカスドライブラリーを用いた探索などを継続し、おおむね順調に研究が進んだものと考えている。次年度は最終年度となるが、引き続き、こうした探索研究を続行し、同定した因子の機能解析を行うことにより、より有効な分子標的治療の開発に向かった研究を展開していきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究は3年間の計画で第2年次終了時点であり、研究はおおむね順調に進み、研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題はないものと考えている。第3年次においては、当初の予定通り、平成26年度までの成果に基づき、研究項目1) UPR活性化に導く適応制御因子の探索と機能検証、ならびに2) UPRの関与しない適応制御因子の探索と機能検証の探索的研究を継続しつつ、同定された個々の適応制御因子について、その阻害剤を用いるなどによって、研究項目3)の治療標的としての妥当性検証の研究への展開を図る予定である。
|
Research Products
(10 results)