2014 Fiscal Year Annual Research Report
発声行動依存的な脳内エピジェネティクス動態と学習臨界期制御機構の解明
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25290063
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和多 和宏 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70451408)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 発声行動 / 学習臨界期 / 時空間制御 / ソングバード / DNAメチル化 / 発声学習 / 神経活動依存的遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、動物が生成する「能動的行動」が脳内のエピジェネティクス動態にいかに関わり、その後の遺伝子発現を介して個体の行動発達にどのような影響を与えるのか実験的に検証することを目指し研究を進めている。当該年度における研究の成果として以下の点を報告する。 (1)ゲノムDNA脱メチル化誘導能をもつTET (ten-eleven translocation)1-触媒領域改変型タンパク質の発現:TET1遺伝子は、5mCから5hmへ変換する。今年度アデノ随伴ウイルスAAVによるin vivo発現系の利用を可能にするためにタンパク立体構造情報をもとに触媒活性を保ちながらより短いサイズ(1.5kb)である改変型を作成した。HEK293T培養細胞での発現系では、非常に強力な5mCから5hmへの変換能力をもっていることが確認できている。TET1-触媒領域の過剰発現によるゲノムDNAの脱メチル化活性は、発達過程で転写活性化制御がされるプロモータにより強い影響を与えることが報告されており、ソングバードの発声学習臨界期限定的に発現制御を受ける遺伝子群のプロモータ領域も同様のゲノムDNA脱メチル化制御を受け、学習臨界期中のjuvenileの遺伝子発現パターンに維持されることが予想される。 (2) 逆行性性発現能をもつアデノ随伴ウイルス(AAV)の応用利用 ソングシステムを構成する歌神経核において、アデノ随伴ウイルスの特定セロタイプが逆行性発現能をもち、インジェクション部位に投射している投射元の投射ニューロンに特異的な遺伝子発現誘導が可能であることを今年度当研究室で独自に明らかにした。また、インジェクション部位のみに限局した発現誘導が可能なAAVセロタイプも同定した。現在Gadd45bおよびH3.3B遺伝子の動物個体内での発現誘導実験を開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に予定していた計画が実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度においては、以下の3点に留意した研究を進める。 エピジェネティクス制御因子の過剰発現系による発声学習およびその発達変化の行動学的検証を継続する。特に以下の3点にフォーカスした研究を進める。(i) 神経核RA投射ニューロン特異的なエピジェネティクス状態改変に伴う遺伝子発現への影響の検証:これまでに同定してきた発声学習可塑性と強い相関を示す多段階発現制御を受ける遺伝子群の発現動態変化に特にフォーカスする。エピジェネティクス制御因子の過剰発現は、学習臨界期開始時から継続発現させ恒常的に若鳥時のエピジェネティクス状態を誘導させる個体、及び)学習臨界期の終了時から発現誘導を行い、一度発声パターンを学習し終えた成鳥から若鳥時のエピジェネティクス状態を再誘導させる個体の2条件の動物個体を作成し、その発声学習およびその発達変化の行動学的実験を現在進めている。
(ii) 神経核RA投射ニューロンでの樹状突起・シナプス形態における細胞形態変化の解析:Tet1-触媒領域改変型と同時に発現誘導するGFPラベリングによる可視化を行う。
(iii) 発声行動表現型発達変化にフォーカスした行動解析による検証:行動表現型の抽出・解析はこれまでに当研究室で独自に開発してきた発声パターン変化解析法を含む音韻特性・音素配列パラメータに着目し解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度の研究進捗が予定よりもスムーズに進んだ結果、不要な支出を抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度期間中での使用も念頭にいれ、5月より必要に応じて使用を進める。
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Research Products
(9 results)