2015 Fiscal Year Annual Research Report
発声行動依存的な脳内エピジェネティクス動態と学習臨界期制御機構の解明
Project/Area Number |
25290063
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和多 和宏 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70451408)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 発声学習 / 学習臨界期 / エピジェネティクス / 神経可塑性 / ソングバード / 感覚運動学習 / 次世代シークエンス / 遺伝子発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、動物が生成する『行動』が脳内のエピジェネティクス動態にいかに関わり、その後の遺伝子発現を介して個体の行動発達にどのような影響を与えるのか検証することである。平成27年度においては、以下の3点に留意した研究を進めた。 (i) 神経核RA投射ニューロン特異的なエピジェネティクス状態改変に伴う遺伝子発現への影響の検証:これまでに同定してきた発声学習可塑性と強い相関を示す多段階発現制御を受ける遺伝子群の発現動態変化を詳細に検証した。(ii) 神経核RA投射ニューロンでの樹状突起・シナプス形態における細胞形態変化の解析(iii) 発声行動表現型発達変化にフォーカスした行動解析による検証。これらの結果、その結果、(1)経験依存的に発現制御を受ける遺伝子群の存在を明らかにするため、日齢・発声行動経験・直前の発声行動の有無に着目してサンプリングした15個体から神経核RA, HVCの2脳領域を切り出し、次世代シークエンスによる転写産物解析を行った。その結果、Arcと同様に発声行動経験依存的かつRA特異的に発現制御される遺伝子が126個同定した。(2)幼鳥個体、成鳥個体、発声阻害された成鳥個体を用いてゴルジ染色を行い、発声行動経験に伴うRA投射ニューロン樹状突起の形態変化を観察した。その結果、発声行動を阻害された成鳥個体のスパイン密度は、学習臨界期中の幼鳥に近いパターンを維持していることが明らかになった。(3)また、発声行動表現型の固定化はすべて発声行動経験の蓄積に伴う現象であり、その神経分子基盤として上記の多段階発現制御を受ける遺伝子群の発現制御の重要性を示唆する結果を蓄積することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度当初に計画した3つの実験全てを実施できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
H28年度においては、『脳内エピジェネティクス状態の人工改変によって、個体レベルの行動発達に影響を与えうるのか否か、実験的に検証』する。このために、これまでに独自開発してきたウイルス発現系を応用利用し、脳内のソングシステム神経核特異的なエピジェネティクス制御関連遺伝子群の発現改変を行う。これに付随して脳内エピジェネティクス状態・他の遺伝子群の発現変動が見られるか否か、細胞形態変化が観察されるか否か、感染脳部位を選択的にサンプリングし、ゲノムワイドにおける影響を検証する。また発声パターンの固定化時期・音声鋳型との類似度を指標として、行動発達に与える影響に関しても解析を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度の研究進捗が想定していたよりもスムーズに進み、不要な支出を抑えることができたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月より使用をはじめる。今年度が最終年度であるため、2月までに全額を使用する予定にしている。
|
Research Products
(5 results)