2014 Fiscal Year Annual Research Report
M期染色体動態を制御する核小体RNA-タンパク質ネットワークの解析
Project/Area Number |
25290064
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
木村 圭志 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50332268)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分裂期 / 染色体 / 核小体 / RNA / NOL11 |
Outline of Annual Research Achievements |
核小体は真核生物の核内に存在する最も大きな構造体で、リボソーム生合成の役割を持つ。一方、近年の研究から、核小体が様々な細胞機能に関与することがわかってきた。本研究では、核小体に存在するRNAやタンパク質が、正常な細胞分裂期(M期)の進行に関与するかを明らかにすることを目的とした。 これまでの研究で、約600種類の核小体タンパク質に対するsiRNAを用いた網羅的な解析から、約60種類の因子がM期進行に関与することを見出し、最も顕著なフェノタイプを示したNOL11の解析を行った。 HeLa細胞での解析から、NOL11が核小体因子WDR43、Cirhinと複合体を形成することを見出した。これらの因子のうちでCirhinは強いRNA結合活性を有し、M期ホスファターゼPP1との結合コンセンサス配列を持っている。これらの因子をノックダウンすると、細胞周期のG1,S,G2期の進行には影響を与えず、M期進行を特異的に遅延させることを見出した。さらに、それぞれのタンパク質をノックダウンした際に、同様のフェノタイプ(姉妹染色分体間の対合異常、染色体の整列異常、Aurora Bの局在に異常)が生じることが明らかになった。また、NOL11複合体が姉妹染色分体間の対合を担っているコヒーシン複合体と細胞周期を通して相互作用をすることを見出した。一方、NOL11複合体とAurora Bやコンデンシンとの相互作用は観察されなかった。また、NOL11以外にも、核小体に局在する数種類のプロセシング因子やスプライシング因子をノックダウンした際にも、M期特異的に細胞周期の遅延が生じることを見出した。 さらに我々は、p53ポジティブな培養細胞からプロセシング因子をノックダウンすると、核小体のRNA含有量が増加して細胞老化が起こること、rRNA転写因子をノックダウンすると核小体RNAが減少し細胞死が起こることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画1)の「核小体RNAによるM期染色体の制御」に関しては、ツメガエル卵抽出液のシステムで、RNaseによりRNAを除去した際に染色体の形態と整列に異常が生じることからRNAの必要性が示唆された。現在はadd backの条件を検討している。また、HeLa細胞から染色体を単離した実験では、mRNA, rRNAと比較してpre-rRNAが染色体に高濃度に局在することが示された。 計画2)の「NOL11によるM期染色体動態制御機構」に関しては、NOL11がWDR43, Cirhinと複合体を形成していることを見出したので、それぞれのサブユニットの機能解析を行った。それぞれのサブユニットをノックダウンしたところ類似したフェノタイプ姉妹染色分体間の対合異常、染色体の整列異常、Aurora Bの局在に異常)が観察されたことから、協調的にM期進行に関与することが示された。また、ノックダウンにより、細胞周期のM期にのみ遅延が生ずることから、これらの複合体がM期特異的な機能を持つことが示された。 計画3)の「核小体RNA-タンパク質ネットワークの解明」に関しては、核小体に存在するいくつかのプロセシング因子、スプライシング因子が正常なM期の進行に必須であることを見出した。 計画4)の「核小体RNAタンパク質ネットワークの制御」に関しては、核小体タンパク質をノックダウンあるいは過剰発現させることにより、核小体RNA量を制御できることを見出した。またその際にp53依存的に細胞死や老化が誘導されることを見出した。 上記のように、実験計画はおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように、現在までの研究が順調に進行しているので、当初の研究計画に沿って今後の研究を推進する。研究は、前年度に引き続き、次の4つのプロジェクトを行う。すなわち、計画1)の「核小体RNAによるM期染色体の制御」、計画2)の「NOL11によるM期染色体動態制御機構」、計画3)の「核小体RNA-タンパク質ネットワークの解明」、計画4)の「核小体RNAタンパク質ネットワークの制御」である。 計画1)に関しては、前年度に引き続きM期進行に関与するRNAの種類の特定を目指す。計画2)に関しては、ノックアウトや強制発現の実験などにより、NOL11複合体を形成している、それぞれの因子のM期での役割を解析する。CirhinにはRNA結合活性を有しており、またM期ホスファターゼPP1との結合コンセンサス配列を存在するので、ドメイン解析や、変異体を作製し、その機能を詳細に解析する。 計画3)に関しては、昨年度の研究から、核小体因子であるいくつかのプロセシング因子とスプライシング因子がM期進行を特異的に阻害することを見出した。本年度は、これらの因子の機能解析を行い、M期のどの過程に関与しているかを明らかにする。また、M期キナーゼ、ホスファターゼ、コンデンシンやコヒーシンなどの染色体タンパク質との関連を解析する。また、NOL11複合体、RNAとの相互作用も解析する。これらの解析で、M期を制御する核小体RNA-タンパク質ネットワークの解明に努める。 計画4に関しては、核小体タンパク質をノックダウンあるいは過剰発現させることにより、核小体RNA量を制御し、p53が不活化されたHeLa細胞を用い、M期の進行を観察する。また、DNA障害や栄養枯渇などのストレスに応じて、M期染色体に結合するRNAやタンパク質の結合量・局在・修飾が変化するかを解析する。
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Causes of Carryover |
研究を遂行するにあたり、極力効率的に予算を使用して成果をあげることに心がけた。そのため、プラスティック用品等は、使用後に洗浄し何度も繰り返し使用するなどして、経費の削減に努めた。したがって、当初の予定よりも少ない経費で、予定していた研究計画を完了することができたので、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の研究成果から、いくつかのプロセシング因子やスプライシング因子がM期の進行に関与することを見出した。これらの因子の機能を解析するためには抗体を用いた解析が有効であるので、市販抗体の購入や抗体の作製に経費を当てたい。また、これらの因子をノックダウンするためのsiRNAの購入費用にも使用したい。また、ツメガエル卵抽出液を用いた解析を行うための、ツメガエル購入費用や卵抽出液を作製するために各種試薬にも経費を使う予定である。 さらには、情報収集や研究成果を社会に情報を還元するため、学会に参加するための学会参加費や旅費、論文投稿料にも経費を使用したい。
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Research Products
(5 results)