2014 Fiscal Year Annual Research Report
分子シミュレーションによるV型ATPaseの回転機構の解明
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25291036
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
池口 満徳 横浜市立大学, 生命医科学研究科, 教授 (60261955)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | V型ATPase / 分子モーター / 分子シミュレーション / 分子動力学 / V1-ATPase |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、コンピュータシミュレーションを用いて、V型ATPaseの回転機構を明らかにすることを目的としている。昨年度は、V1-ATPaseの立体構造に対し、溶媒を露わに含んだ全原子分子動力学シミュレーションを実行した。このシミュレーションは、安定構造の周囲の構造ゆらぎを計算する平衡分子動力学シミュレーションであり、V1-ATPaseの構造柔軟性や相関運動の特徴について多くの知見を得ることができたが、実際に軸が回転する現象を観察するには、シミュレーションの時間スケールが短すぎるという問題があった。 そこで、本年度は、各アミノ酸を一つの粒子として取り扱う粗視化分子動力学シミュレーションを導入することで、長時間ダイナミクス計算を実現し、軸の回転を直接計算することを試みた。粗視化分子動力学シミュレーションのモデルでは、類似のF1-ATPaseの回転分子機構解析でも成果を上げているSwitching Goモデルを採用し、A、Bサブユニットの構造変化を強制的に起こすことで、軸がどのように回転するのかを観察した。AまたはBサブユニットと軸の間の相互作用として、1.斥力のみ、2.斥力+静電相互作用、3.斥力+疎水相互作用、4.斥力+静電+疎水相互作用の4通りを試した。それぞれの計算では、統計性を上げるために100回計算を実施した。その結果、まず、1の斥力だけでも、軸が回転する場合があるが回転は不安定であり、斥力に加え、静電、疎水相互作用を導入すると回転が安定することがわかった。このことは、AまたはBサブユニットが作る中心部分の空隙の形が異方的であって、その形に合わせて軸が回転するが、一方、AまたはBサブユニットと軸の間の静電相互作用、疎水相互作用も安定な回転に貢献していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に記したように、昨年度に行った、V型ATPaseの全原子平衡分子動力学シミュレーションによる動特性解析の成果に引き続き、本年度は、回転を直接計算可能な粗視化分子動力学シミュレーションを実施するなど、回転機構の解明を進めており、現時点では、順調に研究は進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に実施した全原子分子動力学シミュレーションは、安定状態の周囲の揺らぎを計算することを目的としていたが、本年度実施した粗視化分子動力学シミュレーションでは、ダイレクトに回転現象を計算することに成功した。しかし、粗視化分子動力学シミュレーションでは、モデルの精度が低いという問題があり、それを解決するために、粗視化分子動力学シミュレーションと全原子分子動力学シミュレーションの結果を統合的に解釈し、全体像を理解していく、すなわち、マルチスケールシミュレーションの方法を用いて、V型ATPaseの回転機構を解明していこうと考えている。
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Causes of Carryover |
予想外に順調に分子動力学シミュレーション計算が進んだので、計算機使用料等が少なくて済んだためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度には、より大規模な計算も必要になってくると思われるので、その計算の費用やデータ格納のための記憶装置なども必要になってくると思われる。
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