2014 Fiscal Year Annual Research Report
オートファゴソームをモデルとした真核細胞のオルガネラ形態形成機構の解明
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25291040
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 邦律 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (20373194)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / 出芽酵母 / オートファゴソーム / 小胞体 / ER exit site / 膜輸送 / オルガネラ形成 / 栄養飢餓 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞の内部では独立した機能を持つオルガネラが必要に応じて形成と分解を繰り返すことにより恒常性が維持されている。オルガネラの分解にはオートファジーと呼ばれる細胞内分解システムが重要な役割を担っている。オートファジーとは、被分解オルガネラを取り囲むように二重膜オルガネラであるオートファゴソーム(以下AP)が形成され、APが分解コンパートメントである液胞と融合することにより、標的オルガネラの分解を達成するシステムである。一般的にはオルガネラ形成時の脂質供給源として重要な役割を果たしているのが小胞体だと考えられている。我々の研究により、形成中のAP(以下隔離膜)に、COPII小胞形成に関わる機能領域であるER exit siteを介して小胞体が接していることが明らかとなった。昨年度はこの研究結果を論文として発表した(Suzuki et al., J. Cell Sci., 2013)。 上記の結果から、AP形成の分子機構を理解するためには、隔離膜と小胞体との相互作用の様式と分子機構を理解することが重要であることが分かる。現在のところ、隔離膜を生化学的に同定できていないことから、本年度は隔離膜マーカーの探索を形態学的に進め、AP形成に必要なAtg3が隔離膜に局在することを示した(Ngu et al., J. Biol. Chem., 2015)。今後は局在未知のAtgタンパク質に注目して局在及び機能の解析を進め、隔離膜の生化学的同定を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」の項目でも記載したように、(1)論文を継続的に公表できている点が第一に挙げられる。論文に記載した結果を基に、(2)COPII小胞を構成するタンパク質であるSec13の変異体を使用してオートファジー活性を見積もり、Sec13を欠いた細胞であってもCOPII小胞形成能が保持されてさえいればオートファジーの活性を保持できることを示した。また、(3)Atg2を欠いた細胞では顕微鏡下に観察されるAtgタンパク質とCOPII小胞との共局在が失われることを示し、(4)Atg3を新たな隔離膜マーカーであることを見いだし、論文として公表できた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画の当初より、COPII小胞を構成するタンパク質とAtgタンパク質との物理的相互作用を検出することが目的のひとつであった。最近COPII小胞を構成するタンパク質と複数のAtgタンパク質が物理的に相互作用していることが他のグループにより示された(Graef et al., Mol. Cell Biol., 2013)。この手法を利用することで、Atg2-Atg18複合体がCOPII小胞と他のAtgタンパク質との相互作用を媒介している可能性を我々の手で再現することを狙っている。また、これまで様々な研究者が試みたものの手法として確立していないCOPII小胞の免疫電子顕微鏡観察による検出を成功させるべく、新たな手法を工夫して実験を進めている。並行して隔離膜のマーカータンパク質の探索を進めていく。
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Causes of Carryover |
平成27年1月、細胞内分解システムであるオートファジーの研究を行っている際に、オートファゴソーム形成に必要なプロテアーゼであるAtg4の酵素活性がオートファゴソームの形成速度と大きさを規定していることが示唆された。Atg4変異体を用いてAtg4の活性を制御することによりオートファゴソーム形成に関する新たな知見を得ることに成功した。これらの結果に基づき、Atg4の変異体を多数取得し、解析することができれば本研究計画のさらなる発展が期待される。 新たなatg4変異株の作成と実験に3ヶ月を要すると見積もっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
GFPを融合したAtg4の局在を経時的に解析することによりAtg4の作用機構を解明する。タイムラプス顕微鏡システムの構築に1,100,000円の費用を想定している。
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