2013 Fiscal Year Annual Research Report
チューリングではなく一方向阻害モデルによる指の個性と本数の決定原理の解明
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25291050
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鈴木 孝幸 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40451629)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 発生•分化 / 画像解析 / イメージング / 数理生物学 / モデル化 / 定量化 / 遺伝子 |
Research Abstract |
指の軟骨パターン形成を理解したい時に大きな問題になるのが1細胞レベルでの動態観察が現段階で出来る技術がないことがあげられる。これは肢芽の組織の厚みが大きいために共焦点顕微鏡を用いた観察では軟骨が形成される内部の中胚葉の動態を見る事が出来ないためである。また指がある動物は両生類以上の高等脊椎動物でありモデル動物としてはニワトリ、マウスを2つが解析に適している。しかし上述した問題からどちらの種においても生理的な状態で軟骨パターンがどのように出来てくるのか直接見た人はいない。本研究では平成25年度の実験でニワトリ胚の肢芽の細胞を単離して効率的に遺伝子導入を行い、培養皿の上で細胞の動態を解析する実験手法を開発した。この解析から軟骨パターンが出来る場所は立体的に細胞が積み上がった状態になっており、2次元でみると軟骨パターンが島状に観察された。このことから軟骨が出来る部分は細胞が集まって密度が高い3次元の空間であることが分かった。この解析方法を用いて現在3日間に渡るタイムラプス観察、及び核の情報をトラッキングし軟骨パターン形成時に細胞がどのように動いているのか3次元で理解する事を目指している。 次に後側の指間部からの分泌因子の流れを観察するために分泌型EGFPを発現する指間部を別のニワトリ胚に移植し、分泌因子の流れを共焦点顕微鏡を用いて観察した。その結果移植した前側の指間部に分泌型EGFPのシグナルが観察された。この結果は仮説の通り指間部の細胞内で分泌因子が後側から前側にかけて一方向に作用していると言う結果を示している。また同様にして当初の予定通りVenus-Noggin分泌細胞を移植して観察を行ったが、こちらの実験については分泌されたNogginの蛍光シグナルが観察出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の解析では、指間部における分泌因子の流れを可視化することに成功し、分泌因子が後側から前側に作用してるという結論を得た。この結果はチューリング理論では説明出来ない軟骨パターン形成のメカニズムが存在する事を示しており、本研究のタイトルにもあるように最も重要な結論が得られた事を示している。この点についてVenus-Nogginタンパク質の蛍光シグナルが観察されなかった事は予想外であったが分泌型EGFPも実験に用いていたため結論を得る事が出来た。このことについては予定通りのペースで研究を進める事が出来たと言える。また軟骨パターン形成を培養皿上で再現し、細胞レベルで動態解析を行う方法を1年で確立出来た事は非常に研究が進んだと言える。肢芽の細胞に遺伝子を入れる条件は非常に厳密な制御が必要であることから本1年間で条件検討が終わった意義は大きい。またHox遺伝子群の免疫染色についても予定通り解析を行うことができた。軟骨パターンが形成される時の細胞動態の解析は平成26年度に行う予定であったが前倒しして解析を進めておりこの点については当初の計画以上に進展していると言える。唯一計画より遅れているのが肢芽でSHHシグナルを遮断した時の分泌因子の流れの観察である。これはレセプターであるPtch1の変異体を肢芽に遺伝子導入し、その後指間部で分泌型EGFPシグナルの蛍光を観察する予定であったがPtch1の変異体を肢芽に遺伝子導入してもSHHシグナルの減弱が見られない事から未だに指間部における分泌因子の流れの実験が出来ていない。平成26年度はこの点を克服するためにSHHシグナルの阻害剤を肢芽に作用させたときの分泌因子の流れをみる実験に切り替えて解析を進めて行きたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度では前年度の結果を踏まえ、まず肢芽の細胞を培養した培養皿にHox遺伝子を導入し軟骨パターン形成に与える影響を検討する。RCAN(A)CMV-Hoxa13-2A-EGFP及び, RCAN(B)CMV-Hoxd13-2A-DsRed2の発現ベクターを昨年度にすでに作成しているのでこれらのウィルスを作成し、肢芽の細胞に感染させて遺伝子導入する。異なるenvelope遺伝子を用いることで同一細胞に2つの遺伝子を導入したいと考えている。軟骨パターンに変化が見られた時には画像をImageJで解析して2値化し、軟骨の大きさや距離感が定量的にどれくらい違うのかを解析する。また同様の手法を用いてStealthRNAiを用いてHoxa13, Hoxd13遺伝子をノックダウンした時の軟骨パターン形成についても同様に解析を行う。また軟骨パターン形成に必須のBMPシグナルやSox9遺伝子のシグナルが培養皿の上でどのように伝達されているのかを解析する。これにはすでにSMAD応答配列またはSOX9結合配列の下流にルシフェラーゼを発現させたコンストラクトをすでに準備済みなのでこれを培養皿上の肢芽の細胞に遺伝子導入し、発光顕微鏡を用いて細胞レベルでシグナルのゆらぎを定量的に解析する。 分泌因子の流れに関する実験についてはまずSHHシグナルを阻害する薬剤であるサイクロパミンを肢芽に直接作用させ、その後指間部に分泌型EGFP発現細胞を移植し、分泌因子の流れを観察する。また組織的に分泌因子の流れが生じるメカニズムも検討していく。指間部に分泌型EGFP発現細胞を移植し、その時移植した前側の指間部や後側の指間部を切断し分泌因子の流れが変化するかどうかを検討する。また本年度はVenus-BMPを発現する細胞も作成し同様に作用する方向が前側かどうかを観察する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究結果の所に述べた様にVenus-Noggin発現細胞は細胞外に分泌された蛍光シグナルが観察されなかった。このため当初予定をしていたVenus-Noggin発現細胞を用いた解析に関わる細胞培養実験(培養ディッシュ30000円、培地血清20000円)、及びそれを移植するためのニワトリ鶏卵100円x1000個=100000円、解析に使用する顕微鏡の使用料金1-2万円分の未使用額が生じた。 平成26年度の研究実施計画の部分に述べた様にVenus-Noggin細胞の代わりにVenus-BMP発現細胞を実験に用いる予定である。平成25年度分に生じた未使用額は平成26年度に発現細胞の種類を変えた同様の実験に用いる。
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Research Products
(7 results)