2013 Fiscal Year Annual Research Report
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25291060
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柿本 辰男 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70214260)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植物 / 浸透圧 / ストレス / アブシジン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は悪環境にさらされた時、自らの成長を抑制する仕組みを持っている。その仕組みを、表皮細胞を用いて解析した。葉原基の原表皮細胞は、メリステモイド母細胞(MMC)になるか、一般の表皮細胞であるペーブメント細胞になるかの運命の選択を行う。MMCは増殖能を持ち、孔辺細胞や一般の表皮細胞であるペーブメント細胞を生み出す。MMCの幹細胞性は転写因子SPCHにより付与されている。私達は、浸透圧ストレスが、MAP kinaseカスケードを介してSPCHタンパク質の量を減少させ、MMCを消失させる事、また、この減少が、ストレス応答としての細胞増殖の抑制の原因となっている事を示した。このSPCHの分解に至るストレス応答は部分的にアブシジン酸により仲介されていることも見いだした。アブシジン酸経路の分子機構を調べるため、主要なSnRK2の変異体であるSnRK2.2;3;6三重変異体を用いて、浸透圧ストレスによる細胞増殖抑制を調べたところ、アブシジン酸による葉の表皮増殖抑制は、完全にSnRK2を介してシグナルが伝えられている事、浸透圧応答におけるアブシジン酸経路はそれほど大きくない事がわかった。アブシジン酸もSPCHの量を減少させるが、この減少によりMMCの数を減らすのではなく、MMCが減少した結果としてSPCHが減る事を示した。さらに、dellaの5重変異体を用いた実験により、アブシジン酸応答はDELLAタンパク質が必須であることを確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請に記載の目的および計画である、浸透圧ストレスおよびアブシジン酸に応答した成長抑制の仕組みの解明はほぼ計画通り進み、一部は論文発表をおこなった。ストレスに応答して植物が生長を抑制することは適応的反応であるという概念は以前にもあったが、その分子機構は部分的にしか知られていなかった。本研究により、シロイヌナズナは、浸透圧ストレスに応答してMAPKを介して幹細胞維持に必要な転写因子SPCHを分解し、幹細胞数を減らすことにより生長を抑制する事が明らかになった。一方、アブシジン酸はDELLAタンパク質が関与する、これとは別経路で幹細胞数を減少させた。植物がストレスに応答して積極的に生長を抑制する分子機構を系統的に深く調べた研究としては始めての報告であり、植物のストレス応答および発生生物学に於ける重要な研究となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で浸透圧およびアブシジン酸に応答した成長抑制機構について重要な因子が解明された。しかしながら、まだ多くの未知の機構の存在が予測される。そこで、浸透圧ストレスに応答したMMCの減少が起きにくい突然変異体をスクリーニングする。
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Causes of Carryover |
高浸透圧によるMMC数の減少に異常がある突然変異体のスクリーニングおよび原因遺伝子のマッピングが、予測できなかった表現型の不安定さのために当初予定よりも時間がかかる事が判明した。そのため、突然変異のマッピングおよび、突然変異の効果を詳細に調べる実験に遅れが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年度末までに原因遺伝子のマッピング、同定、および突然変異による表現型の詳細を調べる実験を行う。
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Research Products
(13 results)