2013 Fiscal Year Annual Research Report
生きる化石「接合菌類」の多様性から読み解く菌類の陸上進出と繁栄
Project/Area Number |
25291084
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
出川 洋介 筑波大学, 生命環境系, 助教 (00311431)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣瀬 大 日本大学, 薬学部, 助教 (20513922)
山田 明義 信州大学, 農学部, 准教授 (10324237)
細矢 剛 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (60392536)
河合 忍 神奈川大学, 理学部, 研究員 (00409989)
星野 保 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオマスリファイナリー研究センター, 研究員 (60357944)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | インベントリー / 接合菌類 / 鞭毛 / 菌根 / タイ類 / 寄生 / 共生 / ツボカビ |
Research Abstract |
1.インベントリー調査:温帯域(長野県、本州各地)、熱帯域(南西諸島、マレーシア)で調査を実施し、以下の分類群に関し多くの成果が得られた(ケカビ亜門アツギケカビ目、クサレケカビ目、ケカビ目、ハエカビ亜門ハエカビ目、バシディオボルス目、キクセラ亜門キクセラ目、ハルペラ目)。うち、ケカビ亜門の未記載種およびフロラ報告については2件の論文公表を行った。アツギケカビ目、キクセラ目、ハルペラ目の未記載種については6件以上の学会発表を行った。2.分子系統解析:上記で得られた4亜門の新規材料、および比較のためのツボカビ門について解析を行った結果、特にアツギケカビ目、クサレケカビ目、キクセラ目、ツボカビ門のツボカビ目、ロブロミケス目において系統を考察する上での重要な新知見が得られた。3.鞭毛欠失の解析:ツボカビ門の鞭毛装置構造についての解析を進め基礎知見を蓄積した。トリモチカビ亜門の一部が、鞭毛の痕跡を残すBasidiobolus属に特異的に寄生する菌寄生菌であることが詳しく解明され、この菌はツボカビ門にも寄生をすることが判明した。接合菌類によるツボカビ門への寄生報告前例はなく系統進化を考察する上で重要である。4.菌根の起源の解析:アツギケカビ目について近年、環境配列により原始的なタイ類の内生菌として知られていた系統群が、同様な手法により本邦にも産することがわかり、その一部について実際の菌体把握、部分的な培養にも成功した。今後、タイ類との相互作用系が確立できれば菌根の起源を探るための好材料となる。また野外インベントリー調査により温帯域および熱帯域より同目の未記載種が採集され形態観察、系統解析を行い記載発表を準備している。またアツギケカビ目との関連が想定されるグロムス門の未記載種と考えられるものが関東地方より得られ、微細構造の比較解析および、外部研究者との共同による分子系統解析を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画にある4項目のうち、1.接合菌類4亜門のインベントリー調査と、2.その成果に関する分子系統解析および、4. 菌根の起源に関する解析については多くの成果が得られた。特に4.菌根の起源については、解析を進めるためにて適切な新規材料が多数確保され、今後の展開が期待される。一方、3.鞭毛欠失に関する解析については、インベントリー調査においては特に新たな材料を確保することはできなかった。しかし、比較解析をするための基礎資料となるツボカビ門に関するデータは多数蓄積されたことから、翌年度は既存の材料を基にした解析も検討していく必要がある。全体としては、接合菌類の分類体系の検討、菌類の陸上進出の解析という本研究課題の遂行はおおむね順調に進行していると判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
インベントリー調査の結果、菌根の起源に関わるケカビ亜門については今後の解析を進める上での適切な新材料の確保が予想以上に進展した。一方、Basidiobolus属を含むハエカビ亜門を対象とした鞭毛の欠失に関する解析はやや難航している。その反面、接合菌類の4亜門のうち、当初の計画では重視していなかったキクセラ亜門、トリモチカビ亜門について大きな成果があった。前者は動物との共生もしくは寄生を示す菌群である。宿主の節足動物について進化過程における陸上進出に対する知見が蓄積されており、これに対応する菌側の適応を解析することで、菌類の陸上進出についても理解を深められる可能性がある。また、キクセラ亜門は「一次隔壁を有す」という点で、二核菌類に共通する特徴を持っている。本年度も「3.鞭毛欠失に関わるハエカビ亜門の解析」の進展が難航が予想される場合には、第3の課題を「隔壁形成の起源に関わるキクセラ亜門の解析」に修正して検討を進めることも検討したい。翌年度の課題として、国外からの材料の持ち込みに際し、名古屋議定書発効後の生物資源移動に関する然るべき体制を改めて調整しておく必要がある。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
海外調査渡航費については、別の予算により執行をしたため、次年度使用額に繰り越した。また、購入予定であった物品(顕微鏡関連機器)については3月に購入をしたため、会計年度がまたがっており、次年度使用額相当となっている。 2013年度購入予定の物品、顕微鏡関連機器一式のうち一部(実体顕微鏡、顕微鏡デジタルカメラ)については既に執行済みである。落射照明装置、光学顕微鏡については、6月に執行の予定である。
|
Research Products
(12 results)