2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物の超塩基性土壌への適応進化:シュンジュギクの比較ゲノム解析
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25291085
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 元己 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00193524)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪口 翔太 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 助教 (50726809)
土松 隆志 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60740107)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 適応進化 / 比較ゲノム / ミヤマヨメナ / シュンジュギク / 蛇紋岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.系統解析と遺伝構造 本年度は中国・四国地方を中心にサンプリングを行った。昨年度までの集団に加えて解析を行った結果、a) 従来の結果と同様に、シュンジュギクの多起源仮説を支持した;b) 日本海側の集団は太平洋側の集団と異なるクラスターを形成したことが明らかになった。 2.RNA-seqによるトランスクリプトーム解析 これまでの解析より、シュンジュギクはミヤマヨメナと比べてNiに耐性である可能性が示唆された。そこでシュンジュギクの蛇紋岩適応に関わる遺伝子候補を単離するために、Ni(NO3)2添加栄養液(0, 50 mM)で栽培したシュンジュギクとミヤマヨメナの根由来の転写産物について網羅的比較解析を行なった。ミヤマヨメナとシュンジュギクにおいて、両条件で共通に発現変動する転写産物をスクリーニングした結果、Proton transport、Response to oxidative stress、H2O2 catabolic process、Nitrogen fixationなど、ストレス応答や重金属輸送に関わる可能性がある転写産物が含まれていた。 3.栽培実験 シュンジュギク自生地土壌にはニッケルが多いことから、過剰量のニッケルに耐性を持つ可能性があると考えられる。 ここではミヤマヨメナにおけるニッケル障害の症状を確認すると共に、シュンジュギクのニッケル耐性の有無について検討した。ミヤマヨメナをニッケル入り栽培液で30日栽培し根と地上部の乾重、クロロフィル量を測定した。成長への影響は比較的少なく、クロロシスが顕著であった。また、ニッケル入り栽培液で18日間栽培し生育の違いを調べた結果、シュンジュギクはミヤマヨメナと比較してネクローシス・成長量低下の程度が軽くニッケル耐性であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
日本海側に倍数体集団を調査により発見した。シュンジュギクの起源を明らかにするためにはその集団を研究に加える必要があり、日本海側の集団サンプリングを追加で行ったため。その他の研究は順調に進行した。
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Strategy for Future Research Activity |
日本海側の集団のSSR解析を遂行し、ミヤマヨメナ群の系統進化解析を行う。また、形態的な違いもあるため、新変種として記載する。
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Causes of Carryover |
日本海側に倍数体集団を調査により発見した。シュンジュギクの起源を明らかにするためにはその集団を研究に加える必要があり、日本海側の集団サンプリングを追加で行った。これらの集団のSSR解析を行うための試薬代、およびその結果の学会発表と論文出版の費用を次年度に行うための予算が必要となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
日本海側の集団のSSR解析を7月までに遂行し、ミヤマヨメナ群全体の系統進化解析を行う(試薬代1,200千円)。その結果を9月の日本植物学会(沖縄)で発表し(旅費100千円)、年度内に論文として出版する(出版費100千円)。
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Research Products
(3 results)