2015 Fiscal Year Annual Research Report
短翅性バッタに見られる染色体変異の進化的起源と分布拡大過程の解明
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25291088
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
立田 晴記 琉球大学, 農学部, 教授 (50370268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅野 良一 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 専門研究員 (00648826)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フキバッタ / 染色体 / 種分化 / 生殖隔離 / マイクロサテライト / 遺伝構造 / 性選択 / 共生微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
標本サンプリングとフィールド調査については,異なる染色体レースが接している北海道上士幌町と西興部村周辺で2014年度に引き続き分布調査を行い, 分子解析と行動解析に用いる個体をサンプリングした.また採集したオスから精巣を取り出し,固定液に浸漬したものを,ポーランド の共同研究者に送付して,核型分析を依頼した.またロシアの共同研究者を訪問して,交雑帯付近で採集したバッタの受精卵の染色体分析を依頼すると共に,今後の核型分析のポイントと採集方法の再検討を実施した.また精巣についてはポーランドの共同研究者に郵送し,現在同定作業を進めている.
マイクロサテライトデータについても2014年度に引き続き,Yao et al. (2006)で開発されたマーカーを中心にジェノタイピングを行った.またサッポロフキバッタのゲノムサイズについてフローサイトメトリーによる解析を実施し,各染色体レースについて雌雄別に推定を実施した.推定の際には予めDNA総量がわかっているトノサマバッタ,エンドウヒゲナガアブラムシのゲノムを参照した.雌雄間では有意なDNAの相違がみられたことから,性染色体の数に起因していると推測された.また染色体レース間では有意なゲノムサイズの変動は認められなかった.これらの成果は現在投稿用論文としてまとめているところである.
また細胞内共生微生物であるWolbachiaがサッポロフキバッタに感染していることが明らかになり,最初の論文を執筆し,学会英文誌に受理された.ここでは透過電子顕微鏡による観察から,宿主の細胞中に存在するWolbachiaを本種で初めて撮影に成功した.またサッポロフキバッタには少なくとも3つのタイプの微生物が存在することがわかり,今後生殖隔離の強度との関連性を調べる必要がある.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
野外調査,染色体・遺伝子解析,行動解析ともに概ね計画通りに推移している.特にゲノムサイズの推定については申請書に掲げていた偽遺伝子の量を今後推定するにあたり,極めて有益な成果が得られた.今後は近縁種でも同様の解析を実施していく予定である.また細胞内共生微生物の発見は本課題を進める上で研究計画の見直しも含めた変更が必要な程,重要なものであった.これらの成果を皮切りに,新規課題の立案を行っていく予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は染色体,遺伝子,行動に関する3つの課題を引き続き実施すると共に,新たに発見された共生微生物のタイプ分けに関するパイロット試験を実施する.またこれまで明らかになったゲノムサイズ推定に関する成果,遺伝構造に関する成果,染色体レースの詳細な分布に関する成果を逐次論文化する.
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Causes of Carryover |
当初予定していた物品費予算と実際に利用した差額が生じたことによる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰越金については主に分子実験用の試薬購入に充てる.
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