2013 Fiscal Year Annual Research Report
ミジンコ個体群の遺伝的多様性に及ぼす温暖化に伴う越冬様式変化の影響
Project/Area Number |
25291094
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
占部 城太郎 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (50250163)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 動物プランクトン / ミジンコ / 隠蔽個体群 / 遺伝的多様性 / 温暖化 / 湖沼 / 越冬様式 / 休眠卵 |
Research Abstract |
近年、ミジンコ個体群では温暖化に伴って浮遊個体として越冬する個体が増加する一方、有性生殖による休眠卵生産が減少しているという。しかし、このような越冬様式(休眠越冬vs浮遊越冬)の変化が個体群の遺伝構造にどのような影響を及ぼすかはよく分かっていない。本研究は、ミジンコ個体群の浮遊越冬様式と遺伝構造との関係を、生殖様式とニッチ幅から検討し明らかにすることを目的とする。具体的には、1.山形県東村山郡畑谷大沼のミジンコ個体群を対象とした定期野外調査による遺伝構造解析、2.野外調査で得られる複数クローンのニッチ測定、3.各クローンの繁殖様式頻度の測定、4.室内競争実験、5.野外競争実験、6.東日本湖沼を対象とした広域個体群調査により実施する。このうち、平成25年度は1.、2.及び3.を中心に研究を実施した。 畑谷大沼での定期野外調査は1~2回/月の頻度で行い、沼の理化学的性状の観測とともに、Daphnia dentifera 集団を採集してマイクロサテライト遺伝子11座による遺伝解析を行った。また堆積物中の保存されている休眠卵を採集しその遺伝解析も行った。その結果、D. dentifera 集団は2つの隠蔽個体群(A,B)を内包し、個体群Aは個体数の上で卓越し有性生殖を殆ど行わず浮遊越冬すること、一方個体群Bは春から初夏にかけて個体数を増やし有性生殖により産卵する休眠卵により越冬すること、これら個体群間の遺伝子交流は極めて稀であることが判った。また室内実験によれば、個体群Aの個体は個体群Bの個体に比べ至適温度幅が広く、雄生産や休眠卵生産の頻度が低い傾向がみられた。ただし、実験に用いたクローン数が少なかったため、休眠卵生産頻度の個体群間での違いについてはさらなる検討を行うこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
対象としている沼のDaphnia dentifera集団は遺伝的に多様なクローンからなる1繁殖集団(個体群)と予想していたが、詳細な遺伝構造解析の結果、同所的に共存する2つの繁殖集団(隠蔽個体群)であるという予想外の結果を得ることが出来た。この2集団の繁殖様式の違いや共存機構を湖沼の温暖化という視点から調べることで、温暖化に伴う個体群の存続や遺伝的・生態的特性の変化を具体的に明らかにする道筋が開いた。その意味で、初年度の成果は計画していた以上に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初計画通りの研究を行う。研究計画に際して、変更点はない。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝解析にかかわる消耗品を安価で購入出来たこと、系統維持に取得したクローン数が少なかったため飼育維持に要する人件費が予想よりかからなかった。 来年度は遺伝解析の数量が増加すること、系統維持するクローン数が増えるため飼育維持に要する人件費が増加することから、予算をそれに充当する。
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Research Products
(4 results)