2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25291096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 能士 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20443442)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 進化生態 / 外来種 / ゲノム / 環境適応 |
Research Abstract |
人間活動により持ち込まれた外来生物が、在来生物の生息域を奪うなど生態系に悪影響を及ぼすことが問題となっており、植物から動物まで幅広い外来種が世界各国で報告されている。日本国内における代表的な侵略的外来種として北米原産のアメリカザリガニ(Procambarus clarkii)が挙げられるが、本種はアメリカ大陸のみならず、アジア、ヨーロッパ、アフリカにおいても爆発的に生息範囲を広げており(図1)、際立って高い環境適応能力を持っている。特定の種が世界各地で独立に何度も侵略的外来種となっている背景には、これらの種に共通する遺伝的な基盤があると考えられるが、その詳細は全く分かっていない。本研究では、特に国内外で問題となっている侵略的外来種アメリカザリガニの全ゲノム配列決定を実施し、①環境適応能力の高さを生み出す遺伝的多様性の調査、②新規環境に侵入した少数個体が近交弱勢を起こさずに繁殖成功する遺伝的背景の解明を目的とする。本研究により、生物の侵略性に関る遺伝的基盤が明らかとなる。さらに、遺伝的構成から生物の侵略性を推察できるようになれば侵略種の拡散防止や在来生物保全の観点からも重要な研究となる。本年度は、侵略的外来種アメリカザリガニのゲノム配列を次世代シークエンサーで決定し、得られたゲノム配列を用いて遺伝子予測を行った。得られた遺伝子の配列とショウジョウバエの遺伝子配列を用いて相同性検索を実施し、相同性の高い遺伝子が多数取得できていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
仮説1(侵略種では多型的な疾患関連遺伝子・オオノログの割合が低い)、及び、仮説2(侵略種はゲノム上に多く重複遺伝子を保持)の検証を行うため、侵略的外来種アメリカザリガニのゲノム配列を次世代シークエンサーにより解読した。二倍体生物のde novoシークエンスは、依然としてヘテロ接合座位のアセンブルの難しさが問題なっている。それに付随してアセンブル可能な領域が単型的遺伝子座の周辺領域に集中し、ゲノム全体のヘテロ接合の度合いが実際の値よりも低く見積もられる可能性も考えられる。この問題を解消するため、16年間近親交配のみで継代されてきた近交化アメリカザリガニからゲノム配列を抽出し、50 x カバレッジのpaired-endライブラリ、50 x カバレッジの3kb mate-pairライブラリ、10 x カバレッジの6kb mate-pairライブラリ、1 x カバレッジの9kb mate-pairライブラリを作成し、Illumina HiSeq 2000で配列決定を行った。いずれのライブラリからも高精度のshort readsが得られた。これらの配列を複数のアプリケーション(Allpaths-LS、SOAP denovoを用いてゲノムアセンブリを実施した。アセンブリに関しては、まだ条件検討の余地があるが、遺伝子予測プログラムAugustusを用いてアセンブリして得られたゲノム配列上に13782の遺伝子を同定することができ、順調に研究が進展でいる。来年度はコントロールとなる近縁種のゲノム配列を決定し、ヘテロ接合な領域の偏りに相違があるか調査を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
①アメリカザリガニの全ゲノム配列決定 昨年度までに全ゲノム配列決定を行ったが、アセンブリの改善によりさらにN50の高い配列の取得を目指す。Platanusによるアセンブリの成績が良いとの情報を得たため、Platanusによるアセンブリも試みる。 ①で決定した近交化個体のゲノム配列情報をリファレンスとして、日本国内の自然環境下に棲むアメリカザリガニ野生個体のゲノムリシークエンスを行う(20 x カバレッジ)。後述する多型的な遺伝子の推定には、リシークエンスにより得られた個体の遺伝子型を用いる。ゲノム配列決定後は、①で行ったように遺伝子アノテーションを実施する。 また、現在では近縁種ゲノム配列をリファレンスとしたリシークエンス手法が確立されつつある。アメリカザリガニと近縁種(P. alleni、P. fallax)との塩基配列の相違は数%であり(Scholtz G et al., 2003)、アメリカザリガニゲノムをリファレンスとしたゲノムリシークエンスが可能であると考えている (100 x カバレッジ)。ただし、アメリカザリガニと近縁種(P. alleni、P. fallax)の遺伝的な距離が予想以上に離れていた場合、リシークエンスが困難な場合も考えられる。その時には、配列決定したshort readを用いて、アメリカザリガニ野生個体、P. alleni、P. fallaxのde novoゲノムアセンブリを行う。その際、手法による偏りが生じないようにアメリカザリガニ野生個体のゲノムカバレッジも他種と同様に100xに上げ、その上でヘテロ接合座位の多いゲノムのアセンブラーとして評価の高いPlatanusを用いてアセンブルを行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
mate pairライブラリの作成は容易でないため外注を予定していたが、本年度に入って比較的容易にmate pairライブラリを作成できるキット(Nextera Mate Pair Sample Prep Kit )がIllumina社より発売された。本キットを利用して申請者がライブラリを作成することができたため、予定より低予算でゲノム配列の決定を実施することができた。 アセンブリしたアメリカザリガニのゲノム配列は繋がっていない箇所が多いため、Allpaths-LGで推奨されている1 x カバレッジのフォスミドライブラリを追加で作成し、高精度のゲノムアセンブリを目指す。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Ohnologs are overrepresented in pathogenic copy number mutations2014
Author(s)
McLysaght, A., Makino, T., Grayton, H., Tropeano, M., Mitchell, K., Vassos, E. and Collier, DA.
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Journal Title
PNAS
Volume: 111
Pages: 361-366
DOI
Peer Reviewed
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