2014 Fiscal Year Annual Research Report
古人骨DNA研究から古人骨ゲノム研究へ:次世代シーケンサによる新展開
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25291104
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植田 信太郎 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20143357)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 次世代シーケンサ / 古人骨ゲノム / ミトコンドリアゲノム / 核ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、抽出されたDNAの99.9%以上が土壌菌由来である「保存の良くないDNA」からでも、ミトコンドリアゲノム全塩基配列の決定を可能とする次世代シーケンサによる古代ゲノム分析手法を確立した。本年度は、この手法を用い、中国・山東省の2000年前の遺跡から出土した古人骨の分析を行い、複数の古人骨で、それらのミトコンドリアゲノム全塩基配列を決定した(全長のカバレッジ率100%)。決定したミトコンドリアゲノム全塩基配列の平均デプス(同じ塩基サイトを独立に、すなわち、重複のない配列として読んだ回数)は50以上であり、極めて信頼度の高いミトコンドリアゲノム全塩基配列を決定することに成功している。 以上の実験解析に加え、情報解析とくに次世代シーケンサから出力される生データに対するバイオインフォマティックス解析をおこなった。古人骨ゲノム解析では、長期に及ぶ時間経過の中で受けた様々な塩基修飾やコンタミネーションの割合の推定(データの信頼性の検証)など、古人骨ゲノムに固有の問題に対応した解析が不可欠である。そこで、ミトコンドリアゲノムにマッピングされた次世代シーケンサ出力生データに関する各種情報のプロファイリングおよび解析結果の視覚化をおこなうための解析ツールを開発した。 現代人でミトコンドリアゲノム全塩基配列に基づく精細なハプログループが遺伝的多様性の指標として定義され、ハプログループを基盤としたミトコンドリアゲノム全塩基配列の個々の塩基サイトの情報を重視した「ハプログループのサブグループの、さらに細かいサブタイプレベル」での分析が可能となっている。本年度の成果である古人骨ミトコンドリアゲノム全塩基配列と情報解析ツールを用い、古人骨それぞれのハプログループを決定すると共に、ミトコンドリア系統ネットワークから古人骨ごとの変異塩基情報を明らかにすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度ならびに平成26年度とも研究計画が順調に進み、翌年度に実施する予定であった研究計画を両年度とも前年度に開始することが可能となった。このため、平成26年度に購入予定であった物品(酵素などの消耗品)を平成25年度中に購入するための前倒し支払請求、また、平成27年度に購入予定であった同様の消耗品を平成26年度中に購入するための前倒し支払請求をおこない、承認された。これにより、平成27年度に実施する予定であった中国・山東省の2500年前の遺跡から出土した古人骨の分析を既に開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画が極めて順調に進むと共に、それに伴う前倒し請求が承認されたことによって翌年度に実施する予定であった研究計画を前2年度とも前倒しで開始することが可能となっている。このため、次世代シーケンスに不可欠な高価な輸入消耗品を多数使用する実験ステップが、通常の値上げと急激な円安による高騰(2014年末からの2回の値上げ)前に実施できた。今後は、次世代シーケンスによって得られたゲノム配列情報の詳細な分析を重点的に推進していく。
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