2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25291105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 貴文 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20184533)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 寄生体 / 人類史 / 小進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、感染寄生体を手がかりとして、アジアを中心とした人類集団の移動・交渉・適応について、これまでとは違う切り口から再現しようとするものである。集団の系譜は遺伝子を調べるのがベストと考えられるが、遺伝子を遺さない個体間交渉については、情報が得られない。本研究計画では、そのような、交易・交渉・訪問といった、人と人とのふれあいの痕跡を、感染寄生体の研究から探ろうとするものである。感染様式と社会構造・婚姻体系を組み合わせ、ウイルスの系統を民族集団の関係に重ねることによって、集団間交渉や社会構成に新たな知見が得られると期待される。一方、感染受容体・抵抗性遺伝子の検索からは、民族集団の適応・移動を探る。 「家族内感染」、主として「母子感染」、することが常識であったEBウイルスの感染様式については、母子感染性が強ければ、ミトコンドリアDNAのように、「母系」を手繰ることが出来ると考えられたが、比較的変異性の高いEBウイルスゲノムに存在するLMP1遺伝子の塩基配列を決定し「母と子」のペア間で照合したところ、母子感染の占める割合が低く、「母系」を追跡できないと判断され、投稿論文を作成した。つぎに、母方居住婚と父方居住婚する民族を選び出し、集団内のEBウイルスの多様性が母方居住婚と父方居住婚でいかなるパタンになるか検討したところ、こちらも父方・母方間にウイルスゲノム多様性に差異はなく,母子感染が主要感染ルートであることを否定した。以上より、EBVを母系マーカーとすることが却下され、新たなマーカーの検索が必要となった。 マラリア抵抗性関連形質については、バンド3タンパク質遺伝子のハプロタイプデータの解析から、27塩基対欠失の起源を探ることを試みたところ、27塩基対欠失の導入(出現)はフィリッピンで、約4000年前に起こったことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目にして、投稿原稿を2編作成できた。ただし、受理には至っていない点が、今後の努力目標である。
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Strategy for Future Research Activity |
系統関係の精度を増すため、解析検体数を更に増やす必要がある。
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Causes of Carryover |
人件費を計上していたところ、該当する人物の健康状態がすぐれず、雇用を見合わせたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度に当たるため、H26年度雇用を見合わせた分、H27年度にマンパワーを投入し解析・総括に結びつける。
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