2013 Fiscal Year Annual Research Report
コムギに染色体切断を誘発する配偶子致死遺伝子の単離と機能解析
Project/Area Number |
25292007
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
那須田 周平 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (10273492)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 染色体切断 / 配偶子致死 / コムギ / 遺伝子単離 / 機能解析 |
Research Abstract |
(1)Aegilops sharonensis由来の配偶子致死遺伝子Gc2-4Sshの単離 Gc2-4Ssh遺伝子はコムギの4B染色体の末端部に染色体腕の3%以下のごく小さな断片として転座していることがわかっている。このGc遺伝子の近傍にはヘテロクロマチン領域があり、反復配列pGc1-1と完全連鎖している。本年度はGc2-4Sshを遺伝学的にマッピングすることを進めた。組換え価に基づく遺伝地図作成のためのBC1分離集団とガンマ線照射Radiation Hybrid (RH)集団を育成した。RH集団から稔性は高いがGc遺伝子をヘテロに持つ1個体を選抜した。後代での反復配列pGc1-1のFISHシグナルの分離によりGc2-4Sshの機能が欠損しているがヘテロクロマチン領域は保持していることを証明できた。 (2)Ae. triuncialis由来の配偶子致死遺伝子Gc3-3Cに対する抑制遺伝子Igc1の単離 抑制遺伝子Igc1の極近傍に位置するマーカーを探索した。Igc1は組換えのほとんど起こらない動原体領域に存在するため、微小クロマチン欠失系統群を用いたRH mapping法を用いて近傍マーカーを探索した。ところが、RH集団で高稔性の個体に2パターンあり、3B染色体をほぼ失っているか、ほぼ保持しているかのどちらかであった。この矛盾した結果はGc3-3Cの機能にはコムギ系統Chinese Spring (CS)の3B染色体が必要であると仮定すると説明がつく。この仮説を検証したところ、Gc3-3Cの機能にはCSの3B染色体の存在は無関係であることがわかった。一方で、マーカー情報をフランスINRA提供の3B染色体ゲノム情報と照会し、マーカーと3B染色体の物理地図との比較を行ったところ、3B物理地図上の大きな2つの領域をスクリーニングできていないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(1)Aegilops sharonensisの4Ssh染色体由来の配偶子致死遺伝子Gc2-4Sshの単離 Gc2-4Ssh遺伝子の組換え価に基づく遺伝地図作成のための分離集団が遅れた。突然変異系統が染色体切断機能は欠失しているが保護機能を保持するため、F2分離集団では全て高稔性となり、表現型の分離に関する情報を得られないと予想されたのでF2集団の利用を断念した。この問題を回避するために、BC1集団を育成した。RH集団 のスクリーニングはほぼ順調に進んだが、稔性は高いがGc遺伝子をヘテロに持つ個体は1個体しか選抜できなかった。マッピングマーカー開発用のバイオインフォマティクス解析は現在進行中である。 (2)Ae. triuncialisの3C染色体由来の配偶子致死遺伝子Gc3-3Cに対する抑制遺伝子Igc1の単離 抑制遺伝子Igc1の極近傍に位置するマーカーの探索をRHマッピングで行ったが、各RH系統のマーカー保持パターンが想定外の結果を示した。このため、新たにGc3-3Cの機能に関してコムギ系統Chinese Spring (CS)の3B染色体が必要であるとの仮説を立て、検証したところ、この仮説は否定された。マーカーと3B染色体の物理地図との比較を行ったところ、3B物理地図上の大きな2つの領域についてさらにマッピングを進めるべきであることが判明した。3C染色体のフローソーティングとゲノムサーベイシーケンシングは順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初より、目的遺伝子のファインマッピングに平成25年度と平成26年度の2年間を予定していたので、平成26年にはマッピングを継続して進める。 (1)Aegilops sharonensisの4Ssh染色体由来の配偶子致死遺伝子Gc2-4Sshの単離 ガンマ線照射Radiation Hybrid (RH)集団のスクリーニングを継続する。稔性は高いがGc遺伝子をヘテロに持つ1個体のマーカージェノタイプを調査する。欠失による機能欠損を確認するための交配を行う。Gc2-4Sshの遺伝学的マッピングを加速する。組換え価に基づく遺伝地図作成のためのBC1分離集団を用いたマッピングを進める。マーカー開発のためのRNA-Seqを進めるとともに、発現タンパク質の網羅的解析も進める。 (2)Ae. triuncialisの3C染色体由来の配偶子致死遺伝子Gc3-3Cに対する抑制遺伝子Igc1の単離 抑制遺伝子Igc1の極近傍に位置するマーカーの探索をRHマッピングで行った。マーカーとフランスINRA提供の3B染色体の物理地図との比較を行ったところ、3B物理地図上の大きな2つの領域について未調査領域が存在すルコとがわかった。この領域にIgc1が座乗する可能性があるので、INRAよりマーカー情報の供与を受けて、さらにマッピングを進める。3C染色体のフローソーティングとゲノムサーベイシーケンシングは順調に進行している。得られた配列情報を解析し、3C染色体がムギ類染色体のどの領域と相同であるかin silicoの解析で明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
Aegiloips sharonensis由来の配偶子致死遺伝子Gc2-4Sshの遺伝的マッピング用分離集団の育成が遅れ、分離集団のDNAマーカーによるジェノタイピングが行えなかった。そのため、この目的で支出する予定であった物品費分が差額として次年度使用額となった。 Gc2-4Sshの遺伝的マッピング用の試薬購入経費として平成26年度に使用する。その中にはマーカー開発用の経費(RNA-Seqと発現遺伝子産物の網羅的解析)を含む。
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Research Products
(1 results)