2013 Fiscal Year Annual Research Report
温帯落葉果樹休眠芽の代謝制御―低温シグナルの機能に関する研究
Project/Area Number |
25292019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
菅谷 純子 筑波大学, 生命環境系, 教授 (90302372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬古澤 由彦 筑波大学, 生命環境系, 助教 (90361310)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 果樹園芸学 / 休眠 / 糖代謝 |
Research Abstract |
温暖化や異常気象により引き起こされる果樹の発芽異常のメカニズムの解明を行い、果樹の休眠打破に必要な低温の役割について明らかにするために、ニホンナシの休眠芽中の代謝に対する低温の影響について、主として生理生化学的解析を試みた。 まず、ニホンナシ‘幸水’の長果枝を採取し水に活けたものを、異なる25℃の恒温インキュベーター中に静置し、それぞれ萌芽に必要な日数を調べ、萌芽に対する低温蓄積の影響を比較した。その結果、低温蓄積量が同じであっても花芽に対する影響は、遭遇温度により異なることが明らかになり、その際の糖代謝への影響について各種酵素活性を比較したところ、温度による影響が認められることが示された。 また、低温不足の花芽の休眠打破を促進することが知られているシアナミド、および花芽への影響が明確でない硝酸カリウム処理を行い、それぞれが糖代謝に及ぼす影響を明らかにした。 さらに、低温遭遇量の異なる花芽における植物ホルモンの生合成・代謝遺伝子の制御についても解析するため、LC-MS/MSを用いたジベレリンおよびアブシシン酸の定量方法について検討を行った。その結果、芽内ジベレリン量には明らかな変動の傾向が認められなかったが、アブシジン酸については、開花前に著しく減少していた。 近年顕在化してきている気候温暖化などにより、冬期の低温不足が発生し、ニホンナシやリンゴなどの重要な果樹の開花に影響する要因について、解明することは、園芸学、および農学的に、低温の影響に関する詳細な知見は、大変重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた花芽の呼吸活性が、機器の不具合等により詳細に調べることができなかったことから、呼吸代謝については、達成度があまり高くはない。また、植物ホルモンのGC-MSについては、条件検討を行うなどして、安定した値が得られるようになった。今回は、材料の関係もあり、多くの実験区を設けることができなかったが、今後、望ましい実験区をもうけることができる材料の準備を行い、進めてゆくことで、分析に必要な量のサンプルを得ることができると考えられる。 以上のことから、概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、低温が、花芽の呼吸、および窒素代謝に及ぼす影響を明らかにする。そのために、低温遭遇量が異なる花芽のについて、酸素電極による呼吸活性定量および窒素代謝関連酵素遺伝子の発現などを明らかにする。 次に、低温遭遇量と過酸化物について明らかにする。そのために、芽中の過酸化物の定量方法および休眠打破に影響があることが知られている薬剤散布と、過酸化物との関連について明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究で当初、計画していた作業に加え、平成26年度の実験の中では、定期的なサンプリングや材料の維持、分析・実験作業などにおいて、人件費および物品費が予定よりも多く必要になるため、次年度に経費が必要となる。 非常勤雇用を110万円程度、および物品費(試薬類、器具類、農業資材等を140万円程度使用する。
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