2013 Fiscal Year Annual Research Report
病害応答における低酸素ストレス応答との拮抗制御の分子機構に関する研究
Project/Area Number |
25292032
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
高辻 博志 独立行政法人農業生物資源研究所, 耐病性作物開発ユニット, ユニット長 (10360455)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 昌樹 独立行政法人農業生物資源研究所, その他部局等, 研究員 (50192779)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 病害応答 / 転写因子 / イネ / シグナル伝達 |
Research Abstract |
イネの病害応答サリチル酸(SA)シグナル伝達経路によるジテルペン型ファイトアレキシン(DP)合成遺伝子群の発現制御に、転写因子DPF(BU2より改名)、WRKY45、WRKY62の三者が関与する転写制御カスケードSA/BTH → WRKY45 → WRKY62 → DPF → DPを示唆する結果をこれまでに得ていた。本研究では、この制御の分子機構を解明するため、各過程の転写制御の詳細な解析を行っている。 DPFによりジテルペン型ファイトアレキシン(DP)合成遺伝子の発現が制御されているか否かを調べるため、DPF遺伝子のRNAi抑制を目的としたイネ植物体を作製した。同時にTOS17挿入による機能欠損変異体をPCRスクリーニングにより探索したが、挿入変異体は見いだされなかった。また、DPFによるDP合成遺伝子の制御について解析するため、ファイトカサンの生合成遺伝子CPS2の上流配列をルシフェラーゼ遺伝子に接続したレポーター遺伝子およびDPFを発現させるエフェクター遺伝子を用いてイネ葉鞘での一過的発現による転写制御活性解析を行い、DPFによるCPS2の転写活性化にN-box配列が必要であることを明らかにした。 DPF遺伝子の転写は、転写活性化因子WRKY45および転写抑制因子WRKY62の両者に依存していることがわかっていた。この制御の詳細を解析するため、DPF遺伝子の上流配列をレポーターとした上記と同様の一過的発現による解析により、WRKY45単独では本レポーター遺伝子を活性化し、WRKY62単独では活性化しないことがわかった。一方、WRKY45とWRKY62が共存すると、WRKY45単独の場合より数倍強い活性化が見られた。これらの結果から、SA経路においてWRKY45とWRKY62とが協調的にDPF遺伝子を制御していることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
イネの病害応答サリチル酸(SA)シグナル伝達経路によるジテルペン型ファイトアレキシン(DP)合成遺伝子群の発現制御における、転写因子DPF、WRKY45、WRKY62の三者が関与する転写制御カスケードを証明するため、各素過程の解析を行っている。DPFによるCPS2(DP合成遺伝子の一つ)遺伝子の転写制御が証明されたことは、DPFによるDP合成遺伝子が統括的に制御されていることの証明に向けた重要なステップの達成と考えている。 DP合成遺伝子の発現が、SA経路中の転写活性化因子WRKY45のみならず転写抑制因子WRKY62にも依存していることは謎であり、その仕組みを解明することにより、病害応答とその他の制御(環境応答等)の関係を解明し得ると考えている。今年度、DPF遺伝子の転写制御にWRKY45とWRKY62の両者が協調的に関わっていることが示されたことは本研究の核心に関わる部分であり、これによりさらに踏み込んだ解析と仮説の検証が可能になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
DPFによるDP合成遺伝子の転写制御については、DP合成遺伝子のひとつであるCPS2のDPFによる制御が証明されたことを受け、DP合成経路の遺伝子がDPFによって統括的に制御されているか否かを検証するため、CPS2以外のDP合成遺伝子について同様の解析を行う。また、DPFの機能欠損の影響を調べる上で、これまで用いているRNAiによる遺伝子ノックダウンでは遺伝子機能の抑制が不完全であるため、より完全な機能欠損による機能解析のためDPF遺伝子の遺伝子破壊を行う。 WRKY45とWRKY62によるDPF遺伝子の協調的な転写制御の分子機構として、WRKY45とWRKY62のヘテロダイマーによる制御が最も蓋然性が高いと考えられるので、この仮説の検証を中心に進める。その後、このような複雑な制御システムがなぜ進化したかという疑問に答えるため、病害応答と環境(非生物学的ストレス)応答のトレードオフの制御への関与を念頭において解析を発展させる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
WRKY45とWRKY62の二重変異体の作出が遅れたため、それらの変異体の解析に使用する予定の経費を25年度中に使用しなかったため。 次年度に作製できる予定の上記変異体の解析に未使用額を使用する。
|
-
[Journal Article] Genome-wide identification of WRKY45-regulated genes that mediate benzothiadiazole-induced defense responses in rice.2013
Author(s)
Nakayama A, Fukushima S, Goto S, Matsushita A, Shimono M, Sugano S, Jiang C-J, Akagi A, Yamazaki M, Inoue H, Takatsuji H
-
Journal Title
BMC Plant Biology
Volume: 13
Pages: 150
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
[Presentation] イネの転写因子DPFはN-boxを介してジテルペン型ファイトアレキシン生合成遺伝子の転写を制御する2013
Author(s)
水谷恵美, 山村千紘, 福島説子, 中川仁, 前田哲, 松下茜, 鎌倉高志, 岡田憲典, 山根久和, 高辻博志, 森昌樹
Organizer
植物化学調節学会第48回大会
Place of Presentation
新潟大学(新潟)
Year and Date
20131031-20131101
-