2014 Fiscal Year Annual Research Report
大容量塩基配列に基づくハダニ類の系統解析と近縁種の簡易識別法の開発
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25292033
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
後藤 哲雄 茨城大学, 農学部, 教授 (60178449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 博明 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫科学研究領域, 研究専門員 (40343991)
鈴木 美穂 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 特別研究員 (80548470)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ダニ・線虫管理 / 系統解析 / トランスクリプトーム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
a) de novoアセンブリ:1種につき5通りの条件でアセンブリを行い、アセンブリの指標とされているN50値が最も高くなる条件で作成されたコンティグを次の解析に用いた。 b) オーソログ遺伝子の抽出:従来の方法で推定したハダニ科の分子系統樹上で遠縁であると考えられる5種のコンティグを検索配列(query sequence)とデータベースの両方に用いて、総当り(合計20通り)の相同性検索を実施した。任意の2種の組合せにおいて、検索配列とした種とデータベースとした種を入れ替えた2つの結果を照合させ、いずれにおいても1e-10以下のE-valueでヒットした遺伝子のみを抽出した[E-valueの値が小さいほど、配列の相同性が高くなる]。最後に、アライメントされた2,876遺伝子とナミハダニのCDS配列との相同性検索を行ったところ、2,656 遺伝子がナミハダニのCDS配列とヒットした。 c) 分子系統解析:5種のオーソログ遺伝子(2,656 遺伝子)と他47種のコンティグとの相同性検索を行い、ハダニ科52種のオーソログ遺伝子(247遺伝子)を決定した。ここでの相同性検索では、5種のオーソログ遺伝子を検索配列、47種のコンティグをデータベースとして、1e-100以下のE-valueでヒットした遺伝子のみを抽出した。これらを用いて分子系統解析を行ったところ、従来の遺伝子領域(ミトコンドリアDNAおよび核rDNA)に基づく系統樹と矛盾しなかった。しかし、14属中4属が多系統になったことから、形態によって分類されている属が、分子系統樹上では必ずしも単系統にならないことが分かった。 d) 未解析種のRNA-Seq:未解析の種についてもRNA-Seqを行い、現時点で70種のデータを取得済である。引き続き、これらのデータを加えて解析を行い、より詳細なハダニ科の分子系統関係を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、オーソログ遺伝子を抽出する手法を改善した結果、より多くの遺伝子を正確に抽出することに成功した。その他の解析についても手法が確立されつつあるので、今後はより迅速に研究を進められると考えられる。また、現在までに70種のRNA-Seqを完了しており、そのうち52種による分子系統解析も実施済である。その結果、信頼性の高い系統樹が得られたことから、未解析種のデータを加えて再度系統樹を推定することで、より詳細なハダニ科の分子系統関係を明らかにできると予測される。したがって、現在までのところ、研究の進捗状況はおおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通りに、解析種数を増やしてハダニ科の分子系統樹を推定し、形態による系統関係との比較を進める。特に、形態に基づく系統樹で意見が分かれている主にOligonychus属とTetranychus属およびSchizotetranychus属とEotetranychus属の分岐関係に注目して、分岐の妥当性を分子系統樹と形態に基づく系統樹間で比較・考察する。 一方、種の簡易識別法の開発は、RNA-Seqによって得られた遺伝子の中から、ハダニの種の識別に利用可能な遺伝子領域とSNP (一塩基多型)を特定する。現在までに得られたデータを用いて種間で豊富な塩基置換がみられる遺伝子を探索したところ、近縁種間の塩基置換が豊富に存在する4つの候補遺伝子(Mps One Binder kinase activator-like 3、mitochondrial carnitine/acylcarnitine carrier protein、Transcription initiation factor TFIID subunit 10およびscavenger receptor activit)を見つけている。種内で保存されているSNPが、多く蓄積している遺伝子も認められる。そこで、このSNPの利用がハダニの種の識別に有用かどうかを上記の4遺伝子を対象に検証し、種識別に有用な遺伝子領域を特定する。併せて、RNA-Seqで得られたデータから、さらなる有用な情報を抽出・解析することを進めていく。
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Causes of Carryover |
薬品類の購入に伴い、端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費(消耗品費)として薬品類の購入に充てる。
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