2014 Fiscal Year Annual Research Report
セルロースの酵素分解を促進する黄色色素の促進機構の解明および新規黄色色素の単離
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25292049
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
粟冠 和郎 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (20154031)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
粟冠 真紀子 三重大学, 生物資源学研究科, 学術研究員 (00422882)
五十嵐 康弘 富山県立大学, 工学部, 教授 (20285159)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 黄色色素 / セルラーゼ / セルロソーム / セルロース分解 / エンドグルカナーゼ / Clostridium thermocellum / Clostridium josui |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①C. thermocellum由来の黄色色素の化学構造の決定、②黄色色素のセルロース分解促進機構の解明、③C. thermocellum以外のセルロース分解菌からの黄色色素の単離と構造解析、④C. thermocellum由来の黄色色素と構造の類似した天然化合物または合成化合物のClostridiumおよび糸状菌由来のセルロース分解活性の促進効果の検討、⑤天然バイオマス(リグノセルロース)分解への黄色色素の応用、を目的としている。 前年度に得られた結果より、不安定な物質であるため、より多くの分析試料が必要であると判断した。そのため、黄色色素の生産性を上げるための培養条件の検討を行った結果、基本培地にアセトンを添加した時に黄色色素の生産性が上がることを見出した。しかし、不安定性の問題は完全には解決されておらず、構造に関してはなお未同定である。セルロース分解酵素の分解活性に及ぼす黄色色素の効果を、X線解析、粒度分布解析、電子顕微鏡観察により調べた。その結果、未処理アビセル(微結晶セルロース)では、酵素処理後に結晶化度が上昇したが、黄色色素吸着アビセルでは変化がなかった。この結果は、セルラーゼは主に非結晶性領域に作用するが、黄色色素はセルロースの結晶化度が低下させることを示唆する。黄色色素の構造を明らかにする一助として、C. thermocellumゲノム内での合成遺伝子の検索とRNA-seq解析を行った。その結果、既知のカロテノイド合成遺伝子は見出されなかったが、黄色色素合成との関連性が考えられるポリケタイド合成酵素遺伝子が見出された。また、黄色色素を生産する株と生産しない株の両株におけるRNA合成量を比較し、黄色株で発現している2遺伝子を同定した。さらに、Clostridium josuiも黄色色素を生産すること、セルロース分解の促進作用があることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、①C. thermocellum由来の黄色色素の化学構造の決定、②黄色色素のセルロース分解促進機構の解明、③C. thermocellum以外のセルロース分解菌からの黄色色素の単離と構造解析、④C. thermocellum由来の黄色色素と構造の類似した天然化合物または合成化合物のClostridiumおよび糸状菌由来のセルロース分解活性の促進効果の検討、⑤天然バイオマス(リグノセルロース)分解への黄色色素の応用、を目的としている。 ①については、黄色色素の不安定性の問題が解決しておらず、化学構造の決定に至っていない。化学構造を決定するための方策として、C. thermocellumゲノム中に存在する、黄色色素合成遺伝子の候補の検索を行った結果、黄色色素はカロテノイドではなく、ポリケタイドである可能性が示唆された。また、黄色色素を生産する株と生産しない株を対象としてRNA-seq分析を行ったところ、黄色色素生産株で高発現している遺伝子を2、非生産株で高発現している遺伝子を8、同定した。②については、黄色色素を結合させたアビセルを基質にしてセルラーゼ反応を行わせた後に、基質の粒度分布や結晶化度を分析することにより、黄色色素が、セルロースの結晶性を低下させる可能性があることを見出した。③については、中温性セルロース分解性嫌気性細菌Clostridium josuiが黄色色素を生産すること、有機溶媒に対する溶解度が異なることを見出している。 以上のように、一部難航している部分もあるが概ね順調に進展していると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
黄色色素の化学構造の決定に際して、その不安定性が問題となっているが、十分な解決策を見出すことができていない。生産性を改善する培養条件を見出したが、その性質は本来のものと異なる可能性があるため、生産性は低いが従来通りの方法で、培養量を増やすことで対応する予定である。 C. thermocellumのゲノム中に黄色色素合成酵素の候補遺伝子を幾つか見出したが、現在使用している株では、宿主ベクター系の確立がされておらず、目的遺伝子の破壊等による解析ができない。そこで、黄色色素を生産することが新たに見出されたC. josuiを重要研究対象に加え、並行して研究を行う。
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Causes of Carryover |
H26年度は、黄色色素の化学構造の決定、黄色色素を生産する株と生産しない株を対象としたRNA-seq分析、黄色色素のセルロース分解促進機構の解析を中心に行い研究成果を得た。そのためのRuminiclostridium thermocellumの培養と黄色色素の調製、構造解析、セルロソームの調製、セルロースの結晶性の分析等に要する試薬や器具等に経費がかかったが、実験スケールを小さくするなど努力をした結果、次年度使用額が生じ、次年度に使用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Ruminiclostridium thermocellumの黄色色素の調製のための培養・抽出、構造解析、天然セルロソーム及び組換えセルラーゼ・セルロソームのの調製、Ruminiclostridium josuiの黄色色素の調製のための培養・抽出、Ruminiclostridium josuiへの遺伝子導入系の確立のための試薬及び実験機器の購入のために使用する。
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Research Products
(4 results)