2015 Fiscal Year Annual Research Report
チューリンジェンシス菌からの新しい抗病原体活性物質の大規模検索とその作用
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25292052
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
北田 栄 九州工業大学, 大学院情報工学研究院, 准教授 (20284482)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | チューリンジェンシス菌 / 生理活性物質 / がん / トリパノソーマ / 微生物 / 毒素 / 感染症 |
Outline of Annual Research Achievements |
人畜に無害な微生物Bacillus thuringiensis(Bt菌)の4740株から、凝集性タンパク質を抽出して、難治がん細胞や病原寄生虫などの病原体に対する生物活性の大規模なスクリーニングを行ったところ、ヒトすい臓がん細胞に作用するタンパク質を生産するBt菌株を49株、ヒト肺がん細胞に作用する菌株を9株、ヒト悪性脳腫瘍細胞に対する菌株を3株、ヒト乳腺がん細胞に作用する菌株を2株同定した。また、近年の愛玩動物の増加とそれらのがんでの死亡数の多さから、イヌリンパ腫細胞に作用するBt菌タンパク質をスクリーニングしたところ、38株で陽性の反応を得た。今回これらのがん細胞へのBt菌タンパク質の作用の再現性や溶血性を解析した。ヒトすい臓がん細胞ではBt菌5株で再現性の良い細胞障害作用を示したが、いずれも比較的高い溶血活性を示し、またヒト正常肺繊維芽細胞への細胞障害が観察されたため、ヒトすい臓がん細胞に特異的な作用を示すタンパク質は発見できなかった。ヒト悪性脳腫瘍細胞、ヒト乳腺がん細胞に作用するタンパク質の解析は、研究人員の不足から進捗しなかった。イヌリンパ腫細胞ではBt菌2株で再現性の良い細胞障害作用を示した。病原寄生虫ではアフリカ睡眠病の原因原虫であるトリパノソーマを用いた。トリパノソーマはその生活環境において、媒介昆虫内の唾液腺型と人畜に感染した場合の血中での血流型の2つに分けられる。1次スクリーニングでは、Bt菌104株から得られたタンパク質が、唾液腺型トリパノソーマの形態や運動性に影響を与えたが、2次スクリーニングの結果、再現性の良い株として4株が発見でき、ほとんどの唾液腺型トリパノソーマに丸く形態変化を引き起こし、鞭毛性の運動は観察されなかった。血流型トリパノソーマでは、タンパク質によって形態変化や凝集性が確認されたが、データの再現性が悪く、今後詳しい解析が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部実施できなかった研究項目があるが、おおむね実験計画に基づいて進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞毒性の非特異的な細胞破壊活性を区別するため、溶血性試験を行う。またがん細胞では正常細胞への作用の有無を解析する。このような細胞毒性、特異性の高いBt菌株から、毒性タンパク質を精製し、その部分的な一次構造を得て、遺伝子の単離を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画が一部で進捗が遅れ、今年度の経費が使用しきれなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度行えなかった研究内容について、次年度では主に物品費としての使用を計画している。
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