2013 Fiscal Year Annual Research Report
単一bZIP型転写因子遺伝子のショ糖非感受性型の導入による高糖度果実の作出
Project/Area Number |
25292056
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
草野 友延 東北大学, 生命科学研究科, 教授 (40186383)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | bZIP転写因子 / トマト / 高糖度化 / 上流ORF / ショ糖 / 転写後制御 |
Research Abstract |
クラスSに分類されるbZIPタンパク質をコードする遺伝子SlbZIP1とSlbZIP2を、トマトから同定・単離した。両遺伝子は、葉齢の高い葉で発現が高く、花器官ではSlbZIP1は高発現であるが、一方SlbZIP2はほとんど発現していなかった。これらの結果からSlbZIP1とSlbZIP2はタバコのtbzFとtbz17の各オールソログと考えられた。トマト両遺伝子の産物は、1.植物細胞で核に局在すること、2.転写活性化因子であること、3.アスパラギン合成酵素遺伝子とプロリン脱水素酵素遺伝子を標的遺伝子とすること、を明らかにした。さらに、両転写物の5'非翻訳領域には3つおよび2つの上流ORFが存在しているが、このうち進化的に保存されている転写開始の5'端からそれぞれ2つ目の上流ORFを介してショ糖特異的に主open reading frame (ORF)の翻訳を抑制することを示した。すなわち、ショ糖誘導性翻訳抑制機構を持つ遺伝子であることを確認した。 このSlbZIP1とSlbZIP2転写物から上流ORF部分を欠いた形の遺伝子をトマトに形質転換を以下のように行った。トマト品種としてはマイクロトムとマネーメイカーを用いた。導入遺伝子の発現のためのプロモーターとしては、2種類の果実特異的なプロモーターと老化葉特異的プロモーターを使用してきた。E8プロモーターを用いマネーメーカーへ導入した形質転換個体からは形質転換した種子を得ることが出来ている。これらを育てステージ6のほぼ完熟した果実からの抽出液の糖度を糖度計を用いて測定したところ、10系統中6系統では野生型果実の同ステージの糖度より10~20%糖度が上昇している結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度にトマトの目的とする遺伝子を同定し、特徴づけをほぼ終えたこと、またショ糖による翻訳抑制が起こらない形でトマトへの遺伝子導入を行ったこと、さらには予備的な結果ながらマネーメーカー品種で得られた形質転換トマトの果実の糖度が野生型トマトに比べて高くなる結果を得ていることから、おおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
使用するプロモーターをこれまで果実特異的なもの、老化葉特異的なもので導入コンストラクトをつくってきたが、これらから得られるトマト果実の糖度を評価し、最適なプロモーターを選抜する。 形質転換体の果実は市場で容認されないことから、形質転換法ではない形で糖度を上昇させる方法についても検討する。具体的には、果実における糖はソース葉由来であることからトマトが花芽を付けた時期にソース葉にアグロインフィルトレーション法により、SlbZIP1およびSlbZIP2のORF部分のみを過剰発現させる系を確立していく。この際に用いるベクターはジャガイモウイルスXの系であるが、インフィルトレーションの一定時間後には当該遺伝子のサイレンシングが誘導されると予想されるため、キュウリモザイクウイルス2bによるサイレンシング抑制効果についても検討し、当初目的の実現を目指す。
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Research Products
(3 results)