2013 Fiscal Year Annual Research Report
炎症反応を制御する情報伝達の分子メカニズムとバイオプローブによる解明
Project/Area Number |
25292061
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
片岡 孝夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (20242307)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | NF-κB / イルシニアスタチンA / TNFレセプター1 / ERK / ウルソール酸 / タンパク質輸送 / カスパーゼ8 / c-FLIP |
Research Abstract |
ペデリン系化合物であるイルシニアスタチンA(irciniastatin A)は、タンパク質合成を強く阻害する。本研究では、イルシニアスタチンAがIL-1αによる転写因子NF-κBの核移行を阻害せず、TNF-αによるNF-κBの核移行を選択的に阻害することを見出した。さらに、イルシニアスタチンAは、TNFレセプター1のエクトドメインシェディングを誘導した。イルシニアスタチンAはERKのリン酸化を強く誘導したが、p38 MAPキナーゼのリン酸化をほとんど誘導しなかった。以上の結果から、イルシニアスタチンAは、他のタンパク質合成阻害剤とは異なる分子メカニズムで、リボトキシックストレス応答を誘導することが明らかになった。 五環性トリテルペノイドの一つであるウルソール酸(ursolic acid)は、IL-1αによって誘導される細胞接着因子ICAM-1の細胞表面の発現を顕著に阻害した。ウルソール酸で処理した細胞では、エンドグリコシダーゼH感受性の高マンノース型糖鎖が結合したICAM-1が小胞体に蓄積していた。さらに、ウルソール酸はゴルジ体の断片化を誘導していることを見出した。以上の結果から、ウルソール酸の新しい生物活性として、細胞内タンパク質輸送を阻害することが明らかになった。 カスパーゼ8モデュレーターc-FLIP(L)は、 アダプタータンパク質RIP1を介してカスパーゼ8によるNF-κBの活性化を制御している。本研究では、c-FLIP(L)のC末端ドメインがカスパーゼ8プロドメインとRIP1デスドメインとの相互作用を阻害し、カスパーゼ8依存性のNF-κBの活性化を制御していることを見出した。したがって、カスパーゼ8によるc-FLIP(L)のc-FLIP(p43)への切断がFasリガンドによるNF-κB活性化に必要であることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、炎症性サイトカインによる情報伝達や遺伝子発現の分子メカニズムの一端を解明した。さらに、イルシニアスタチンAとウルソール酸が新しい生物活性を有することを明らかにした点は意義が大きい。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、小分子化合物をバイオプローブとして用いて、炎症性サイトカインによる情報伝達や遺伝子発現の分子メカニズムの解明を行う。さらに、NF-κBの情報伝達に関与するタンパク質の生理機能の解明に取り組む。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
設備備品の機種選定等を行い、より安価な製品を購入した。 消耗品の購入に利用する予定である。
|