2014 Fiscal Year Annual Research Report
炎症反応を制御する情報伝達の分子メカニズムとバイオプローブによる解明
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25292061
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
片岡 孝夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (20242307)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | NF-κB / 強心配糖体 / アグリコン / ウアバジェニン / ジギトキシジェニン / ジゴキシジェニン / Na+/K+-ATPase / アラントピロンA |
Outline of Annual Research Achievements |
強心配糖体であるウアバイン(ouabain)、ジギトキシン(digitoxin)、ジゴキシン(digoxin)のアグリコンであるウアバジェニン(ouabagenin)、ジギトキシジェニン(digitoxigenin)、ジゴキシジェニン(digoxigenin)が、tumor necrosis factor α(TNF-α)によって誘導される細胞接着因子intercellular adhesion molecule-1(ICAM-1)の発現を抑制することを見出した。ウアバジェニン、ジギトキシジェニン、ジゴキシジェニンは、ICAM-1 mRNAの発現を抑制せず、ICAM-1タンパク質の発現を強く阻害した。これらの強心配糖体アグリコンによるICAM-1発現に対する阻害活性は、ウアバイン耐性のラットNa+/K+-ATPase α1の強制発現によって抑制された。一方、Na+/K+-ATPase α1をノックダウンすると、ICAM-1の発現に対するウアバジェニンとウアバインの阻害作用が亢進した。以上の結果から、強心配糖体アグリコンは、Na+/K+-ATPaseを阻害することによって、TNF-α誘導性のICAM-1発現を翻訳プロセスの段階で阻害することを明らかにした。 アラントピロンA(allantopyrone A)は、植物内生糸状菌が産生するα-ピロン系代謝産物である。ヒト肺がん腫A549細胞において、アラントピロンAがTNF-αによって誘導されるICAM-1の発現を阻害することを見出した。アラントピロンAは転写因子nuclear factor κB(NF-κB)応答性レポーター遺伝子の発現を阻害した。さらに、アラントピロンAは、NF-κBサブユニットの核移行、及び inhibitor of NF-κB α(IκBα) のリン酸化とそれに続くIκBαのプロテアソームによる分解を阻害した。一方、アラントピロンAはIκBキナーゼβの酵素活性を直接的に阻害しなかった。これらの結果から、アラントピロンAは、IκBリン酸化の上流のNF-κBシグナル経路を阻害していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、炎症性サイトカインの情報伝達や遺伝子発現を阻害する小分子化合物の作用メカニズムを解析した。強心配糖体アグリコンが細胞レベルでの標的分子としてNa+/K+-ATPaseに作用し、翻訳プロセスを阻害することを明らかにしたこと、並びにアラントピロンAがNF-κBサブユニットやIκBキナーゼβに直接的に作用しているのではなく、NF-κBシグナル伝達経路の初期プロセスを阻害していることを明らかにした点は意義が大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、小分子化合物をバイオプローブとして用いて、炎症性サイトカインの情報伝達や遺伝子発現の分子メカニズムの解明を行う。さらに、NF-κBの情報伝達に関与しているタンパク質の生理機能の解明に取り組む。
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