2013 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子操作と結晶構造解析による主要小胞体分子シャペロンER-60の機能解析
Project/Area Number |
25292070
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
裏出 令子 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90167289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
裏出 良博 公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所, その他部局等, その他 (10201360)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ER-60 / アルツハイマー病 / ノックアウトマウス / 小胞体 / 結晶構造解析 / アミロイドβペプチド |
Research Abstract |
1.ER-60-floxマウスにCre-アデノ随伴ウイルス粒子を接種して、脳神経細胞特異的ノックアウトマウスの作製に成功した。ER-60のノックアウト処理を行ったマウスの脳室内にアミロイドβペプチドを脳脊髄液に溶かして注射し、脳神経細胞への影響を検討した。アミロイドペプチドを注射して10日後に海馬でER-60欠損細胞のみが脱落することを明らかにした。さらに20日後には神経細胞のみならず、グリアを含めた海馬の一部が消失することを明らかにした。 2.アミロイドβペプチドによる細胞死の致死機構を、ER-60-siRNAによりER-60をノックダウンさせたヒト培養細胞HEK293を用いて検討し、野生型ER-60のみならず、ER-60のb-b'ドメインの強制発現によりAβの毒性に対する抵抗性が回復することを明らかにした。さらに、b-b'ドメインの回復効果は小胞体内で発揮されていることを、細胞内局在性が異なる変異体の発現により予備的に見いだした。 3.b-b'ドメインとアミロイドβペプチドの結晶構造解析から推定された結合領域のアミノ酸残基をアラニンに変異させたb-b’ドメイン12種の発現系を構築した。これらの変異タンパク質とアミロイドβペプチドとのBIACoreを用いた結合実験により結合に必須のアミノ酸残基2個を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個体の脳には複数のアミロイドβペプチドクリアランス系が存在していると考えられる。したがって、系からのアミロイドβペプチドのクリアランスが期待できない培養細胞系で見いだされたER-60量の低下がアミロイドβペプチドの毒性に対する抵抗性を低下させるという現象が、個体の脳神経細胞で再現される可能性は未知であった。平成25年度の研究で、ノックアウトマウスの海馬で神経細胞が脱落するだけでなく海馬の組織が破壊されるという予想以上の結果が得られ、本研究を今後推進していく目途がたった。さらに、アミロイドβペプチドとの結合に関わるER-60のb-b'領域のアミノ酸残基を絞り込むことができ、ER-60の機能の分子機構解明に一歩迫ることができた。これらのことから、本プロジェクトは順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通りに研究を推進する。 1.ノックアウトマウスにER-60を強制発現させアミロイドβペプチドに対する抵抗性を検討する。 2.小胞体機能に対するER-60欠損の影響をタンパク質の立体構造形成に関わる分子シャペロン量などを比較することで明らかにしていく。 3. ER-60のAβ重合化阻害機構を解明するために、変異b-b’とAβ複合体の結晶構造解析を進める。 4.ER-60の脳での発現量と糖尿病、肥満、睡眠と加齢などのADのリスク因子との関係を解明することを目的に、リスク因子を持つモデルマウスを用いて検討する。
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