2014 Fiscal Year Annual Research Report
食品因子によるアリール炭化水素受容体を介した生体機能調節に関する研究
Project/Area Number |
25292072
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
芦田 均 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90201889)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アリール炭化水素受容体 / ダイオキシン / ポリフェノール / 分子栄養学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ダイオキシン受容体とも言われているアリール炭化水素受容体(AhR)による生体調節機能解明の一環として、この受容体にアンタゴニストとして作用するポリフェノールがAhRを介した(1)薬物代謝系酵素誘導と(2)脂質代謝に対する作用を解明すること、ならびに(3)これらの化合物の体内動態解析を目的としている。 平成26年度は、(1)薬物代謝系酵素誘導に関する研究として、ケンフェロールと平成27年度実施予定のクルクミンを用いて検討を行った。ケンフェロールは、2,3,7,8-四塩化ダイオキシン(TCDD)が誘導する薬物代謝第Ⅰ相酵素と第Ⅱ相酵素の発現誘導を抑制することを培養細胞実験で明らかにした。また、クルクミンについても同様の結果が得られつつあり、当初予定の平成27年度までには目的を達成できる見込みである。また、昨年度実施したカルコンの抑制作用については、細胞系実験での作用機構解明に加えて動物実験での検証もできた。(2)脂質代謝異常については、TCDDが誘導する消耗性症候群で脂肪組織の委縮に関わる生化学的な指標に対して、ルテオリンがAhRの核内移行を抑制することで阻害効果を示すことを見出した。また、上記(1)で有効性が認められたカルコンが脂質代謝を改善することも見出したので、TCDDが誘導する脂質代謝異常を改善する可能性が認められた。(3)体内動態に関しては、昨年度構築したHPLC分析法を適用して、培養細胞レベルでルテオリン、ケンフェロール、クルクミンの対象全化合物の細胞内への取り込みを評価することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)薬物代謝系酵素の誘導に対する効果の解明:当初予定のケンフェロールでの効果に加えて、クルクミンでの効果検証を前倒しで進めている。また、予定にない化合物として昨年度から実施しているカルコンの効果については、培養細胞に加えて動物実験での効果も検証できた。これらのことから、当初計画以上の進展があったと判断している。 (2)脂質代謝異常の改善効果の解明:代表的なダイオキシンによる脂質代謝異常である消耗性症候群の抑制について、ルテオリンによる抑制作用機構を培養細胞系で解明した。また、当初計画には無いが、上記(1)で有効性を認められたカルコンについても脂質代謝改善効果があったことから、概ね予定通りであると判断した。 (3)体内動態解明:昨年度構築した分析法を用いて、培養細胞レベルでルテオリン、ケンフェロール、クルクミンの対象全化合物の細胞内への取り込みを評価することに成功した。また、予定にはなかったプロシアニジンについて実験動物で体内動態を解明する目途が立った。これらのことから、この項目は概ね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)薬物代謝系酵素の誘導に対する効果の解明:当初予定のクルクミンでの効果検証を完成させ、ルテオリン、ケンフェロール、クルクミンの効果を動物実験で検証することで計画を完了させる。 (2)脂質代謝異常の改善効果の解明:ダイオキシンによる消耗性症候群の抑制について、昨年度に続いて、ケンフェロールとクルクミンの効果を検証する。また、カルコンについてもTCDDの作用をキャンセルできるかどうかを検討する。これらのことを成し得て計画を全うさせる。 (3)体内動態解明:実験動物を用いて、ルテオリン、ケンフェロール、クルクミンの体内動態を調べることで、計画を完了させる。
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Research Products
(12 results)