2014 Fiscal Year Annual Research Report
森林昆虫ー共生微生物の共進化と温度反応及び気候変動から予測される動態予測
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25292082
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保田 耕平 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30272438)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 森林昆虫 / 共生微生物 / 冷温帯林 / ルリクワガタ属 / 酵母 / 資化能 / 共進化 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では森林昆虫、特に冷温帯林に生息する昆虫を対象とし、それらの分化・多様化のプロセスを解析し、進化的重要単位の提唱を行う。また、昆虫の共生微生物の分離を試み、共生微生物の温度適応・高温耐性と系統関係を解析し、昆虫との共進化の有無を検討する。さらには、昆虫種の詳細な分布情報とGIS情報、環境データを利用して、多くの種の分布適地を推定し、環境データの操作により、過去の分布状態の再現、将来気候変動が進行した場合の分布予測を行う、等の目的を設定している。 本年度は、ルリクワガタ属の共生酵母について、ホストのクワガタとの共進化過程の概要が、両者の遺伝子解析から明らかになり、少なくとも一方の系統は他方の系統の制約を受けていることが示された。また、共生酵母の高温耐性に大きな変異があり、ホストのクワガタの系統および生息標高の制約を受けていることが明らかになった。また、共生酵母の資化能について、主要な木材構成成分のうち、ヘミセルロースおよびその構成成分の大半を資化できること、セルロースは資化できないが、二糖類にまで分解されたものは資化できることが明らかになった。また、ルリクワガタ属の現在及び最終氷期の分布適地の推定を行った。 その他の分類群では、オオオサムシ亜属複数種の分散過程に関する解析やグンバイムシ科の分化過程に関する解析が進展した。 また、これらの他、オオトラフハナムグリ種群、アリガタハネカクシ属の遺伝子解析等、前年度までに行った解析を含め、多くの論文が投稿中及び投稿準備中となっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主たる材料として想定されていたルリクワガタ属に関しては、多くの新規知見が得られ、当初の目的のかなりの部分が達成された。これらの酵母の遺伝子解析や培養実験から今後発展的な研究が期待される。その他の分類群に関しても基礎的な解析や情報の収集が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ルリクワガタ属に関しては、RADシーケンス解析や各種の培養実験、共生酵母の入れ替え実験等を行う。その他の分類群に関しても、遺伝子解析や分布情報の集積を中心に進めてゆく。
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