2014 Fiscal Year Annual Research Report
ブナ林の断片化がブナ集団の遺伝的多様性と繁殖に及ぼす影響
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25292087
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
戸丸 信弘 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50241774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 正利 千葉県立中央博物館, 分館海の博物館, 分館長 (20250144)
小谷 二郎 石川県農林総合研究センター(林業試験場), 森林環境部, 主任研究員 (40450811)
井田 秀行 信州大学, 教育学部, 准教授 (70324217)
岡田 充弘 長野県林業総合センター, 育林部, 主任研究員 (90450816)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 保全生物学 / 保全遺伝学 / 絶滅リスク / 小集団 / 孤立 |
Outline of Annual Research Achievements |
栃木・茨城地域では、調査対象の断片化した小集団(断片小集団)および連続した大集団(連続大集団)を選定するために現地踏査や文献調査を行うとともに、調査対象とする候補集団について、面積、密度、平均胸高直径(DBH)、単位面積あたりの胸高断面積合計(BA割合)、ブナの優占割合(BA割合)に関する文献調査を行った。 石川・富山地域および長野地域では、調査対象の断片小集団と連続大集団において、シードトラップによる種子生産調査を行った。両地域とも凶作であり、種子が得られなかったため解析を行うことができなかった。 長野地域では、5つの断片小集団と5つの連続集団から、各集団において全個体または無作為に約30個体を選び、実験材料の葉を採取し、DNAを抽出した。そのうちの断片小集団の牛伏寺集団(牛伏寺集団から7km 以内に分布する孤立2集団を含む)において花粉散布パターンを調査するとともに、種子のシイナ率と発芽率を他の集団と比べることにより、ブナ林の断片化の影響を調べた。2011年の豊作年の種子に由来する100個体の実生を対象に、13遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いて単純排除法による親子解析を行った。その結果、94個体の実生は牛伏寺集団内に両親が存在しいていたが、6個体の実生は片親しか存在していなかった。また、その6個体のうちの4個体は、親候補が保有しない対立遺伝子を保有していた。したがって、7kmを越えるような花粉散布が生じていることが明らかとなった。しかし、他の集団と比較して牛伏寺集団における種子のシイナ率は高く、発芽率は低かった。したがって、牛伏寺集団の存続に及ぼす長距離花粉散布の正の効果は限定的であり、集団の孤立と集団サイズの減少による負の影響を強く受けていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
栃木・茨城地域においても、調査対象集団の抽出および林分構造の推定が順調に進められた。石川・富山および長野の両地域における種子生産調査では凶作のため種子が得られなかったが、ブナの種子生産には豊凶があるのはよく知られた現象であるため、このような結果になることは計画段階で想定済みである。長野地域においては、遺伝的多様性調査のための実験材料の採取がほぼ終了し、DNA分析を開始した。長野地域の1つの孤立小集団において、花粉散布パターンを明らかにし、種子のシイナ率と発芽率を他の集団と比べることにより、ブナ林の断片化がブナ集団の繁殖に及ぼす影響について検討することができた。このように、研究目的の下、当初の研究計画にしたがって概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究目的の下、研究計画にしたがって研究を進める。石川・富山および長野の両地域では種子生産調査を継続する。また、長野地域の遺伝的調査を進め、栃木・茨城地域では遺伝的調査を開始する。研究計画において設定した作業仮説の検証を中心にデータ解析を行い、ブナ林の断片化の影響があるかどうかを明らかにするとともに、保全すべきブナ林の規模などブナ林の保全管理のあり方を考察することにより、研究成果のとりまとめを行う。
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Causes of Carryover |
長野地域では現地調査が、また栃木・茨城地域では現地調査と文献長が順調に進められたため予算が残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
長野と栃木・茨城の両地域における現地調査のために使用する予定である。
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Research Products
(5 results)